
「骸骨ビルの庭」は図書館に予約していて忘れた頃手元に届いた。もし書店で目にしたら、「骸骨(がいこつ)ビル」とまがまがしい名前がタイトルに付いているのと、表紙画が嫌いで購入しなかっただろうと思う。
阿部轍正と茂木泰造という二人の青年が、進駐軍が去った”骸骨ビル”で戦災孤児たちを育てあげた。しかし、阿部は子供への性的暴行の汚名を着せられ、非業の死を遂げる。そのビルに八木沢省三郎は住人を立ち退かせるため、管理人として着任した。それにしても、なぜ子供たちは成人しても、このビルに住み続けているのか。茂木はどうしてビルに留(とど)まることに執着するのか。いくつもの疑問を一人一人に聞いてみた。
単なる美談ストーリーで終らせずに、読者をそれ以上の高見に登らせてくれる作品でした。印象に残る言葉が至るところにありましたが、心に残ったものを2つ。
フランクルの『意味への意思』から
われわれが彼に与えることのできるもの、人生の旅の餞として彼に与えることのできるもの、それはただひとつ、実例、つまりわれわれのまるごとの存在という実例だけであります。
「劇を演じるということが大切なときがあります。それを馬鹿げたことと軽んじる人は、自分の目に見えるもの以外は信じられへんのです。自分の知恵や知識の外には出られへんのです」茂木が八木沢に語った言葉より
※「劇を演じる」とは「虚構を演じる」という意味で使われていない
読んだ後で知ったのだが、宮本輝はこの作品で12月に司馬遼太郎賞を受賞していた。『泥の川』『蛍川』にはさほど感銘を受けなかったのに、『骸骨ビル』は素直に私の心に入ってきてすとんと落ちました。書中に描かれた料理の手ほどきも素晴らしかった。八木沢がオムレツを何十回も焼くシーンを読み、私もその日は本から伝授されたふわふわオムレツを久しぶりに食卓へ並べました。
阿部轍正と茂木泰造という二人の青年が、進駐軍が去った”骸骨ビル”で戦災孤児たちを育てあげた。しかし、阿部は子供への性的暴行の汚名を着せられ、非業の死を遂げる。そのビルに八木沢省三郎は住人を立ち退かせるため、管理人として着任した。それにしても、なぜ子供たちは成人しても、このビルに住み続けているのか。茂木はどうしてビルに留(とど)まることに執着するのか。いくつもの疑問を一人一人に聞いてみた。
単なる美談ストーリーで終らせずに、読者をそれ以上の高見に登らせてくれる作品でした。印象に残る言葉が至るところにありましたが、心に残ったものを2つ。

われわれが彼に与えることのできるもの、人生の旅の餞として彼に与えることのできるもの、それはただひとつ、実例、つまりわれわれのまるごとの存在という実例だけであります。
「劇を演じるということが大切なときがあります。それを馬鹿げたことと軽んじる人は、自分の目に見えるもの以外は信じられへんのです。自分の知恵や知識の外には出られへんのです」茂木が八木沢に語った言葉より
※「劇を演じる」とは「虚構を演じる」という意味で使われていない
読んだ後で知ったのだが、宮本輝はこの作品で12月に司馬遼太郎賞を受賞していた。『泥の川』『蛍川』にはさほど感銘を受けなかったのに、『骸骨ビル』は素直に私の心に入ってきてすとんと落ちました。書中に描かれた料理の手ほどきも素晴らしかった。八木沢がオムレツを何十回も焼くシーンを読み、私もその日は本から伝授されたふわふわオムレツを久しぶりに食卓へ並べました。