遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

シッダールト・アーナンド監督『WAR ウォー!!』(2019年)と新文芸坐オールナイト上映「リティク・ローシャンと一夜を共に」

2024-06-03 00:32:45 | 映画を見てきた

2024/5/30

・新文芸座のオールナイト上映のに三本目。

・時間的には午前4時過ぎくらいの開始。

・さすがに眠くなってきたが、前の二作が楽しかったこともあり、序盤のうちはまだ余裕があった。

・主人公の尊敬する先輩が軍を裏切って敵になってしまう話、でいいのかどうかは自信がない。

・本作ではもう一人メイン級の人がいて、リティク・ローシャンが敵役に回っている(ように見える)ため、やや出番が少ない。

・オールナイト上映が始まるときに、スタッフさんが「いつ寝てもいつ起きてもリティク・ローシャンがいるから安心してほしい」と言っていた。

・嘘ではないんだけど、本作の彼はすこしだけ出番が少なめだったと思う。

・すっかりリティクが好きになっていたため、彼が出ていないシーンは緊張感が保てない。

・加えて、敵と味方が激しく入れ替わる話なので、過去二作に比べて内容が複雑。

・作品に対する関心が持ちにくいこと、内容が複雑だったことで、これまでごまかせていた疲労がどっと押し寄せてくる。結果、話についていけなかった。

・最後のネタ晴らし的なクライマックスシーンを見ることはできたので、逆算して話を想像する感じ。

・気が付くと終わっていた。午前7時30分くらい。

・ここからはオールナイト上映全体の感想。

・告知通りの時間に映画が始まるのがうれしい。開始時間に本当に本編が始まる映画館は少ない。

・今回は客席での食事OKということだったが、普段は禁止らしい。たしかに床がきれい。

・遅い時間の映画館って、ポップコーンの欠片が散乱して不快なくらい床が汚いことがある。

・椅子が思いのほかゆったりしていて快適。全体的に居心地が良かった。

・一本目を見ている時に軽い地震があった。一瞬不安になったけど、この日は宿もとっていなし、すぐにどこかに帰れるわけでもないし、今いるところが耐震的にもベストだから、早々にこのままでいいやと思った。

・三作品とも終わると客席から拍手が起きていた。みんなは最後まで見ることができたんだろうか。

・オールナイト用に睡眠時間をとることができなかった。次の機会があれば今後こそ。

・最初のオールナイト体験がこの三本立てでほんとによかったと思う。

(5/25~5/26 新文芸坐)

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シッダールト・アーナンド監督『バンバン!』(2014年)

