学生時代に天秤を粗雑に扱う人には単位をあげるわけにはいかないと分析化学の教授に言われたのを鮮明に覚えてる。
実習のときに今ではあまり見られなくなった「天秤」。
必要な重りを左側にのせ、右側にはかりたいものをのせる。釣り合ったところでストップしないといけないが、多くてもダメ、少なくてもダメ。
重りはいろいろあるんだけど少量のは薄くて小さい。だからちゃんと片付けないとどこかへ行ってしまう。ないと困るのにね。
ある日天秤が片付けられてなくて、教授は激怒。で、熱弁を振るったあとに出た言葉が冒頭のせりふ。
薬剤師にとって天秤は大切な道具。ほんの少し違っていても人の命を奪ったり健康被害を与える劇薬や毒薬や麻薬まで扱える国家資格を取得しないとできない仕事。
今では技術が進歩して電子天秤の精度が上がり天秤を使ってる薬局なんてないんじゃないかなあ。
大学病院の研修生時代、先輩が神業のように必要な重りを選択してのせて粉薬を手際よくはかっていたのを思い出す。
いざ自分がやってみると処方箋をみて必要量を計算し、重りの組み合わせを瞬時に判断し、小さな使い勝手の悪いピンセットでつまんでのせ(重いものは落ちやすいし軽いものは薄くてつかみにくい)そして薬瓶を間違えずにふたを小指で持ちながら握って(アクロバティック!)ささっとはかり分包機にまいてヘラで平らにならす。VS式の円盤が回転するタイプだが包数が少ないときはテクニックが必要となる。
小児科勤務は絶対無理だわーと思ったものだ。
軟膏つめや水剤の調合も難関で…。
天秤って不思議な魅力がある。
弁護士のバッジには天秤が描かれている。公平を期すために、ということらしい。あるときテレビドラマで見た。
薬剤師にとって大事な道具はなに?
私が仕事を始めた頃は天秤とハンコだった。今やテクニシャンや機械が調剤する時代。大事な道具は…。
監査印とパソコン?
でも時代が変わってもさじ加減ひとつで健康被害を与えてしまうことには変わりはない。心して取り組まないといけないのだ。
道具って大事。ものを大切にするって大事。人も同じ。相手の欠点をみつけることは容易だが相手のいいところを発見し歩み寄るのは難しい。
楽しくとまではいかないかもしれないけど、嫌々ながら仕事するって身体によくないし、職場のもめごとは患者様やお客様に伝わってしまう。ピリピリした空気は居心地が悪すぎる。
職場への不満を持つのはあたり前なんだけど、どげんかせんといかんなんてついつい首をつっこむ自分がいる。
ムードメーカーって大事だし、相談相手って大事。誰かが大丈夫って言ってくれたら乗り越えられることってたくさんあるから…。
薬剤師になれたのならお互いに悩みを打ち明けたり、意見を求めたり、疑問を解決し会えるって素敵だと思うんだ。だから私はココヤクが大好きで出会ったたくさんの仲間を思い描きながら難局を乗り越える。
人生ってどちらを選択するかふたつのことを天秤にかける時がなんどもなんども訪れる。どちらを選ぶかつりあってしまって迷う。迷っても決めないといけない。
天秤にかける。恋愛もそうだし結婚と仕事とか育児と仕事とか介護や看護と仕事とか。
選べなくてバランスを求めながら苦慮することもあるけれど、どれが正解かは誰にもわからないし凶と思われたものが災い転じて福となることもある。
ひとつだけ確かなことは最期に薬剤師になってよかったと思えたら本望なんじゃないかなー。紆余曲折はあるけれど居場所がみつかり、のびのびと働ける職場、それが理想かなあなんて思う今日この頃。長く勤めてるとね、お互いの気心が知れて意外な一面が発見できて難局に追い込まれると不思議と力を合わせなきゃってお互いに思ったりする。
調剤薬局は今最大のピンチに襲われてる。逃げるのは簡単だけど、なんだか悔しい。この難局をどう乗り越えるか。
みんなの意見を出しあって患者様の気持ちを汲んだ投薬ができれば生き残れるかもしれないと日々努力を重ねる今日この頃。
くだらないことで夢をあきらめるのはもったいない。でも身体が悲鳴をあげたのなら別の場所を探すのも悪くはないしいっそのこと仙人になるのもありかなーなんてね。
引退間近なおばさんの戯言でした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます