「 優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。
が、娘の病気見舞いを終えてバグダッドからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、
それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる…
女の愛の迷いを冷たく見据え、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。」
以上は、アマソンよりお借りした概略ですが、
ロマンティックなことは全くありませんよ。
そして誰も毒殺されません(笑)
解説で栗本薫さんも書いておられますが、恐ろしく哀しい
お話です。
確か10年以上前に読んでいて、再読か再々読になるのですが
早川書房からクリスティ文庫として出されたものが
文字が大きく、紙の色も目に優しいので購入してみました。
主人公のジョーン、自分の価値観がゆるぎなく絶対で、そこから
はみ出すモノには一切の妥協なくNOという女性。
こういう人間は回りを不幸にしますが、自分ではまったくその事に気づきません。
むしろ、自分がいるからこそ全て上手く回っているのだと
信じて疑わないところがもうお手上げなのですが(笑)
人は自分の見たいものだけしか見えないのですね・・昔も今も。
こういう人間がいると、回りはそれに負けじと団結します。
困った母を持つ子供たちは理不尽さに困惑する父親を想い、
父親はこういう母親の横暴から子供たちを守ろうとします。
こういう描写がますますジョーンの孤立と孤独を浮きぼりにしていきますが、
そんな事とは露知らず、自分は完璧な妻であり母であり
みんなに愛され頼りにされていると確信しているするジョーン・・・。
悲哀と滑稽は裏腹というか紙一重なんですよね~。。
夫はこんな妻を、何度もプア・リトル・ジョーンと呼びます。
可愛そうなちっちゃいジョーン・・・マイと付けないところに
彼の距離感とあきらめが感じられて、またラストも厳しい!
クリスティ容赦なし!って感じです^^
また何年後かに読みたいと思います。
性別、環境、年齢でまったく読後感が違ってくる稀有な小説、
令和2冊目のオススメ本です^^
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