金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【北米の空に多数の気球が!】 思い起されるのが、第2次大戦中の帝国陸軍「風船爆弾」‼

2023-02-22 04:38:50 | 中国

 中国が発表しているところの気象観測用の気球が、北米各地で見つかっています。ちなみに、アメリカカナダでは『気象観測用』という中国側説明を信じておらず、北米内の電波情報や通信情報を収集する機能を持っていたのでは?と疑っているようです。もし、それが正しいとすると、軍事情報や機密情報の収集に活用されていた可能性もあり、両国では「領空侵犯」を理由に撃墜をしました。

 なお、直近の情報では、中国の海南島内部に、この気球を飛ばす基地らしき施設があることを米国政府筋が発見したそうです。もちろん、偵察衛星の力に依って・・であります。

 

 ところで、このニュースを聞いた時に、真っ先に頭に浮かんだのが、第2次大戦中に第日本帝国陸軍が開発した所謂『風船爆弾』。正式名称は『気球爆弾』と呼ばれていたそうですが、戦後にこの兵器の存在を報じた読売新聞の記者が『風船爆弾』という言葉を使ったことから、一般的には『風船爆弾』として広まったもの。アメリカ本土の爆撃用に9000個も生産して、福島県の太平洋側の沿岸から飛ばして、偏西風に乗せて、アメリカ本土に到達するタイミングで時限装置によって爆弾を落とす仕組み

 戦果については、9000個のうち、300個がアメリカ大陸に到達して落下。うちオレゴン州に落ちた爆弾により、運悪く6名のアメリカ人が亡くなったとのこと。まぁ、『かなりの予算をかけながら、全く意味のなかった戦術』の代名詞、この『風船爆弾』でありました。

 

日本陸軍の『風船爆弾』

 

 しかし、この中国の『風船爆弾』、いや失礼、この中国の『観測用気球』は、遠隔操作によってプロペラが回るようになっていて、100%偏西風頼みではなく、自分で方向を変えたり、スピードを緩めながら、北米大陸を通過できるという優れもののようです。

 アメリカのように、巨額予算を使った人工衛星による監視ではなく、直近の電波技術ドローン技術を活用しながら、戦闘機では到達できない空域に、低予算の気球を飛ばすなんぞ、正直に言うと「中国も、なかなかやるなぁ」と、素直に感心してしまいました。

 IT技術やドローン技術に造詣があって、優秀でアイデア豊富な人材が、中国人民軍には多く存在していることが伺えます。

 

 ちなみに、ウクライナの戦争から得られる教訓は、1人で簡単に持てる「地対空ミサイル」「対戦車バズーカ」が一般市民にまで配布される地上戦が当たり前になると、伝統的な航空機や戦車だけでは地域を制圧することは不可能だということ。むしろ、無人戦闘機や無人戦車、また大量のドローン兵器を飛ばして、地域のハンディ兵器を殲滅してからでないと制圧は無理

 こうした技術を蓄えて、軍備を進めている様子が、この中国の『観測用気球』から伺えます。

 

 日本の自衛隊には、こうした技術が殆ど展開されていません。先島諸島・八重山諸島を守るためには、必須の技術であります。追加予算を使うならば、この分野に巨額を投じるべきなのに、今の防衛首脳部は、どうも伝統的兵器と船舶をまず優先する考えのようです。

 第二次大戦前に、巨大戦艦を優先して、空母+航空部隊への投資をケチった、当時の海軍首脳部と全く同じです。時代は変わっても、人の頭の中身は変わらないようであります。

 

 


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【中国の基盤は農村に在り!】 「草の根の中国」 田原史起 著 東京大学出版会

2023-01-19 05:12:33 | 中国

 東京大学大学院の田原史起教授が書かれた「『草の根の中国』東京大学出版会」は、中華人民共和国の基盤である、中国の農村の今を教えてくれる名著であります。

 

