時間がすべっていく。
これしてあれして、
あれしながらこれもして。
食事もとらなきゃいけない。
こんな時、描きたくなるから
変わったものは買わない。
見ない見えない。
(キャベツがあればいいわ!)
はずだったのに、
きょうもう無理!
よたよたする足で入ったお菓子屋さん、
Kシェフがちょうど厨房から出てきた。
「これ新しいですよ」
(ほ?)
指の先に抹茶色光るケーキ。
ティラミスだ。
「Kシェフが?」
「ぼくです」
最後にお話ししたのは二年も前なのに、
「ではいただきます」
空白感ゼロ。
あ~あ。
変わったもの、
買っちゃった。
箱が開くと観察が始まる。
この曲線、なんて美しい!
この丸みはどうなってるの?
ちがう、こうじゃない!
下書きの鉛筆で描いて、
消して、
また描いて、
消したりしているうちに気付く。
これを作るのに一体どれだけの・・・
かくと、わかる、ずんと。
これもたしかKシェフ。
やっぱり何度も描き直して、
少しずつ茶色いケーキになって、
よしと筆を置く拳はじわじわ
アツイ。
踏ん張ると。