六角オセロ & 右・石田流 & 目くらまし戦法

六角オセロ と 六角碁 と 将棋の浮き飛車めくらまし戦法 の考案者です

熊が出ます 注意してください!

2021-03-28 10:55:22 | Weblog
SF傷だらけの天使 2話



「兄貴、ここから先は、二時まで事故で止まっているよ」
「仕方ない、歩くか」
山沿いの登山鉄道を、十歳くらいの少女が、一人で歩いていた。
「お父さんと、お母さんが、交通事故で高野山病院に入院してるんです」
「それで、この線路を歩いていたんだ?」
「はい」
「名前は、何て言うの?」
「あけみ、白木あけみ」
「僕は、ショーケン。そっちは、アキラ」
少女は、不安そうな表情で返事をした。
「ショーケンさん、アキラさん、よろしく、おねがいします」
「このバッグの中、何が入っているの?」
「コンビニで買った弁当と飲み物」
高野山登山電車・南海高野線は、事故で紀伊神谷から動かなくなっていた。
「あと一駅だから、頑張ろうね」
「うん」
線路の脇には、細い道があった。
「兄貴、道があるよ」
「もうすぐだから、こっちでいいよ」
「なんだか、コンドルでも飛んでいそうなとこだねえ」
「コンドルはアンデスだよ」
「まあ、そうだけど・・・」

Leo Rojas - El Condor Pasa (Videoclip)

道には『熊が出ます 注意してください!』の看板があった。
「兄貴、熊が出るんだって、おっかねえ~~」
「やっぱ、高野山だなあ」
「あけみちゃん、この人、若い頃は歌手だったんだよ」
「じゃあ、歌を歌ってたの?」
「そう」
「どんな歌?」
「兄貴、歌ってくれよ」
「じゃあ、元気の出る歌を、みんなで歌おう」
「そうだね。あけみちゃんの好きな歌は?」
「なんでもいいわ」
「じゃあ、迷子の子猫ちゃん。知ってる?」「うん」
三人は歌いだした。
・・・
「兄貴、極楽橋だ、ここで終点」
「高野山は、まだかよ?」
「ここからは、高野山駅まで高野山ケーブル」
少女は、不安そうな目をしていた。ショーケンは、少女の手を強く握った。
「病院まで行くからね」
「はい、おねがいします」
三人は、高野山ケーブルに乗り込んだ。外国人が多かった。
「凄い勾配だなあ」
「箱根よりも凄いね」
高野山駅に着いた。
「うわ~~、山だらけじゃん!」
「売店とコインロッカーだけだなあ」
「道はあるけど、バス専用道路って書いてあるよ」
「歩きは駄目ってことか」
「バス停があるよ、兄貴」
「分からないから、それに乗ろう」
駅の標高は、八六七メートルと書いてあった。
「こんな山の上に、町なんかあるのかねえ?」
「そうだなあ」
「不気味なところだね」
二人は、顔を見合わせ皮肉っぽく笑った。
「なんでも、お墓が沢山あるところらしいよ」
「ふ~~~ん」
「町は墓だらけだったりして・・」
「そんなことはないだろう」
「世界遺産だもんね、ここは」
「とにかく、高野山病院まで行こう」
「あいよ」
少女は、微笑んでいた。
三人は、高野山病院前で降りた。
ショーケンは、持っていた少女のバッグを手渡した。
「あけみちゃん、ここが高野山病院だよ」
「どうもありがとうございました」
アキラが、少女の肩を、ポンと叩いた。
「あけみちゃん、僕らも一緒に入るよ」
ショーケンも頷いた。「そうだな、保護者が必要かもしれないからな」
「ありがとうございます」
少女は不安だったのか、喜んでいた。
何事もなく、三人は病室に通された。
少女は、母の顔を見ると泣き出した。
「お母さ~~ん!」
「あけみ、一人で来たのかい?」
「ううん、この人達と一緒」
ショーケンは、、ペコリと頭を下げた。アキラも真似して下げた。
「あけみちゃんが、一人で線路を歩いていたものですから・・」詳しく説明した。
「ありがとうございます」
「お父さんは?」
「隣の部屋にいるわ」
「じゃあ、見て来るわ」
あけみは、すぐに戻って来た。
「お母さんは、どこを怪我したの?」
「打撲よ、腰をぶつけて歩けないの。お父さんは、足の骨を折ったの」
「どのくらいで治るの?」
「先生は、一か月くらいって言ってたわ」
「お父さんは?」
「わたしより、ちょっと長いらしいわ」
ショーケンは、あけみの様子を見ていた。
「あけみちゃん、一人で帰れるかな?」
「はい、帰れます。大丈夫です」
「家には、誰かいるの?」

「わたしの妹が、近くに住んでいるので」
「それじゃあ、安心ですね」
ショーケンは、再度、あけみを見た。
「何か分からないことがあったら、電話して」
ショーケンは、電話番号を少女に教えた。
「じゃあ、お母さん。私たちは、これで失礼します」