 中国の農村といえば、我々はすぐに「貧困」と思いがちですが、さにあらず。確かに北京や上海の都市部で贅沢な暮らしをしている人々と比べれば、貧富の格差は著しいということになりますが、中国の農村に暮らす人々は、都市部の人間の暮らしなど全く関心がないそうで、むしろ気にしているのが、農村に点在している各集落間の格差に敏感とのこと。

 中国の農村では、血縁関係が大切にされており、密接な血縁関係がある人々が集まって一つの集落を作るそうです。その血縁集落というのは、男系の血縁集落であり、それぞれの集落間では、女性が嫁に行くことで交流が保たれるという図式。日本の古い山間の集落に似た世界が、中国では今でも各地で息づいているということのようです。

 この血縁による集落では、毛沢東以来の高齢農民たちが、自分たちの食糧確保ための農地を大事に耕し続けており、土地を捨てることは絶対にしません。むしろ、この濃密な血縁コミュニティを何よりも大切にしているそうです。そして、若者たちは、現金収入を得るために都市部へ出稼ぎに出ます。ただし、そのまま都市部へ移住するのではなく、必ず出身地の集落に戻ってきて、家を建てたり、子供の教育費を送ったりと、集落との関係を維持し続けるとのこと。ここが日本と異なるところ。

 

 ちなみに、都市部への出稼ぎによって得た現金収入によって、農村部での生活水準は予想以上に様変わりを見せているようです。例えば、移動手段。まず人気になったのが自転車ですが、これは1995年にピークを迎えて、替わりにバイクが急増しました。それも2014年がピークで、そのあとには乗用車が急速に伸びています。

 また携帯電話は、ほぼ全土に普及しており、カラーTVも、2011年にはほぼ普及したとのこと。ちなみに、洗濯機・冷蔵庫は持ってて当たり前ですが、今でも伸びているのがエアコン。これは、かなり贅沢な住宅(4階建ての鉄筋住宅等)を、兄弟が共同で建てる事案が増えてきたことにより、部屋数の増加とともに、エアコンの数も増えているようです。

 

 以上のように、農村部では、都市部との格差を気にすることなく、むしろ農村内の集落間の格差を意識しながら、出稼ぎで稼いだ現金収入を元に、乗用車を買ったり、近代的な家を建てたり、電化製品を揃えたりで、少しづつ「中間層」への登りつつある状況のようです。あくまでゆっくりではありますが、豊かさが広がるのを実感しながら、生活に満足している状況が見えてきます。この農村部の状況が、習近平政権にとっては最大の支持基盤になっているとのこと。

 ちなみに、農村部では『中国共産党に関する関心』は殆どないようです。これもビックリなのですが、彼らにとっては、平和が続いて、かつユックリではあっても、豊かさが広がることが実感できる今の時代を、濃い血縁集落の中で密なコミュニティさえ維持できれば、十分に満足ということなのでしょう。

 

 本当は、北京や上海で安い最低賃金で働かされている出稼ぎの状況を、少しでも改善できれば、農村部の中間層化のスピードが加速して、中国のGDP改善に大きく寄与できると思うのですが、そういうことに対して、農村部の人々も、また中央の共産党幹部も、あまり関心がないようです。

 これもまたリアルな中国の実態なのでしょう。この本は大変勉強になりました。


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【上海・北京で抗議デモ】 表向きは「ゼロコロナ政策」への反発だが、火を点けたのは⁉

2022-11-30 04:06:19 | 中国

 地上波民放TVの報道なので、あまり真に受けると酷い目に合いますが、それにしても珍しい内容ですから、ここで取り上げたいと思います。

(英国BBCあたりが正式に報道してくれると、かなり真実味が出て参りますので、それを待っております。ハイ!)

