知っておくだけで今よりも「税金が安くなる」
2021/09/22 11:30(東洋経済オンライン)
給与明細に記された「控除」の欄。年末調整や確定申告のとき、今よりもうまく活用すれば、あなたの手取りが増えることはご存知でしょうか? 今よりも手取りを増やす「15の控除」を、公認会計士・税理士の梅田泰宏さんの新刊『「給与明細」のカラクリ』より一部抜粋・再構成してお届けします。
税金用語として使われる「控除」は、ざっくり言うと税金が安くなることであって、税金を算出する前の課税所得から差し引くことのできる「所得控除」と、算出された税金から直接引き去る「税額控除」の2種類があります。
では、もっと突っ込んでおさらいしていきましょう。
知っておきたい「15の控除」
まずは所得控除から。所得控除は次の15種類に細分化されます。
①雑損控除
災害・盗難・横領などの損害を受けた場合に適用される控除で、確定申告が必要です。具体的には、自然現象による災害。震災、風水害、冷害、雪害、落雷などや、人為的な異常によるもの、火災、火薬類の爆発などが相当します。それから、害虫などの生物による異常な災害、たとえば、家がシロアリに食われて駆除したり、スズメバチの巣を除去したりした費用は雑損控除として認められます。盗難や横領といった犯罪も雑損控除に認められます。ただし、詐欺や恐喝の場合には、雑損控除は受けられません。
②医療費控除
1月1日から12月31日までの間に、一定額を超える医療費を支払ったときに所得控除が受けられる制度で、確定申告が必要です。納税者本人と、生計を一にする配偶者やその他の親族が支払った医療費を合算できます。
一定額とは、一般的なサラリーマンの場合10万円。健康保険組合や協会けんぽが支払った部分、個人的に加入している医療保険によって支払った部分は含めない、自己負担の部分だけが対象です。その年の「総所得金額等」が200万円未満の人は、10万円ではなく「総所得金額等」の5%を超える部分が所得控除できます。
あるいは、「セルフメディケーション税制」も活用できます。これは、きちんと健康診断を受けている人に限り、市販薬の購入費用を所得控除できるものです。その1年の間に1万2000円以上の対象医薬品を購入した場合、その金額から1万2000円を差し引いた額を所得控除できるという制度です。こちらも本人だけでなく、「生計を一にする」家族とまとめることができます。通常の医療費控除か、セルフメディケーションの特例かのどちらかの選択になります。
③社会保険料控除
一般的なサラリーマンの場合は、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、労働保険料(雇用保険と労災保険)の合算が所得控除され、年末調整時に会社が申告します。20歳以上の子どもの年金を親が支払っている場合など、生計を一にする親族が負担すべき社会保険料を支払った場合も合算することができます。
社会保険料控除で忘れられがちなのが、老親の社会保険料を子どもが支払っているケース。とくに75歳の後期高齢者になると、介護保険料を直接本人が支払うことになります。これを子どもが肩代わりしているのに、社会保険料控除の申請を忘れてしまうケースが多いので、年末調整で忘れないように。
④小規模企業共済等掛金控除
次の3つの小規模企業共済の掛金などを支払った場合に所得控除が適用されます。年末調整で申告できます。
(1)独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
(2)企業型確定拠出年金(企業型DC)または、個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
(3)地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金
(2)企業型確定拠出年金(企業型DC)または、個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
(3)地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金
⑤生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に適用される控除で、年末調整で申告できます。新保険料の場合、最大所得控除額は3種類合計12万円です。
⑥地震保険料控除
地震保険料などを支払った場合に適用される控除で、年末調整で申告できます。これも最大所得控除額は5万円です。
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⑦寄付金控除
国・地方公共団体・公益社団法人・公益財団法人などに対し「特定寄付金」を支出した場合に適用される控除で、確定申告の必要があります。確定申告の際には特定寄付金の支出を証明する書面が必要になります。
ふるさと納税も特定寄付金のひとつです。控除金額は、次のいずれか低いほうの金額から2000円を差し引いた金額です。
(1)その年に支出した特定寄付金の額の合計額
(2)その年の総所得金額などの40%相当額
(2)その年の総所得金額などの40%相当額
寄付金控除で注意したいのは、子どもが私立学校などに入学した際の寄付金は、控除の対象にならないケースがあることです。
所得税法で「学校の入学に関してする寄付金」は寄付金控除の対象となる特定寄付金から除かれていて、「入学願書受付の開始日から入学が予定される年の年末までの期間内に納付した」寄付金は、原則としてこれに当たる(寄付金控除の対象とならない)とされているからです。
同じ額を寄付するのでも、入学時でなく、2年生になる翌年に寄付するのであれば寄付金控除を受けられ、税金が還付されることもあります。ただし、入学時の寄付金であっても控除の対象になるケースもありますので、寄付を考えているなら、寄付金の募集要項で寄付金控除の可否を確認しておきましょう。
⑧障害者控除
納税者、および納税者と生計を一にする配偶者や扶養家族が障害者に該当する場合に適用される控除で、年末調整で申告できます。16歳未満の扶養親族も適用されます。控除の金額は最大で75万円で、規定による区分があります。
⑨寡婦控除
夫と離婚・死別した女性に適用される控除で、年末調整で申告できます。2020年に、次に説明する「ひとり親控除」の新設とあわせて制度変更がありました。寡婦とは、その年の12月31日の現況で、いわゆる「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人をいいます。
(1)夫と離婚した後、婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
