危なかった。
もう少しで死ぬところだった。
銀の匙という名作を知らずに。
角川文庫の、この古風な表紙シリーズが
好きで集めている。
ジャケ買いというやつかもしれない。
銀の匙は2年前に買い、読まずに
そのままコレクションになっていた。
ま、あれだね。
…デアゴスティーニみたいなもんだね。
私の中で、今、純文学旋風が
巻き起こっている。ようやく
銀の匙を読む機会が訪れたのだ。
作者、中勘助が小箱から銀の匙を
見つけ、病弱だった子供時代の
回想シーンから始まる小説。
な〜んだ、と思うかもしれないが、
これが侮れないのだ。
100年以上前の小説なのに、
あまりの瑞々しい表現に、
自分がその時代に今いてるかのようだ。
明治時代の遊びなんて知らないのに、
中勘助が私に憑依したかのように、
鞠で遊んだりお祭りを見たり、
おもちゃをばら撒いて遊んだりしている
姿が見えるのだ。感触まで伝わる。
知らないのに、なんだか懐かしいのだ。
緩急がないので、正直私も
最初の方こそ前後左右に船を漕いで
しまったものの、ページを追うごとに
表現力の豊さ、日本語の丸くて優しく
美しい響きに陶酔し始めた。
読了後は、表紙を眺めては溜息を
つきながら本を撫でたりしていた。
文章が巧いとは、
こういうことだと思った。
心を掴む文章のテクニック、
刺さるコピーの書き方の本が
氾濫している昨今。
そんな内容は、あくまでも
小手先のテクニックであって、
本物ではない。
センセーショナルな言葉で惹きつける、
また、惹きつけられてしまうなど、
それは、「貧すれば鈍する」
という言葉がピッタリだ。
私も気をつけたい。
豊かな表現力なしに、人の心は掴めまい。
本物の伝える文章・表現力とは何かを
教えてくれた銀の匙。
トウテイ真似は出来ないが、
銀の匙を読む機会に恵まれたことは
私の財産と言っても過言ではない。
中勘助は、貝殻のことを
こう表現している。
『海の底の宝物』
なんて豊かなのだ。
私は、この表現を見た瞬間、
この本だけは手放さないと誓った。
ではでは、またね。
✨🐰本日の一曲✨🐰
米米CLUB/ Child's days memory
この曲もまたのびのび
ゆったりした古き良き時代を
ありありと感じさせる曲。
♪大人になって 見えるものが
なぜにあの頃より 少なくなって
いるのだろうか♪
というところが好き。