観光バス駐車場には、大勢のバス達が並んでいます。出番を待つバス達ですが、コロナという悪いウィルスが邪魔をして、毎日暇な時間を過ごしていました。
「一体どうなっちゃうんだろ。この世の中は、そして僕たちの未来は」
「あの頃は良かったね。ツアーのチラシが出ると、すぐに満車の報告が来た。お客さんの笑顔が見れて私達も嬉しかったわ」
「こないだ、久々に仕事が来たと思ったら、ワクチン接種の会場までのピストン輸送。なんだかガッカリだよ。だって、皆暗い顔してるんだもの」
「いつになったら、前の生活に戻れるのか。ぬか喜びさせられた後にキャンセルばかりでやる気なくすよな」
バス達の井戸端会議は続きます。そこへ運転手さんとガイドさんがやって来て、皆に向かって言いました。
「バスのみなさん!未だ景気の回復は見通しがないため、早期リストラを希望される方から受付ます。リストラ後は、リサイクルでまた何かの役に立つでしょう。
リメイクして、他の市町へ転勤もできますが、先着順となります。まず健康診断から
今後の行き先が決まります」
バス達はざわめきました。ざわめきの後にため息や怒号が沸き、そしてバス達は自動でエンジンをかけ、動き始めました。
旅に出よう。自分達で幸せを探してみよう。合言葉で合図し合い、動き出しあてもない旅に出たのです。