2024-06-02 23:20:56 | 映画を見てきた

2024/5/30

・新文芸座のオールナイト上映の二本目。

・深夜一時過ぎだったと思う。事前に普段より多く寝ていたわけではないけど、まだ頭はしっかりしている。

・婚活で出会った男が大泥棒だったという話。

・その大泥棒役がリティク・ローシャン。

・巨大なダイヤを盗み出すが、報酬をめぐり、交渉先の犯罪組織との関係を悪くしてしまう。

・一方で、婚活を始めた普通の若い女性。たまたま婚活サイトでアポを取った男性が遅刻してしまい、リティクを婚活相手だと勘違いしてしまう。

・温度差が極端。

・状況的に極めてうさん臭い人間のはずなのに、リティクの人間力だけで魅力的に見えてしまう。

・何かのショーに紛れ込んだリティクが、迫力ある音楽ともに踊りだすシーン。割と序盤だけど、本作のピークだった。アナ雪のレリゴーに匹敵する。

・演出効果もあるけど、彼だけ3Dに見えた。

・筋肉の彫りが深く、汗でピカピカ輝いている。

・正直、最初から偽物っぽかった巨大ダイヤより、カットも輝き方も彼のほうが上だった。

・水上での格闘シーンも良かった。マシンを使って、イルカのように飛んだりもぐったりして前進していく。実写とは思えない動きだった。

・女性が彼のことを信じたり疑ったりを繰り返すところでは、ちょっと飽きてしまう。

・あわせてクライマックス級のアクションシーンが多く、かえって印象が薄くなったりもしてしまう。

・どんな大技が決まってもなかなか試合が終わらないプロレスを見ているような感じ。

・それでもオープニングの残酷なシーンが中盤と終盤に二度回収されていくところは気持ち良かった。

・終始三人組で行動していた一作目や、若手に結構見せ場を譲っている三作目に比べて、最もリティク・ローシャンの魅力を堪能できる作品だった。

・カリオストロの城かと思ったらドクターフーに近かった。

・運命の出会いだからと言って、そこに飛び込めるとは限らない。安定のほうが大事な人もいる。

・結果的に、彼が運命の人ではあった。婚活サイト凄い。

(新文芸坐)

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ゾーヤー・アクタル監督『人生は二度とない』(2011年)

2024-06-01 14:31:47 | 映画を見てきた

2024/5/30

・新文芸座のオールナイト上映の一本目。

・開演時間になるとインド映画の配給担当スタッフのかたが出てきてあいさつ。拍手が起きる。

・いかにも映画好きが集っている雰囲気。

・勝手に想像していた、たまたま宿が取れなくて仕方なくここで一晩過ごす、みたいな人は見られなかった。

・確かにただ寝るだけならネカフェのほうが安い。

・結婚を間近に控えた男性が、親友二人とともに、男同士、独身最後の旅行を楽しむ話。

・旅行先はスペイン。旅行先の体験や出会いを通じて、少しずつ三人の過去のわだかまりや、現状の困難さと向き合えるようになっていく。

・少なくとも結婚、長期の海外旅行ができる程度に裕福な三人なので、多少ひどい目にあっても生々しくならない。いい意味で他人事として見られる。

・スカイダイビングのシーンが長くてハラハラした。もっと速くパラシュートを開いてほしかった。

・牛追祭りで荒れ狂う牛にエキストラ的な人が引かれていた。スタントマンなんだろうか。どういう訓練をしたらそんなことができるのか、実際無事だったのか、謎。

・三人ともインド映画特有の鍛え上げられたすごい肉体をしているし、ダンスシーンもしっかり盛り上げている。

・俳優が踊れるというのは大きな武器になる。

・リティクの役は仕事人間。金融ブローカー(wiki参照)で40歳までに貯金を作って引退しようとしている。

・計画に固執しすぎて、過去恋人にこっぴどいフラれ方をしていたりする。

・そんな彼も、旅先で出会った美女とスキューバダイビングをすることで、少しずつ変化していく。

・そのあとの出来事もしっかり時間を使って丁寧に描かれているので、客席から見てインパクトのある出来事はそんなにないのに、見た後の幸福感が強い。

・バチェラーパーティーと言えば「ハングオーバー」シリーズだけど、あんな突拍子もないことが起きなくても立派な作品になりうるんだとわかる。

・少しずつ三人が解放されていく様子を通して、旅行というものの本来の意義らしきものを感じる。

・この作品を旅先で見ている自分はとても運がいい。

・エピローグの過不足の無い描写が美しかった。

(5/24 新文芸坐)

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伊勢朋矢監督『日日芸術』とCINEMA Chupki TABATA

