穏やかだった妻の目に殺意が兆し、夫はつかの間、妻の死を思う。
のどかな田舎町で変転する老夫婦の過去と行く末。
「これでお互いの老老介護が終わるのだな。楽になる。そうだ、楽になるのだ」
伸びやかでスリリングな視線、独自の土着性とユーモア。
老いた妻の発作的な豹変に戸惑う夫の緊張感を描き、
井上荒野氏、角田光代氏、川上未映子氏の選考委員諸氏に絶賛された
第4回林芙美子文学賞受賞の表題作。
以上はアマゾンよりお借りした内容紹介です。
いやー久々に小説らしい小説を堪能させて頂きました。
未来のない老夫婦のお話か・・自分の近い将来を見ているようで気が滅入るな・・
と思いつつ読み始めたところ、嬉しい予測はずれでした。
これをユーモアというのか紙一重のペーソスなのか、
額に入れてずっと見ていたいくらい愛しい妻なのに、
認知症が進み始めた妻を死ねばいいのにと一瞬思ってしまう夫。
このシーソーのように揺れ動く感情を、深刻ぶらずに
軽めに静かに描くことで、読み手にじわーっと沁みるものがあります。
後半、理髪店にやってきた見知らぬお客さんがきっかけで、
過去の「穴」を巡るお話になりますが、なかなかスリリングというか
サスペンス!?
なにせ「青い血」だもんね^^
いじめに使った穴が、息子の死に繋がってしまったなんて事
墓まで持っていきたい秘密でしょ。
ラスト、大好きな夫の名前、見合いで唯一気にいった「とらおさん」という名前さえ
忘れかけた妻が切ないですが、
年をとるということは、そういう事なんですよね。
背中がひんやりして読了。。ですが
もういちど読み返したい気分です。
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