美味しいお口

施設にいる義母のところに行った
大好物のプリンを持って

うつらうつらと寝ていた義母
おばあちゃん来たよ〜と
何度呼びかけても目を開けない

耳の横で、おばあちゃんプリン持ってきたよ
というと
ハイ、ありがとうとパッチリ目を開けた（笑）

食べ物を持たずに行くと、ご機嫌は悪く
持っていくとご機嫌さん

昨日も一口食べて唇に付いたクリームを
くるりとひと舐めすると
まるで離乳食を始めたばかりの
赤ちゃんのように口をもぐもぐさせて
次の一口を催促する

美味しい？と聞くと美味しいと答える
美味しいものがあると幸せだとも・・・

人は年をとるごとにそれぞれいろんな欲が
見え隠れするけれど
義母の場合は食欲だけが大きく残っている感じ

時折見せる不機嫌さも好物があるときは
なりを潜める

嬉しそうな顔で、美味しいお口で
必死で食べる姿を見ていると
過ぎ去った40年の日々のあれこれが
頭の中を駆け巡る

あれほどしっかりしていた義母の今の姿を
見ることで、私の中で何かがとけていく

こういう時間は私の中にある石のような
塊を流し出すために必要な時間なのだろうか