箸が転んでもおかしい年頃を
とっくの昔に過ぎているのに、
今もなおそんなことで笑える。
一度ツボにハマってしまうと、もう大変。
笑ってはダメだと思えば思うほど
笑いが込み上げてくる。
悲しいことを思い出そうが、
腹立つことを思い出そうが、
笑いの方が勝ってしまう。
この感覚が分からない人は、
吐き気を我慢しているのと
似ていると思ってもらっていい。
笑い押し殺しエピソードをば。
あくまでも、私にとってドツボだっただけで、
あなたにとっては何てことないかもしれない。
私が雑貨店でバイトをしていた時の話。
ちょうど、福袋を販売している時期だった。
昔と違って、福袋に何が入っているか
ディスプレイされていた。
ディズニーやミッフィーなどのキャラクターの
福袋もあった。
私が一人で店番をしていたとき、
一人のサラリーマン風の男性が入ってきた。
福袋を買いにきたようで、品定めをしていた。
どうやら、彼は子供へのプレゼントなのか、
ミッフィーの福袋を熱心に見ていた。
そして、彼は
“いや〜、ぼかぁ娘のためにここに来たんだよ。
そこんとこ、言わんでも分かってくれよな。
気恥ずかしいんだから。”
という空気感を全身に漂わせ、
私のところへやってきた。
私も、
“いや〜、分かってますってば。
ミッフィーの福袋1つくださいって
言いにきたってことくらい”と
信号をキャッチしつつ、
『いらっしゃいませ』と構えた。
しかし彼は、
『すみません、フ…
フィーフィーの福袋ください』
と言ったのだ!
ミッフィーではなく、フィーフィーと
言われた瞬間、私は言うまでもなく
オーヤンフィーフィー(漢字ワカラン)が
雨の御堂筋を歌っている姿を想像して
しまったのだ!
も〜、私の頭の中はフィーフィーでいっぱい!
私の脳内は、フィーフィーのステージと化した!
もう誰も止められない!
フィーフィーワールド炸裂!
私にとって、オーヤンフィーフィーは、
名前、歌声、髪型、三拍子揃って
強烈なインパクトを持つ、
笑いのネタの標的人物なのだ。
恐らく、彼はミッフィーという名前を
覚え切らず、“なんとなくそんな名前だった”
という感じで私にフィーフィーと言ったのだろう。
ニュアンスでわかってくれるだろうと。
いやー、もう、あんなに
笑いを押し殺した日はないね。
何でこんなときに限って
一人で店番なのだと呪ったね。
押し殺したというか、もう半分以上は
鼻息が漏れてたね。声に出さなかった
だけで、鼻からはフーフー漏れてたよ!
あぁ、今こうやって思い出すだけでも
あのときの筆舌に尽くせぬ苦しみが
襲ってくる。小刻みに体と頬が震え、
いま口を開いたら確実に声に出して
笑ってしまうと、口を真一文字にしたあの日。
笑いをごまかす定番&王道の
『咳払い』を何度となくやったことか。
私は、どうにかこうにか彼に
機嫌良くフィーフィーの福袋を買ってもらい、
なんとか無事に接客を成し遂げた。
彼が去った後は、レジの棚にしゃがんで隠れ、
思う存分思い出して笑った。
いやー、でもあんな思い
二度としたくないよ。
呼吸困難で死ぬかと思った。
笑い死にって、ほんとにあるかもね。
ではでは、またね!