空戦・袖飛車 & 空戦・石田流


江ノ電 源氏池

2021-03-28 10:30:22 | Weblog
江ノ電 源氏池 SF傷だらけの天使 102話



江ノ電・鎌倉高校駅 ↑

次の日の朝がやって来た。空は晴れていた。
「きょん姉さん、朝のお散歩しましょう」
「はい、しましょう」
あゆみは三輪車に乗っていた。
「どうして、今日は三輪車なの?」
「きょん姉さんが買ってくれた靴が、早く減るから」
「あゆみちゃん、ケチねえ~~」
「へへへ」
「幼いのに、しっかりしてるわねえ」
「ショーケンさんが買ってくれた三輪車も使わないと」
「ショーケンさんが買ってくれたんだ?」
「はい」
「買ってくれる人が、たくさんいて、いいわねえ」
発明家の程塚隆二がやって来た。
「おはよ~~う!お散歩ですか?」
あゆみが答えた。
「はい、そうです!」
「じゃあ、僕も一緒にしようかなあ」
「それはいいですねえ~~」
きょん姉さん
「もう行って来たんですか?早いですねえ」
「彼らを乗せて行くだけですから、朝飯前です」
あゆみ
「朝ご飯、まだ食べてないんですか?」
ドームが教えた。
「朝飯前とは、朝ご飯を食べていなくても簡単に出来る、って意味です」
「ふうん、そうなんだ。ドームくんは、何でも知っているのねえ」
「だいたいのことは、知っています」
あゆみは、三輪車をこぎだした。
「じゃあ、みなさん出発~~!」
隆二
「電車みたいだねえ~~」
「江ノ電にの乗ってみたいわあ~~」
「僕も乗ってみたいなあ」
「乗ったことあるんですか?」
「ああ、有りますよ。何度も」
「ママと、電車に乗って、お参りに行っていたの」
「鎌倉の鶴岡八幡だね」
「そう」
「大きな池があって、大きな鯉が泳いでいたわ」
「そうだねえ」
「桜の花が、いっぱい咲いていたわ」
「そうだねえ」
「食堂があって、アイスクリームを食べていたわ」
「知ってるよ」
「幼稚園もあったわ」
「鶴岡幼稚園って言うんだよ」
「へ~~~え、知らなかったわ」
隆二
「神社みたいな幼稚園でしょう?」
「うん」
きょん姉さん
「隆二さんも、鎌倉にいたんですか?」
「いえ、僕は、横浜の生麦です」
「生麦事件の?」
「はい」
あゆみ
「横浜って、鎌倉の近くですか?」
「そうだよ、近くだよ」
「だから知ってるんですね」
「きょん姉さんは、博多のどちらに?」
「大濠公園の近くです」
「知ってますよ、大濠公園。有名ですからねえ」
あゆみ
「ドームハウスに住んでたんですか?」
「ううん、普通のマンションだよ」
きょん姉さん
「ここのドームハウスは、いつ頃から?」
「十年くらい前からです」
「なぜ、ドームハウスを」
「ニュースで、見たんですよ。熊本大地震にも壊れなかったドームハウスってね」
「わたしも、ドームハウスに住みたいんですけど、博多にもありますかねえ?」
「さああ、博多ではなくって、福岡ならあるんじゃないでしょうかねえ」
あゆみ
「隆二さんは、宇宙人なんですか?」
「宇宙人じゃありませんよ」
「いろんな発明もするし、きっと宇宙人なんだわ」
「それだったら、いいなあ~~」
隆二は構えて見せた。
「シュワッチ!」
「なんですか、それ?」
「ウルトラの星からやって来た、ウルトラマン!」
「なんですか、それ?」
きょん姉さんも、隆二も笑っていた。
ロボット犬のドームが答えた。
「昔、そういうテレビ番組があったんですよ」
「ドームくんは、何でも知っていますねえ。学校の先生みたいだわ」
隆二
「ロボットの先生。それは、いいアイデアだなあ」
ドームが、三輪車を後ろから押していた。
「キティちゃんの将棋、気に入ったかい?」
「かわいいけど、やっぱり、王将って書いてあるのがいいわ」
「そっか~~~」
「その三輪車、かっこいいねえ~~」
「ショーケンさんに買ってもらったんです」
「それは良かったねえ~~」
「ショーケンさんは、むかし歌手だったのよ」
「知ってますよ」
「りゅうじさん、ショーケンさんの歌、なんか歌えますか?」
「そうだねえ~~」
「何でもいいわ」
「じゃあ、テンプターズの、雨よ降らないで」
隆二は、一本調子で歌いだした。
「りゅうじさん、下手ですねえ~~」
「へへへ」
それでも、平然とした表情で歌っていた。
高野山の空は、晴れて澄み切っていた。


雨よ降らないで

空戦・袖飛車 & 空戦・石田流