 

 きっかけは、11月24日に新疆ウイグル自治区のウルムチのマンションで10人が亡くなった火事過度なコロナ対策が原因で消火・救助活動が遅れたとネット上で騒ぎになったことで、各地で抗議活動が起きたとのこと。北京では数百人規模の市民が27日夜から28日未明にかけて「PSR検査はいらない」「自由がほしい」などを訴えたほか、上海でも新疆ウイグル自治区の犠牲者を追悼する集会が行われたようです。

 この抗議デモの中で、「習近平やめろ」「共産党退陣」などの声なのか、垂れ幕なのか、判りませんが、そうした『言葉が使われた』ことも報道されています。現地で抗議デモを直接見た日本の記者が確認した内容なのか、デモ隊からの情報なのかは、ハッキリ分かりません。

 

 中国政府への抗議デモが、北京・上海といった中国共産党の本丸中の本丸で発生すること事態が異例と言えます。そして、これらの内容は中国国内では報道されることはありませんが、日を置かずに海外で報道されていることも異例です。

 

 抗議デモなどが普段、北京・上海の都市部で発生しない理由は『中国市民は中国政府を信じていないこと』

 すなわち、抗議デモというのは、一般民衆の声を政府が聞き入れてくれると期待するから発生する事象であります。最初から民衆の声を聞き入れてくれるはずはないと思っている中国市民は、無駄な「抗議デモ」など致しません。しかも、自らの身が危険に陥るかもしれない「習近平やめろ」「共産党退陣」などの言葉を使うのは、普段冷静な北京や上海の市民らしくありません

 

 それなら、なぜ北京・上海で抗議デモが発生したか?

 第1にそれくらい『ゼロコロナに腹が立っている人々が存在すること』。そして第2に『そうした人々に火を点けた扇動者がいる』と思われること。この扇動者は、抗議デモの映像や声を海外報道機関へ流している発信元でもあると思います。

 こう考えると、なぜ北京や上海で『抗議デモ』が発生したか、そして『習近平やめろ』などの危険な言葉が飛び交ったのか、さらに海外報道機関がこれを日を置かず報じることができたのか、全て辻褄が合います。

 

 今回の抗議デモ騒ぎは、やはり10月の共産党大会での習近平1強体制構築がきっかけであり、これを良しとしない反対勢力が、一般市民を扇動したと考えると納得感があります。もしかすると、抗議デモを実行した主体は一般市民ではなく、反対勢力そのものかもしれません。

 いずれにしても、共産党内での生き残りを掛けた壮絶な『内戦』が、すでに始まったのだと思います。反対勢力は予想以上に強力な基盤を誇る集団だと思います。目が離せなくなってきました。

 


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【欧州の次のリスクは中国】 中国も追い込まれるが・・ 自力で脱出も⁉

2022-11-10 05:41:48 | 中国

 昨日は、2023年の最大のリスク『欧州』についてお話しましたが、本日は、その次のリスク『中国』について。

 

 アメリカによる中国包囲施策は、ますます先鋭化しております。半導体周辺技術の提供禁止を、米国内企業だけでなく、日本や韓国、あるいはNATO加盟国などの同盟国全てに広げるつもりです。これらの経済政策によって、米中の経済圏が真っ二つに分かれることは必至の情勢になってきましたが、中国の消費者を主たるターゲットにしてきたドイツ産業はもちろんのこと、地理的に近くて経済的な依存関係が大きい、韓国や我が国にとっても、先々の成長を妨げる大きな要因になって参ります。

 一方、標的になっている中国。ゼロコロナ政策による成長率低下と併せて、米国による中国包囲施策は、中国の成長スピードを著しく落とすことは明らか。その落込みの影響は、中国経済のみならず、当面の世界経済にも暗い影を落とすことになるでしょう。

 ちなみに、中国は14億人もいる巨大経済圏であり、かつ労働力が豊富な世界最大の生産基地であります。必要な製品や食料が手に入らなくなるのだったら、自らで作れば良いと、思い切った『内製化』へ舵を切ることになります。唯一、外から手に入れなければならないのはエネルギーでありますが、原油・天然ガスといった主要エネルギーは、隣国ロシアからふんだんに入手できますから、それ以外の半導体、精密機器、電気自動車、電化製品、食料など、すべてを自給できる体制へ変えていくことになります。そしてこのことは、アメリカの『民主主義』ではなく、中国の『権威主義』を頼りにしていくアフリカ諸国、旧東欧諸国、アジア諸国が、アメリカ経済圏から脱出して逃げ込む『新たな経済圏』の出現を意味することになります。

