家暮楽(賃貸)

賃貸借契約の特約条項・補説、現況写真、設備付帯状況

賃貸 考え中

2025-01-23 17:05:53 | コラム
◎ これからの賃貸事業を考える

国土交通省が毎月発表している新設住宅着工統計では、
「持家」に分類される「注文住宅」は、1996年の64万戸をピークに
ほぼ逓減し続けてきて、2024年には凡そ3分の1の21万戸ほどになっている。
一方で、「分譲戸建」も1996年の14.8万戸をピークに減っているものの、
2010年以降も11万戸を下回ることなく、2024年は13万戸超の水準で、
「注文住宅」に比べると底堅く推移している。

減り方の比較を以って、分譲住宅は好調なのだとする論調は正しくない。

住宅ローン環境は、長い間、超低金利が続き、大きな動きはなかったのだから、
きっと、
ここ数年で、建材価格、人工が、かなり値上がりしたこと、
なのに、
所得は、その見合いで(少なくとも中小零細事業者では)上昇してはいないこと、
そのくせ、住宅へも品確法など、求められる住宅性能水準が高められ、
建築コストアップにしか作用していないこと、
などを主な原因として、
個別に設計する注文住宅では、建築主の予算が合わなくなって、
已む無く、レディメイドな分だけコストダウンができる分譲住宅へ流れているから、
分譲住宅のデータ数値だけを見ると、底堅く推移しているように勘違いしてしまうだけなのだと思う。

新築戸建着工戸数は、ピーク時から半減している事実は、
「住宅一次取得層の減少」と
「理想は、注文戸建なのだけれど、立地も建築費も、どうにもならん状況」との2つの軸が通っていて、
この流れが反転することはなく、
今後は、
既存の老朽化住宅の建替需要ならびに幾分かの新築需要があるくらいで、
年30万戸あたりで横ばい推移していくのかもしれない。

古くても、手入れが行き届きキレイであるとか、
デザインが一周巡って新しく感じるとか、
スクラップアンドビルドを良しとせず、長持ちさせようとする機運の高まりとか、
新築持ち家にステータスを求める思考がナンセンスだとか、
「新しいもの好きが多いから新築が選ばれる」なんて「まだ、言うか?」と感じる。


そのうえ、
「資産価値を維持出来る住宅を購入することがポイントだ」とかいうセールストークも、
そら寒い。
「耐震性や環境性能が良い住宅が資産価値は維持されます。」って、
本当のように聞こえるが、保証はない。
そのうち、だいたいの住宅が、ほぼ同じ住宅性能を備え、差異は無くなっていくのだから。
住宅性能が、絶対的な資産価値維持の保証をしてくれるものではない。
住宅性能は、資産価値維持に結び付けるのではなく、
安心・安全・長持ち・メンテナンス負担減・過ごし易さという価値に結び付けて、
比較検討・取捨選択するもの。

長持ち・メンテナンス負担減・過ごし易さ等が、
間接的には資産防衛に貢献することはあるけれども、本筋ではないのを、
セールストークに使われてしまっているとは思う。


「立地の良し悪し」ってのも、
従来評価と同じく、
「利便性、利用融通性(用途地域、法令制限)の差異」のほか、
今後は、ハザードマップからの評点も加味されて、
改め洗練されていくような気がする。

・・・で、賃貸住宅事業で、
土地・家屋が、将来、どのように評価され、利用され、
活かされていくかなんて読み切ることはできないところ、
「その場所で、どんな人が、どのように暮らすなら、最も有益に馴染むだろうか?」を考えて仕様決定していくしかないようで・・・。
という何とも曖昧な結論に着地した。

ニーズも、家賃ほかの条件も、全ては、その視点で決まる。
そうして決められた募集条件に、
金利、インフレ他の影響が加味されていくだけ。
そして、情勢により、その視点・条件は変化していく。

