プールへ行った帰りに、買い物をしようと寄り道をした。途中、背の高い木があり、上を見上げれば淡い紫色の花がたくさん咲いている。よく見れば桐の木だった。桐の花は今まで意識して見たことが無かった。
木のそばに行くと、花がひらり~ひらり~と落ちてきた。拾い上げて見ると5弁花だった。木の高さは10メートルを超えていそうだ。花は木の上側にしか咲かないので、落ちた花でしか詳しく観察はできない。
桜の花であれば、「今年桜の花を見ましたか」と10人に聞けば、間違いなく10人は見たと答えるだろう。桐の花であれば1,000人に聞いても、せいぜい一人くらいでなかろうか。都会にお住まいの貴女様、桐の花を見たことがありますか?。
桐の木は軽い、柔らかい、吸湿性も小さい、狂いが少ないの特徴がある。何と言っても桐の成長は、松(40年)や杉(80年)に比べ大変早く、10年から15年で製材出来る。このため昔は、女子が誕生すると桐の苗を植え、その子が嫁入りするときにタンスなどの嫁入り道具を作っていた。幼少の頃はどこの家に行っても桐のタンスを見かけたものだ。
鳳凰が唯一止まる神聖な木・聖なる王の出現のめでたい木であるという中国の伝説になぞらえて、王者の紋とされた。
特徴のある花と葉は、紋章としてもなじみがあり、どなた様も見たことがあるはず。五七の桐のマーク(紋章)は日本では、菊の紋章の次に位が高いとされている。
他に五三桐(ごさんのきり)紋がある。初めは天皇家の副紋だったが、朝廷から豊臣秀吉へ下賜されたそうだ。これを秀吉は気前良く配下に下賜したので鼠算式に増えてしまい、今ではかなりなじみの深い家紋の1つである。
五七桐、五三桐の紋の違いは、中心と両脇の花の数が違う。数えてご覧遊ばせ。
【参 考】
1.桐
界 : 植物界 Plantae
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 双子葉植物綱 Magnoliopsida
目 : ゴマノハグサ目 Scrophulariales
科 : ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae
属 : キリ属 Paulownia
種 : キリ P. tomentosa
学名 :Paulownia tomentosa (Thunb.) Steud. (1841)
和名 :キリ
英名 :Empress Tree, Princess Tree
Foxglove Tree
キリ(桐、学名:Paulownia tomentosa)は、ゴマノハグサ科(あるいはノウゼンカズラ科、独立のキリ科 Paulowniaceae とする意見もある)キリ属の落葉広葉樹。
高さ15mにもなりその美しい花姿は、清少納言の「枕の草子」の中にも取り上げられているほどである。
”梢高く見上げれば、花は薄紫にかすみ、妖しく光る雲となる。花ごと落ちる散り際は、紫の雨が降るよう。”
2.桐という字は「木」編に「同」と書き、木また桐は始め伸びた葉よりも植栽2年後に一度根元から切ったほうが良く成長する性質があるため、「一度切る」ところから「キリ」の名がついたとも言われている。
3.桐の葉は国内の広葉樹の中では最も大きいとされている。
4.桐の特徴
・湿気に強い:桐は水分を吸収し難く、桐板の表面から水が内部に浸透することがない。
・乾燥に強い:桐材は乾燥すると水分が少なくなるため空気の出入りが容易。
・自己呼吸する:桐材は湿度の多い時は膨張し、湿度が少ない時は収縮するという性質をもっている。また腐りにくい。
・軽い:桐の比重は0.28~0.3と日本産では最も軽い木材。
・光沢があり暖かい:白木地に柾目、板目とも光沢があり、熱を反射するため触れると暖かく感じる。
・燃えにくい:桐の熱伝導性は小さく、桐の発火点は425℃と言われ発火し難い。(杉は240℃程度)
備考:“桐タンスは燃えにくい”と言わる理由。
桐の細胞組織は他の木材と異なり、柔組織が多く、また乾燥による収縮・変形が小さいため、燃焼による割れや隙間が出来ないこと。他の木材は導管が互いに干渉しているが、桐の場合干渉がなく独立した構造となっている。そのため袋状になった構造が存在しており、そのため桐の板の表面から水が内部まで浸透することが無く、また袋状の構造の中に閉じ込められた空気のため熱伝導率が小さく、桐の表面が燃えると炭化層が出来やすい。炭化層が断熱材の役目をして働き、熱を内部に通し難くしている。
5.桐の紋:日本には法令で決まった国の紋章はなく、桐紋は慣例的に政府が使っている。パスポートには、1999年11月のデザイン変更時から使われている。
内閣府によると、桐は鳳凰(ほうおう)が宿るめでたい木とされ、9世紀初めに即位した嵯峨天皇のころから天皇の着衣などに使われるようになり、代々天皇家が使ってきました。1888年(明治21年)の宮内省告示で、使用に関する制限がなくなり、外国の賓客の夕食会に使う食器や大臣の表彰状などに使っています。