満州事変その１３－「留日学生ノ動静ニ対シ地方長官ヨリ報告 昭和六年九月中」その２

〈解説〉

 

　警視庁が各地方に出した、満州事変の勃発による在日中国人学生・商人・労働者などを警戒するようにとの通牒。仙台ではすでに反中国人の動きが出始めている

 

 

 

 

　　　外秘第二五六一号　　　
　　　　　昭和六年九月二十三日　　　
　　　　　　　　　　　　警視総監高橋守雄　　　

　　　内務大臣　安達謙蔵殿　　　
　　　外務大臣男爵　幣原喜重郎殿　　　
　　　　　大阪、宮城、千葉、神奈川　　　
　　　　　北海道、愛知、京都、兵庫　　　各庁府県長官殿　　　
　　　　　山口、福岡、長崎、広島　　　
　　　　　朝鮮、関東各警務局長殿　　　

 

 

　　　満州事変ニヨル在留民国人学生ノ動静ニ関スル件　(二)　　　

 

首題ノ件ニ関シ屡報ノ処其後ノ在京民国人留学生ノ動静左記ノ通リニ有之　　　

 

右及申(通)報候　　　

 

　　　　　　　　　　　　　　　左記　　　

 

 

一，吉林省出身留学生ノ動静　　　
本邦各地ニ在留スル吉林省出身留学生約百名ハ日支現下ノ時局ニヨリ通信杜絶シ九月分学費ノ送付ナキ為メ大部分物質的ニ窮乏シ在京学生ニシテ通学スル者殆ンド無ク何レモ今後ノ成行ヲ憂慮シ居リ現在ノ状況ニテハ帰国ヲ希望スルモ旅費ノ貯ヘナク又引続キ在留センニモ資金ナク日々神田中華青年会内ノ自省経理処及小石川区大和町所在駐日学生監督処ヲ訪問シテ本国ノ情勢ヲ問ヒ或ハ金銭ノ融通方ヲ要請スルアリ吉林省経理員代理譚資同ノ如キハ毎日駐学生監督処ヲ訪ヒ南京政府ニ対シ現況救済方ヲ懇請シ居レルカ同省出身留学生ニシテ帰国旅費ヲ有スル約十名ハ何レモ本日東京駅発夜行列車(時間未定)ニテ神戸経由帰国スト称シ居リ相当動揺ヲ来シ居レリ又各地方在留者ハ或ハ単独ニテ帰国スルモノ或ハ上京スルモノ等続出ノ模様ナルカ昨廿二日仙台ヨリ上京セル二高生妙レン(管理人注－返還漢字なし)ノ語ル処ニヨレハ同名ハ学費ノ欠乏ト同地在留ノ不安トニヨリ入京セル由ニテ仙台地方ハ目下満州駐屯中ノ第二師団所在地ニシテ日支事件発生以来頻々トシテ戦死負傷等ノ情報飛来シ同地方住民ハ民国人ニ対スル反感漸ク深刻ナルモノアリテ留学生等ハ何レモ恐怖ノ念ニ襲ハレ居ル模様ナリト(出典:アジア歴史資料センター　レファレンス№B05016144300　http://www.jacar.go.jp/DAS/meta/image_B05016144300?IS_KIND=RefSummary&IS_KEY_S1=B05016144300&IS_STYLE=default&IS_TAG_S1=reference_code&)12-13頁