 

 このように、アメリカによって追い込まれる中国は、自力でそのピンチを乗り切る可能性が十分にあります。その時に、むしろ追い込まれるのは、アメリカとその同盟国になるやもしれません。

 

【追】一部のアメリカ政治通の方は、「アメリカの狙いはあくまで習近平総書記。中国共産党内で干された他派閥と組んで、習近平政権を倒せば、中国包囲政策は終了する」とおっしゃっていますが、歴史を振り返ると、アメリカは標的にした相手が徹底的に弱くなるまでは手を緩めません。今回も、やり過ぎるくらい、徹底した包囲作戦を続けると思います。

 「アメリカがやり過ぎる」という点は、2023年に向けての第3のリスクと言えるかもしれません。


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【中国共産党大会を終えて】 想定を超えた習近平1強体制へ しかしこれは・・⁉

2022-10-28 05:46:24 | 中国

 中国共産党大会が終わりました。

 

 先般10月18日の当blogで申し上げたとおり、新体制での常務委員メンバーの中身を見れば、10年前の共産党本部内での合意が、今でも活きているのか否か?が判ると。その結果は?

 もう色々な新聞で論評されているとおり、新体制の中身は想定を遥かに超えるものでありました。まぁ、習近平総書記による『やり過ぎ人事』と言って良いと思います。しかも、前総書記であった『長老 胡錦涛氏の退席騒ぎ』まで広く全世界に報道されるというオマケ付き。こうした報道は、もちろん中国国内では封印されているので、一般の中国国民には知られることはありませんが、海外に派遣されているエリートの共産党員や、海外旅行中の一般中国人は、全世界でBBCのTVニュースであのシーンを見る訳でありまして、相当なショックを与えていると思います。

 

 そもそも、中国人は『独裁者が嫌い』な国民です。中国には昔から科挙の制度があって、極めて優秀な官僚組織が政治を執り行う仕組みが確立しておりました。支配者である皇帝が交替しようが、あるいは王朝そのものが、宋から元になろうが、明になろうが、清になろうが、政治そのものは優秀な官僚組織が執行する仕組みであります。

 これは、横暴な皇帝、あるいは実質的な権力者である宰相クラスの猜疑心の強い人間が、中華の独裁者として君臨してしまうと、大抵国民にとってロクなことが起きなかったからです。したがって、常に優秀な官僚組織が用意されていて、トップが替わろうとも、独裁者を生まない仕組みになっている。すなわち、実務力のある官僚組織でトップの暴走を抑え込む知恵が存在しているのでありました。

 清の時代が終焉するとともに科挙制度は無くなりましたが、中華人民共和国では「中国共産党」という官僚組織が独裁者を生まない役割を引き継いでいますちなみに、2021年末現在で中国共産党員の数は9600万人となっています。

 

 今回の人事で、共産党上層部は習近平1強体制になったとはいえ、共産党員は9600万人もいます。しかも、旧江沢民派や旧胡錦涛派の傘下にはまだ多くの共産党員が存在します。このままでは終わらないと思います。

 習近平総書記の異例の3期目の条件は「台湾統一」。5年のうちに台湾統一の目処が立たなくなればなるほど、全国の共産党員の中から、反習近平のパワーが溢れてくることになると思います。中国経済は「ゼロ・コロナ政策」の影響で、これから急速に落ち込んでいきますから、国民の不満は膨れ上がっていくでしょう。そして「台湾統一」も、この5年で目処が立つことはないでしょう。

 

 今回の『やり過ぎ人事』は、やはり、「習近平政権の終わりの始まり」であると、自分は理解しております。だいたい、前述の胡錦涛氏の退場騒ぎの映像が英BBCの手に渡ったのは、党大会に出席していた共産党員の誰かが、命がけで流出させたからに他なりません。

 皆さんのお考えはいかがでしょうか?


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