2024-05-27 06:34:22 | 映画を見てきた

2024/5/24

・こちらの映画館は、耳や目が不自由な人も楽しめるユニバーサルシアターとのこと。

・小さい映画館であることは知っていたけど、実際現地に来てみると思っていたよりもかなり小さい。20席。

・どの席にも音声解説用のジャックがある。

・ここに来て普段通りに映画を観ても仕方ないかなと、イヤホンをお借りして音声ガイドのみ鑑賞を試みる。

・映像がなく、音声のみの作品なら、ラジオドラマみたいなものかなという素朴な疑問。

・実際に体験してみると、映像を言葉で説明する音声ガイドと、映像表現自体を想定していないラジオドラマは似て非なるものだった。

・そもそも映画でしか見られない作品は山ほどあるので比較自体あまり意味のないことだった。

・自分は目を閉じていたけど、頭の中には映像が浮かんでいる。中途失明した人はともかく、元々目の見えない人の感じ方をトレースすることはできそうにない。

・でも、映画を見た人と音声ガイドで鑑賞した人が同じ作品のことをちょっと語り合ったりはできる。そのちょっとが大切なんだと思う。

・作品は、若い女優である富田望生が、不思議なメガネをかけることで、様々な芸術活動をする人たちと出会い、成長のきっかけをつかむセミドキュメンタリー。

・幼さの残るヒロインの声とパスカルズの音楽がとてもフィットしていた。

・誰も見たことがないものを表現することが芸術の重要な要素なので、見たものを言葉で説明する音声ガイド鑑賞とは圧倒的に相性が悪かったような気がする。

・始まって数秒でいったん停止。音声ガイド対応の上映ではなかったのでやりなおすとアナウンス。

・視覚障碍のない自分が紛らわしい鑑賞の仕方をしたせいで間違われてしまったかも。申し訳ない。

・私の誕生月なのでジュースをくれたり、アフタートークの無い日なのにアフタートークのアナウンスをしていたり、おちゃめな映画館だった。

・「自分の踊り方で踊ればいいんだ」という言葉が彼女の血肉になっていく様子が感動的ではあるけど、世の中それだけじゃ駄目だということは無数にある。

・そのあたりきれいごとにしないために、どのようなことに注意したのか、しなかったのかということを監督に聞いてみたかった。

・当たり前だけど、双極性障害のかたや七十代から創作をはじめたおじいさんなど、「見たい!」と思える作品を製作されている方がたくさんいた。

・なので、結局帰りにパンフを購入した。折り葉と一筆書き絵の精密さがえぐい。

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クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』

2024-04-02 12:45:18 | 映画を見てきた

2024/4/2

・原爆の父と言われたオッペンハイマーの評伝劇。

・180分ある。家でサブスク視聴するには厳しい長さ。こういう作品こそ映画館がはかどる。

・せっかくの話題作なのでIMAXにしたけど、会話が9割だったので、そこまでこだわらなくてよかったかも。

・ただ、ロスアラモスの原爆実験はすさまじい。クリストファー・ノーランがCGを使わないということくらいは知っていたので、ますます凄みを感じる(実際にはちょっと使っていたらしい)。

・爆発時の数字を聞いて、単に大きな爆弾が炸裂したと思って喜んでいるライト層と、とんでもない異常な規模だとわかる専門家たちの表情の違いも見どころ。

・彼のキャリアの振り返りと、戦後の公聴会のシーンが切り替わりながら話が進む。

・最初、公聴会で調査しているのは人道的な意味での是非なのかな、ちゃんと検証しているアメリカはえらいなって思っていたけど、全然違っていた。

・セックス描写の必要性がわからない。特に公聴会中のシーンは、作り手側の悪ふざけに見えてしまった。そういうタイプの話ではないのに。

・冒頭にプロメテウスの説明。人類に火を与えた罪で永久に苦しみ続けるという神。そのまんま、この映画のオッペンハイマーを説明している。

・原爆を落とさないと日本は降伏しなかったのではないかという指摘。絶対ないとは言えないのがつらい。

・アインシュタインがイメージ通りの見た目と言動。

・科学者からの指摘を、決して正面から受けず、流して崩して倒す合気道の達人のような悪い政治家。

・なるほど、こうやって悪い政治家は正論と戦うのかと、暗い気持ちになる。

・一応、説明はあるので、オッペンハイマーと友好的な人、敵対者、この人たちは何をやろうとして何が問題になのか、最低限のことはわかるようになっている。

・それでも登場人物が多く、前提知識も足りず、何が進行しているシーンなのかよくわからない時間帯があった。

・映画や演劇を見るときは前情報なしが好きなんだけど、評伝劇に関しては展開に面白味があるわけではないので、下調べしてから見たほうがよかったかも。

・良くも悪くも戦争関連のグロい表現はないので、長時間のわりに見やすいタイプの戦争映画だった。

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マーティン・スコセッシ監督『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