右肩上がりで人口も所得もアゲアゲであった時期に新築された賃貸住宅は、
人口減が進み、所得の二極化が進む時代・情勢に、
どうマッチングさせていくかがポイントになるのであって、
住宅性能や最新設備のフル装備であれば、
誰に対してもセールストークはしやすくはあるけれども、
部屋探しをする方のニーズ(希望条件)が、
必ずしもフル装備ではなくて、必要最小限の控えめ家賃であるケースもあるはずで、
ちょうど良い条件の賃貸物件を提供できまいかと、
いろいろ考え中。

年収と手取りと住宅費目安

2025-01-22 16:48:08 | コラム
【単身者】
 年収額面 推定手取り年収 ひと月あたり住宅費上限目安
              (推奨:手取りの25%以内) 
 240万円  190万円     4.0万円
 300万円  235万円     4.9万円
 360万円  283万円     5.9万円
 400万円  312万円     6.5万円
 450万円  350万円     7.3万円
 500万円  387万円     8.0万円
 
【共働き夫婦、16歳未満の子供2人(扶養)の4人家族】
 年収額面合計 推定手取り年収 ひと月あたり住宅費上限目安
                (推奨:手取りの20%以内) 
 400万円     312万円      5.2万円
 450万円     350万円      5.8万円
 500万円     387万円      6.5万円
 600万円     458万円      7.6万円

  ◎ 超長期のローン金利が低いために、うっかり、
   身の丈以上の借財をしてしまいそうな金利環境にあります。
   超低金利、超長期、団信付き・・・、 
   お得な条件なのだと錯覚してしまいそうです。
   「自宅は購入すれば資産になるから・・・」は、
   間違いとは言い切れませんが、
   自宅は「消耗材」の性質も持っているので、
   「ローン返済ペース」よりも
   「自宅の消耗劣化(価格下落)スピード」が速ければ、
   自宅は、「資産ではなく負債となって」しまいます。(負債化
   負債化が進むと、住み替え(買い替え)も容易にできなくなり、
   地理的にも経済的にも自宅に「地縛」されてしまいます。
   こういう観点から、(特に30歳代半ば以降に)
   返済期間が25年、30年、35年の超長期のローンを組むのは、
   子の大学進学や定年退職も踏まえて、
   慎重に検討しないとアブナイですし、
   持ち家か賃貸かの選択において、
   「ローン返済月額」と「家賃」とを単純に比べるだけで、
   得だの損だの、あるいは、返済を抑えておいて投資に回すなど
   パッシブな選択をすると、
   引き返せなくなりやすいので要注意です。

   賃貸の場合、
   家賃等以外の支払いは、
   家賃保証料、借家人賠償責任保険料くらいなものです。
   しかし、持ち家の場合、ローン元利返済額以外にも、
   管理費・修繕積立金(戸建の場合は修繕費)、固都税、火災保険料など
   なかなかヘビーな支出があるので、
   それらの付随支出まで含めて、
   「持ち家購入」か「賃貸」かを判断したいところです。

   私見では、少なくとも、現役で働いているうちは、
   持ち家か賃貸かの別よりも、
   住居費を、
   手取り収入(もしくは、可処分所得)に対して何%以内となるように、
   住まい選びをする、住み方を考える、ことを判断基準にするほうが
   安全・安心を得やすいと思います。 
   近づいていると言われる、
   南海トラフ地震での、
   自宅への損害(資産毀損)は、
   住宅ローン残債が、甚大被害政策で返済猶予されるとしても、
   ダメージ大です。
  
     賃貸暮らしならば、収入減、教育費・医療費などの支出増で、
     家計の収支状況が変化してしまい、
     現行の家賃負担が重く感じるようであれば、
     駅からの距離や、広さの条件を譲歩して、
     住み替えもし易いので、
     ローンを抱えた持ち家よりも柔軟に生計再建がし易いです。

     負債の固定化が枷になる状況に陥ると、
     自分自身の努力や工夫では、なかなか脱却しにくく、
     生計再建実現のハードル・道程が高く・長く、
     辛いものになることがあります。

   賃貸のお部屋探しでは、
   大震災にも強い強固な造り、エレベーター無しの低層物件を
   おススメします。

   当物件301号 フルリノベ前のスケルトン状での撮影
   地上高9mほどの3階部分の鉄骨柱・鉄骨梁
   鉄骨柱200mm角級
   鉄骨梁の成250mm級
   小屋梁垂木の成150mm級です。

