〈解説〉
中華留日世界救国同盟会宣言について
中華留日世界救国同盟会宣言
支那南部に於ける十六省が破滅すべき大洪水に氾濫され又一方には国家が共産党と広東自治運動者の好戦的活動とに依て脅かされてゐる間に日本の帝国主義者共は領土的野心を満す為め此の機を利用して遼寧及び吉林両省に侵入したのである。日本兵は数千の無辜の人民を殺し無抵抗の命令を受けて居た数千の兵士及び警官を殺害したのである彼等は銀行を占領し兵営砲兵工廠及び民家の多数を焼払ひ其内に在つた金及ひ弾薬を掠奪したのである。参謀「ヤング」(楊?)大将は奉天より逃れたる際北平に於て曰く少なくとも一億万の財産が失はれたと、今や彼等の軍事的侵略は未てだ続行されて居る其けが為め支那兵の殺害されたる事は毎日日本新聞に報道されて居る。
「亜細亜ノバルカン」と云はれてゐる満州は、その商業及び軍事上の重要性が考へらるヽ。時に世界各国の政策に重大なる利害関係を及ぼすものとなる。
日本の侵入は啻に国際法及び不戦条約違反なるのみならず世界の平和に挑戦するものである。我政府は許容し難き行動なるを以て直に之を国際連盟及びケロツグ不戦条約訂(ママ)盟国に訴へたのである然し我々が失望した事には国際連盟は無干渉を票決し何等の決定をも下さず又米国は本事変は不戦条約を適用すべき事件に非ずと発表したのである之に依て此を見れば国際連盟は只国際的たわむれであり不戦条約なるものは只平和時に適用すべきものなることを示すものである然りと雖も吾人支那国民は未だ国際正義と国際公平なるものが存在して居ると信ずのである我々は総ての真相を全世界の前に現はさんが為め本会を組織したのである吾人は国際正義と公平が高唱され世界の平和が保たるべき事を衷心より希望して已まないのである。かヽる時の到来するまでは吾人は我が種族の安全と我が国民の威厳を保つ事に対し最后の努力を試みやうとするのである。あヽ現代は未だ力は正義なりの時代なのであらうか 九月三十日(出典:アジア歴史資料センター レファレンスコードB05016144300 http://www.jacar.go.jp/DAS/meta/image_B05016144300?IS_KIND=RefSummary&IS_KEY_S1=B05016144300&IS_STYLE=default&IS_TAG_S1=reference_code&)42-43頁