2024-03-02 22:55:05 | 映画を見てきた

2024/3/1

・仕事を求めてオクラホマ州に移り住むことになったアーネストが、地元の有力者である叔父の言いなりになって、オセージ族の連続殺人計画に飲み込まれていく話。

・実際の事件をもとに作られた3時間26分の大長編。

・アカデミー賞10部門ノミネートの記念上映で、実際見た人の評判もいい。それなのに、最初の20分くらいは何が起きているのかよくわからず、不安になる。

・徐々に登場人物の関係性、凶悪な行為、計画がわかってくるにつれ、話が加速していく。中だるみしなかった。

・後日譚の見せ方も好き。もうちょっと見たくなる。

・なので実時間ほど長くは感じないんだけど、それでも映画館の環境あっての作品ではある。

・オセージ族は、保留地から石油が採掘され、裕福だったため、白人入植者に権利を狙われているという背景。

・結構な数のオセージ族が殺されている。

・酷い話だけど、殺人シーン、人が生物から物になる瞬間の繰り返しがリズミカルでひきつけられてしまう。

・他の映画だと『アウトレイジ』の感じが近い。

・起きていることに比べて生々しさは薄めだけど、きれいごとで終わらせないという意思も感じる。

・オセージ族を善人として描かないバランスも好き。悲劇性よりも身近に感じさせることを優先している。

・アーネストは、オセージ族の女性と結婚している。

・当然、叔父と妻の板挟みに苦しむ話になると思いきや、アーネストはびっくりするくらい葛藤していない。

・叔父がオセージ族を殺せと言えば殺すし、オセージ族の妻のことは大好き、子供のことも大好き。

・何かを変えなければ、行きつく先はわかりきっているのに、叔父の言いなりになっているうちに、案の定、取り返しのつかないことになっている。

・どうしてこういうことができるのか、にわかには理解できないけど、やっぱり差別意識が根本にあるのかな。

・妻のことを愛しているのも本心なんだろうけど、同時に見下してもいる。たぶんこのへんは両立できる。

・自分自身が空っぽで、善悪の基準を持っていない。自分の感情よりもボスの言うことを優先する。

・遠い地域のまあまあ昔の話なのに、この主人公が全然他人に思えなくて困る。いまの日本人で彼のことを笑える人がどれだけいるのかと考えてしまう。

(TOHOシネマズすすきの)

