冷たい熱帯魚(2011年)(オフィシャルサイト)
■あらすじ
死別した前妻の娘と現在の妻。その折り合いの悪い二人に挟まれながらも、主人公の社本信行は小さな熱帯魚店を営んでいた。波風の立たないよう静かに暮らす小市民的気質の社本。だが、家族の確執に向き合わない彼の態度は、ついに娘の万引きを招く。スーパーでの万引き発覚で窮地に陥る社本だったが、そんな彼を救ったのはスーパー店長である友人の村田だった。村田の懇願により店長は万引きを許す。さらに大型熱帯魚店を経営する村田は、娘をバイトとして雇い入れる。その親切さと人の良さそうな男に誘われて、社本と村田夫婦との交流が始まる。しばらくして、利益の大きい高級魚の取引を持ちかけられる社本。それが、村田の悪逆非道な「ビジネス」を知り、同時に引き返せなくなる顛末への引き金となった。
人間、一歩行けば狂気と欲望とにのまれ倫理観なんて吹っ飛ぶんだ、というのが第一印象。
数日前の日記で、「日本のどこかで誰かがゴリゴリ切られてるとか~」とか書いてたまんまの映画だった。
でんでんが演じる村田は、頭で考えるより先に言葉が出る口八丁っぷりと絶妙ななまりがリアルで凄かった。そして楽しそうに話す良い人な一面と、凶悪な一面。この映画で無くてはならない役が出しきれてたと思う。
正直、私はこういう人は苦手で、わーっと寄って来てまくしたてられてるうちにシャッターを閉じてしまうだろうな。
なんにせよ、この二面性が非常にこわい。
極端に明るい人は、予想に難い裏の一面を持ってるものだ。
一家の崩壊と、だまされ巻き込まれ堕ちていく様、人生の厳しさ
それがこの映画の一番の見どころかな。
日常にありうる光景。
解体シーンは確かにグロかったけど、まだ見慣れてる方なので
ちょっと血が多すぎるけど腸の感じとか切断面はリアルだなぁ、という感想。
映画にしてはやりすぎかな、とは少し思うけど現実世界の解体もきっとあんなだよ。
「日本のどこかで誰かがゴリゴリ切られてるとか」ってのが行われてる現場はそこそこあんな感じだと思う。
前にあってた、隣人を細かく切断してトイレに流して処分したってやつとか。
これも実際にあった「愛犬家連続殺人事件」(どんなだったか覚えてなかったけど、あとで見直した)をモチーフにしてるらしいし。
何事も慣れ。
きっと見てる人も、最初はうわっと目をそむけたとしても
最後は何で骨に醤油かけるんだろう?とか思えるようになってる。
あと、エロさね。
そんなものを映画の要素にぶっこんでくる園子温監督の作品。
まだ「愛のむきだし」と「ヒミズ」しか見てないけど、
共通するのは狂気をまとった人間の底と、嫌悪するくらいの刺激かな。
ヒミズはやっぱり気持ちが入らなかったのでおもしろく無くて
とりあえずこの三作品なら「愛のむきだし」が映画として面白かった。
やっぱり手放しですごい面白いから見てみてよ!とは言いにく作品だ。
エンディングがリアル感に欠けて、少し物足りなさもあったけど
「人生は厳しい」と娘にかける言葉は重かった。
娯楽的な刺激の強い死を見た後は、「死の王」とかをゆっくり見たい。
キャスト
吹越満 - 社本信行
でんでん - 村田幸雄
黒沢あすか - 村田愛子
神楽坂恵 - 社本妙子
梶原ひかり - 社本美津子
渡辺哲 - 筒井高康
諏訪太朗 - 吉田アキオ