「いい時代を生きたね」
ある人がふと呟いたので、驚いた。
実は私も最近、ときどきそう思っていた。
戦争はなく、
戦後の混乱期も過ぎていた。
物やお金は、豊かではなかったけど、
みんなそうだったので、
それが当たり前だった。
やがて、高度経済成長の波が来て、
我が家も、多少景気がいいんだな、
と思える時期があった。
テレビがやってきた日。
その他、家電が初めて家にきた日を
覚えている。
三輪自動車の、ダイハツミゼットもやってきた。
今思うと、おもちゃみたいに可愛い車だった。
三輪なので安定が難しく、
父は、運転中横転したことがあった。
その辺の人が起こしてくれたようだった。
テレビがくるまでは、棚にラジオが置かれていて、
そこから、歌やいろんな番組が流れて
耳に入っていた。
夜は何をしていたんだろう?
夜は、別棟に住む祖父母もやってきて、
みんなで何をしていたんだろう?
はっきりと思い出せない。
テレビがなかったのは、覚えている。
今のように、テレビにお守りをしてもらっていない時代だった。
テレビに居間が占領される前は、
みんなで過ごすささやかな時間が、
あったような気がする。
そして両親は、生活するために生活する
という、シンプルだが、ハードな日々だったと思う。