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ブリッツ・バザウーレ監督『カラーパープル』

2024-02-24 20:19:26 | 映画を見てきた

2024/2/22

・父親や夫に虐げられながら生きてきたセリーが、いくつかの出会いを経て、自分の居場所を見つける話。

・場所はアメリカの海岸沿いにある田舎町。1909年から40年くらいの長期間の話。

・登場人物のほとんどが黒人なので人種的な差別は少ないが、とにかく女性の地位が低すぎる社会。

・差別される側の人間が差別しないわけではないという、当たり前のことが再確認できる。

・若い女性が問答無用で連れていかれるのは、知識としてそういう時代なのはわかっていても、実際に生身の人間同士のやり取りを見ると、相当キツい。

・姉妹が仲良しなのでより悲劇性が増す。妹側の視点でもうひとつ話が作れそう。

・人種差別描写が少ないと言っても、とても印象的な場面で出てくるので、これはこれで厳しい。

・ソフィアの変遷がすばらしい。絶望から復活のところがシーンとして強すぎる。

・ミュージカルなんだけど、問答無用に高揚させるような感じではなかった。

・虐げる人間が虐げられる人間に身を託せるの、一体どういう精神構造しているんだろう。

・一緒に寝たり、ひげを剃らせたり、追い詰めた結果、自暴自棄になられたら簡単に致命傷だろうに。

・個人の屈服と抵抗と回復、そして連帯していく様子が、社会における女性が人間性を徐々に回復させていく歴史とシンクロしている。

・悪事の限りを尽くし、後は不幸になるだけだと思われた彼にも、ちゃんと挽回の機会が与えられている。やさしい。変われる人もいる。

・終盤は夫婦というより親子みたいに見える。

・親子と言えば、疎遠になっていることが不自然なくらい、似たようなノリの神父とシュグの父娘。

・厳しさと楽しさがうまく調整されていて、141分という長尺なのに長さを感じなかった。

・悲惨な差別と向き合う話なのに、ここまで身を任せていいのか不安になるくらい。

・最終的にセリーはお店を持てたけど、たまたま運が良かっただけでもある。

・現実には、挽回の機会なく終わってしまった人生もたくさんあることは忘れないようにしたい。

(札幌シネマフロンティア)

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ガブリエル・アクセル監督『バベットの晩餐会』(1987年)

2024-01-20 13:42:00 | 映画を見てきた

2024/1/19

・フランスから亡命してきたバベットが、宝くじの当選をきっかけに、自分を受け入れてくれた老姉妹への感謝の気持ちと料理したい欲を解放する話。

・最初に年老いた姉妹の慈善活動で始まる。牧師だった父は亡くなっているが、姉妹は善行を続ける。

・姉妹それぞれの若いころに経験した、出会いと別れ。

・前知識がないまま同じようなことが2回あったので、竹取物語みたいな話かと思った。

・のちに将軍となる士官ローレンスと、落ち目のオペラ歌手パパス。どちらも残念な男だったけど、一線は超えない慎ましさもあって嫌いになれない。

・あの干し魚は、鳥に狙われたりしないんだろうか。

・宗教、貧しい、辺境の地、二人でひとつみたいな老姉妹、出自が謎のフランス人召使いと、不安な組み合わせ。

・そこでバベットの宝くじ当選というまさかの展開。そういうの、アリなんだ。

・彼女は、10年以上召使いを続けてきて、初めてのお願いだと姉妹を説得し、晩餐会を開こうとする。

・最初の召使いとして同居することが巨大なお願いだったのでは、と思ったけどスルーだった。

・生きたウズラやウミガメ、牛の頭と牛骨などを見て姉妹や村の人たちは心配になる。そりゃそうだ。

・遠方から来たローレンス将軍と彼の叔母を除き、晩餐会の客たちは、料理の話題には一切触れないことを誓う。

・でも、実際料理はおいしい。

・将軍が、料理の話題を振るたびに村人たちが関係ないこと答えるところ、楽しい。

・水戸黄門が印籠2回出してるような展開だったけど、あれでいいんだろうか。

・一歩間違えると敬虔なカソリックがおいしいものを食べて堕落しただけの話になりかねない。

・本作では、料理の話題をしないという約束が重要で、料理のおいしさだけではこの一体感は生まれていないはず。たぶんそのあたりの調整はうまくいっている。

・美食なんて宗教活動の真逆に思えるけど、例えば讃美歌だってみんなで歌って一体感を演出するものなので、そこまで離れているものではない。

・何の味付けもなく登場して的確に給仕するバベットの甥っ子が有能。まかないを食べているところかわいい。

・御者のおじさんも好き。あの役になりたい。

・得ることよりも与えることが重要という話。理想を求める宗教者と、美食という実利を求める職人の良さが、幸せに融合した作品だった。

(札幌シネマフロンティア)