(2)夫と死別した後、婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
(2)夫と死別した後、婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
控除額はいずれも27万円です。なお、納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいる場合は、対象になりません。
⑩ひとり親控除
寡婦控除に対して寡夫控除もあったのですが、令和2年からひとり親控除になりました。納税者がひとり親のときに適用される控除で、年末調整で申告できます。寡婦控除と違い、性別は問いません。控除額は35万円です。
ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないこと、または配偶者の生死の明らかでない人のうち、次の3つの要件すべてに当てはまる人です。
(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
(2)生計を一にする子がいること(この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます)
(3)合計所得金額が500万円以下であること
(3)合計所得金額が500万円以下であること
学生や配偶者のための控除
⑪勤労学生控除
納税者自身が勤労学生であるときは、所得控除を受けることができます。控除額は27万円です。勤労学生とは、その年の12月31日の現況で、次の3つの要件すべてに当てはまる人をいいます。
(1)給与所得などの勤労による所得があること
(2)合計所得金額が75万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
(3)特定の学校の学生、生徒であること、合計所得金額が500万円以下であること
(2)合計所得金額が75万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
(3)特定の学校の学生、生徒であること、合計所得金額が500万円以下であること
⑫配偶者控除
年間48万円(給与のみの場合は103万円)以下の所得金額の次の4つの要件すべてに当てはまる配偶者がいる場合に適用される控除で、年末調整で申告できます。
(1)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
控除額は、控除を受ける納税者本人および控除対象配偶者の合計所得金額、さらに控除対象配偶者の年齢により、13万円から48万円の範囲で変動します。ただし、納税者本人の合計所得金額が1000万円を超えている場合は対象外となります。
⑬配偶者特別控除
配偶者に48万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除が受けられるのが配偶者特別控除です。
年末調整で申告できます。控除額は、控除を受ける納税者本人および控除対象配偶者の合計所得金額により、1万円から38万円の範囲で変動します。配偶者特別控除を受けるための要件は次のとおりです。
(1)控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1000万円以下であること
(2)配偶者が次の要件全てに当てはまること
イ)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
ロ)控除を受ける人と生計を一にしていること
ハ)その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払いを受けていない こと、または白色申告者の事業専従者でないこと
ニ)年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること
(3)配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと
(4)配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます)
(5)配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます)
(2)配偶者が次の要件全てに当てはまること
イ)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)
ロ)控除を受ける人と生計を一にしていること
ハ)その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払いを受けていない こと、または白色申告者の事業専従者でないこと
ニ)年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること
(3)配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと
(4)配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます)
(5)配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます)
⑭扶養控除
扶養する家族がいる場合に適用される控除で、年末調整で申告できます。扶養控除の対象になる親族は、その年の12月31日の現況で年齢が16歳以上の人を対象としており、年齢ごとに区分が変わり、その区分や年齢、同居の有無により、控除金額は38万円から63万円の範囲で変動します。
覚えておきたい「基礎控除」
⑮基礎控除
基礎控除は合計所得金額が2400万円以下の納税者であれば、原則として、誰でも48万円が控除されます。
2400万円超2450万円以下なら控除額は32万円、2450万円超2500万円以下なら控除額は16万円、2500万円超は控除の対象外となります。
15種類の所得控除を紹介してきましたが、その中に、「給与所得控除」が含まれていないことに気づかれましたでしょうか? ちょっとわかりにくいのですが、「給与収入」から必要経費を除いたのが「給与所得」であるというのが前提だからです。給与所得控除はあくまでも必要経費を引き去るものに相当するというわけです。
15種類の所得控除は、それによって算出された所得から控除されるものという位置づけなのです。
著者:梅田 泰宏
確定申告 配偶者控除 厚生年金保険 地震保険 雇用保険
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