ごつい柱

ごつい梁

しっかり小屋組
   

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どれだけ娯楽・貯蓄などに回すかにも由りますが、
単身者向けの当マンション(約21平米)では・・・、
年収(額面)270万円前後、
社会保険料、所得税・住民税控除後の
手取り年収が210~220万円くらいあれば、
フィットしそうです。
 * 個賠付き賃貸住宅保険料(月あたり625円)、
   家賃債務保証料(月あたり834円)、
   府民共済掛金(月2,000円)を含めて。

当ブログ筆者の場合、
転勤で、初めて賃貸住宅へ入居しましたが、
6畳ワンルーム(15平米くらい、収納無し、洗濯機はベランダ)、
3点ユニット、電気コンロ付の簡易キッチンで、
最寄駅までは徒歩5分圏内の家賃が月4.2万円でした。
政令指定都市(区)内の物件です。
 
衣服ほかの持ち物が少なめでしたが、 15平米では、
スーツ・Yシャツ・コート等を掛ける組立式パイプハンガー2棹と
衣装ケース(樹脂製の引出しタイプ、スタック式のやつ)、
小型の2ドア冷蔵庫を置いたら、
寝床(敷布団)スペースしか残りませんでした。
食事はほぼ全て外食、冷凍食品を電子レンジで温めるだけ、
モノは買わない、仕事から帰宅したら寝るだけの生活なら、
用は足りる広さではあるのですが、
「もう少し広いと助かる」とは感じてました。
20平米以上あれば、
少し(気持ち)ゆとりを持つこともできるのかな?
・・・とは思います。
 
収入は簡単には変化させることができなくても、
最寄駅までの距離条件を緩めてみる、あるいは、
ひと駅、ふた駅ズラしてみると、
必要な広さを確保できることはあります。
ひと駅・ふた駅の違い、駅からの徒歩所要時間の2~3分程度の差が、
日々の重大な課題になることはないと思います。

社会人1年目の年収(額面、冬賞与込み)は240万円そこそこでしたが、
社会人3年目になるまでは、社員寮に住んでました。
ボロい木造(バランス釜式の風呂付、キッチンは無し)ながら、
6畳2部屋の寮費が月2万円程度たっだので救われてました。
  * 福利厚生により、半額相当が住宅補助のようなもので控除されてたようです。
ただ、勤務先まで片道1時間半。
それが苦痛なら、寮を出て、
自分自身で住まいを見つけて、住宅手当は
規定の範囲なら認めますよ・・・という仕組みのようでした。
 
広さか、便利さか、設備充実度か、それとも・・・、
何かを譲歩して、 住宅費支払いに窮しないよう、
落としどころを付けて、選んでいくことになるのでしょうね。

告知義務の有無の判断

2025-01-22 16:12:31 | 202号
居住用不動産における心理的瑕疵の判断でのトラブルを減らすため、
2021年10 月に国土交通省が
「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」を公表。
なお、事業用物件は、このガイドラインの対象に含まれていない。

≪物件内死亡についての告知基準≫

死亡理由が、
「自然死」や「日常生活での不慮の事故」の場合は、
原則として告知は不要。
一方、「自殺・他殺・火災」による死亡があった場合は、
告知義務が在る。
集合住宅では、
該当住戸の住人が日常生活で使う廊下やエントランスなどの共用部で発生した死については告知義務の対象となる。

賃貸物件で告知義務が在る場合であっても、
概ね3年で義務免除とされるという認識で良い・・・らしくて、
ただ、賃借申込人から尋ねられた場合(※)や、
社会的影響が特筆するほどに大きい事件などでは、
経過年数に係わらず告知義務が在ると認識しておくのが良さそうだ・・ということらしい。