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湊寛監督『新根室プロレス物語』

2024-01-09 00:44:51 | 映画を見てきた

2024/1/7

・プロレスのインディー団体、新根室プロレスの休止と再開を追ったドキュメンタリー。

・他に見なきゃいけない映画は結構あるような気もするけど、SNSの告知を見てすぐチケットを購入。

・最初に創始者であるサムソン宮本選手と所属選手の紹介。

・リングネームのほとんどが何かのパロディ。不穏さと語感の良さで「MCマーシー」と「ロス三浦」が好き。

・所属選手のほとんどがプロレスとは無関係の仕事をしている。

・「メガネのプリンス」というキャッチフレーズのTOMOYA選手は建築業。メガネ屋ですらないのか。

・団体のモットーは「無理しない、ケガしない、明日も仕事だ」。興行も必ずこの言葉で締めくくられる。

・作中、何度も何度も同じフレーズが出てくる。

・憧れではなく共感。華やかなメジャー団体とは異なる、インディーらしい地に足の着いた掛け声。

・新根室プロレスを全国区にした、アンドレザジャイアントパンダ選手も、こういう雰囲気の団体だからこそ起用できたんだと思う。

・序盤はサムソン宮本選手が中心。玩具店経営。別に顔真似しているわけじゃないだろうけど口元が猪木っぽい。

・入場でロープに引っかかってしまうコミカルな動きが面白いけど、お約束にしては難易度が高そう。膝とか首とかやらかしそうでハラハラする。

・味のプロレスさんの四コマ漫画がスクリーンいっぱいに出てくる斬新な映画表現は初めて見たかも。

・団体において、いかに彼の存在が大きいかが語られた後で、新根室プロレスに試練が訪れる展開。

・大砂厚選手の家。見てはいけないものを見てしまったような気持ちになる。仲間たちは動じるでもなく、食事を置いて少し世間話するだけ。不思議な関係性。

・所属選手は若いころにイケてなかった人ばかりらしい。

・鴻上尚史さんの本で、役者の存在感は「その人の耐えてきた量」だと書いていた。正直、言葉の意味は消化できていないけど、もしかしたら関係あるのかも。

・終わってしまったかに見えた人たちが再び立ち上がる、ドキュメンタリーらしからぬ泣ける構成だった。

・特にサムソン宮本の最期の仕掛けが見事としか言いようがない。死せる孔明だった。

・ナレーションにプロレス好きのヤスケンが入っていたのも、ちょっとしたボーナスポイントだった。

※パンフがとても充実している。おすすめ。

(シアターキノ)

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ポール・キング監督『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

2024-01-06 23:01:48 | 映画を見てきた

2024/1/3

・チョコレート職人で魔法使いのウォンカが、街の実力者であるチョコレート業者からの妨害を乗り越えて、自身のチョコレート工場を建てる話。吹き替え。

・同原作の別の映画作品は未見。先に見てからの方がいいタイプの作品だとは思うけど、そんなこと言ってたらどんどん先延ばしになってしまう。

・しっかりティモシー・シャラメの演技を見るのは初めて。非現実感を違和感なく体現している。

・リアリティラインが低く、話の自由度が高すぎて、作り手のセンスに身を任せるしかない。

・ウォンカとヌードルがたくさんの風船を持って屋根で踊っているシーンが白眉。

・一芸のある弱者が力を合わせて苦境を乗り切ろうとする話は好きだけど、自然にやるのは難しい。

・芸人がまるで役に立っていないのも、バランス取りの一つなのかも。そりゃそういう人だっている。

・文字を学ぶことが複数の役割を持っているのがうまい。

・チョコレートが、甘味であり、魔法を媒介するものであり、資産でもあるというところまではわかるけど、人を殺すための手段にしているところはよくわからない。他にいくらでも方法があるだろうに。異物混入。

・独特すぎる世界観でも話の筋はとても分かりやすい。誰が見てもそうそう展開迷子になることはないはず。

・船のウォンカ席と北極行き、ダイナマイトという徹底ぶり。悪党が心底悪党で、すがすがしい。

・動物園と金庫の門番ふたりの間で、心底どうでもいい奇跡が起こっていて笑った。

・ウンパルンパが電動ベッドみたいで寝起きしている間も笑った。緩急って大事。

・音楽パートになると吹き替えの違和感が強くなってしまうものの、一定の水準で最後まで見せ切っていた。字幕版も見てみたい。

・悪党が「いつかは捕まるが、今はそのときではない」と、ダメなトップガンみたいなことを言っていた。

・キリンを運ぶシーンで「ハングオーバー」の完結編を思い出したのは自分だけではないはず。 

・クリーニング屋の悪党二人。見た目が変わり果てても気にせず抱き合っていた。クソみたいな二人だったけど、お互いへの愛だけは本物なのかも。

(TOHOシネマズ)

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