「ＥＶ」 と 「自動運転」

　自動運転のＥＶ循環バス（オペレータ二人が乗車）と視覚障害のある柔道選手が接触し、全治２週間の事故が発生したようです。おそらく、事故を起こしたのは専用モビリティ「ＡＰＭ（Accessible People Mover）」だと思いますが、その「主な特徴」には利用者の利便性が謳われていても「歩行者」に対する安全性は書かれていません。つまり、起こるべくして起きた「事件」と言えます。

　トヨタは、オリンピック開会前に「日本国内におけるオリンピック用TVCMを中止する」と言い、「報道の影響で不評だったオリンピック開催」を逆利用し、企業イメージのＵＰを狙ったようですが、結果は「ＴＶ視聴率」が以外に高く、想定外だったと思われます。

　ＮＨＫ総合の「関東地区の番組平均世帯視聴率」は、

開会式（19時56分）：５６．４％（全国視聴人数４３６２万人）
閉会式（19時30分）：４６．７％（全国視聴人数３４４７万人）
閉会式（21時23分）：３９．８％（全国視聴人数２８４４万人）

とされています。

　「ＡＰＭ」の事故に関して、豊田社長は「パラリンピックという特殊環境の中で、目が見えない方がおられる、不自由な方がいる、そこまでの環境に対応できなかった」等と述べて謝罪したようですが、今回の「オリンピック基本コンセプト」の一つに、

多様性と調和：人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。

と、あります。豊田氏は「パラリンピックは特殊環境」としていることから、「不自由な人が（多く）いる場所は普通の環境ではない」と理解している事になります。つまり、トヨタには最初から「オリパラのスポンサー（ワールドワイドパートナー）」の資格は無かった事を認めた事になります。

　この事から、豊田氏が開催前に「オリパラＣＭを中止」したのも、先見の明が有ったからかもしれません。このような「社長の意識」と同様な考えを「同乗オペレータ二人」が持っていても不思議は無く、トヨタ車を利用しない人は普通ではないと思っていたかもしれません。

　それは兎も角、「ＥＶ」には隠れた危険性が潜んでいます。その一つは「静音性」で、自転車と同様に、歩行者に近づいても気が付かないと云う事です。自転車の場合は、後ろから鈴を鳴らしたり声掛けすると「殴られる恐れ」があるので、自らの危険を覚悟で車道を走ります。これは「ＡＰＭ」が高速道路を走るのと同じくらい危険なのですが、会場内なら「ＡＰＭ」に敵なしです。

　健常者でも、音のしない透明な自動車が、我がモノ顔で走っていたら危険この上ありません。全盲の視覚障がい者にしてみれば「総てが透明」で、見えません。「ＡＰＭ」は交差点を右折中に健常者と思われる「警備員」を検知し自動停止したようなのですが、乗車していたオペレーターは、近くに障がい者がいた事には気が付かず「発進操作」をしたとされています。

　つまり、「ＡＰＭ」はオペレーターの命令に従い、「三者ともに」互いに見えなかった事から接触した事になります。おそらく、障がい者と「ＡＰＭ」が接近し過ぎていて「センサーとオペレーターの死角」に、同時に入ってしまったのが原因と思われます。当然、視覚障がい者は全方向が死角なので、音がしなければ、接触するまで気付くことはありません。

　これは、「人間」と「ＥＶ」と「自動運転」の組み合わせで、合成の誤謬を生じた事を示しています。「ＥＶは静かで良い」「自動運転は人為的ミスは起こさない」「人は機会と違って臨機応変に行動できる」。これらが相互に逆に働き、事故に繋がりました。