 ※ 賃借申込人が自発的に(敢えて)物件内死亡有無について
   尋問するかどうかは分からない。
   単に、賃借申込人が尋問するのを忘れたのかもしれず、
   その場合、
   自然死があっただけで「告知義務なし」の物件であっても、
   事後トラブルを避けたいがために、
   宅建業者が、わざわざ「自然死がありましたよ」と
   報告するようなことを続けるとガイドラインは骨抜きとなる。
    (賃貸借検討対象外の既存不動産が、増えるばかりとなる。)
   そもそも、
   「賃借申込人が自然死有無について尋問するのを忘れる」
   ということは、
   さほど「物件決定における重要事項でもない」
   という解釈をベースにして、
   ガイドラインに準拠した重説を実施しておけば、
   宅建業者の業務責任は果たされているとするのが真っ当かと感じる。
   物件内の自然死について賃借申込前に尋問するのを忘れた申込人が
   「その告知が無かったこと」に納得いかないとする場合でも、
   せいぜい、賃貸人との個別交渉できるくらいが妥当かと。
   ガイドラインに準拠している以上は、
   賃貸人が過剰な責め(賃借人の無理な要求)を負う必要は無く、
   一般の賃貸借契約の任意解約・明渡しを落とし処として良いと思う。 
   入居中に酷い使用方法をして原状回復が必要となる場合は、
   ちゃんと賃借人へ請求していい。
   自然死告知の有無に関係なく、
   使い方の粗さによる原状回復は賃借人の責任だから。
   ガイドラインは、
   「不動産取引に係る心理的瑕疵に関する検討会」で、
    判例も参考にして策定されたものだから、
   訴訟となっても賃借人に有利な裁定が下ることはないと思われる。  

さて、告知が必要になるのは、どういう状況・事情か?
 告知義務なし 告知義務あり

①老衰、病死(自然死)
 ※ 発覚からの経過期間の定めは
無い。
 
②日常生活での不慮の事故死
(自宅の階段からの転落死、
入浴中の溺死、転倒事故、
食事中の誤嚥など
日常生活の中で生じた事故)

③隣接住戸や
通常使用しない集合住宅の共用部
での死亡
(自殺・他殺を含む)
 ※ ①と同様に
発覚からの経過期間の定めは
無い。


❶自殺、他殺、火災による死亡

❷特殊清掃や大規模リフォーム等が
行われた場合
 ※ 賃貸借取引の場合、
上記❶❷の死が発生もしくは
発覚してから、概ね3年間は告知し、
以降は原則として告知の義務は無い
 ※但し、売買取引については
経過年月に関わらず告知義務が継続する

❸借主・買主から尋問された場合

❹社会的な影響の大きさ等から、
借主・買主が把握しておくべき
特段の事情があると
宅建業者が判断した場合

 
集合住宅においては、
同一物件内であっても、住人ごとに告知義務の有無に差異がある。
⑴ 室内で告知すべき事故が発生した場合、
 告知義務があるのは該当住戸に入居する人のみになる。
 隣室住人を含む他の住人には、原則として告知不要。
⑵ 共用部で告知すべき事故が発生した場合には、
 該当箇所を日常的に使う住人に対して告知義務が在る。

★ ここまで明示・公表されていても、
クレームリスクを怖れすぎるがために、❷の解釈を捻じ曲げて、
事実・本旨から辿れば告知義務のない物件をも
「告知義務あり」として取り扱う宅建事業者(担当者)が
出現する可能性がある。
例えば、
築35年を経過して、
そろそろフルリノベーションする適期にある賃貸ワンルーム物件で、
自然死があった場合、
特殊清掃が必要ないと判断できる場合でも、
賃貸人としては、大規模リフォームを実施することがある。
そして、実際に特殊清掃を実施しておらず、
ガイドラインに拠れば「告知義務なし」である場合にも関わらず、
大規模リフォームを実施したことを以って、
「告知義務あり」と歪曲 して、
物件を取り扱う宅建事業者(担当者)が出現するかもしれないということ。

「自然死で特殊清掃の必要が無かったなら告知不要」という
ガイドラインの主旨を無視して、
「大規模リフォームをしたこと」のみを以って
「告知義務あり」とするのは歪曲解釈であろう。