私たちは、今を生きていると思っている。
しかし、私たちに生きる道を説いた、仏陀、キリスト、ムハンマド。
その魂は永遠でも、今はいない。
物理学の基礎を創った、ニュートンもアインシュタインも、すでに死んでいる。
美術の世界のダ・ヴィンチ、ゴッホ、ピカソ。
哲学者プラトン、アリストテレス。
私たちが、その生き様から影響を受けた、アレキサンダー、カエサル、ナポレオン、ケネディも、今はいない。
皆、死者の世界の住人だ。
今を生きる私たちは、死者の世界の住人から、あらゆることを学んでいる。
私たちの知識や価値観のほとんどは、今を生きる人々よりは、はるか昔に、死んでしまった人々の影響を受けている。
今を生きなければならないのに、頭の中には、はるか昔に、死んでしまった偉人たちが生きている。
素晴らしい歴史家が多かったせいかもしれないが、私たちは、歴史に囚われ過ぎている。
ただ、その歴史家たちも、既に死者の世界の住人。
現代のような情報化社会では、今を生きる偉人から学ぶことは、難しくなっている。
偉人たちは、生きているが故に、アラが目立ちすぎるからだ。
あまり好きな言葉ではないが、「召使いの前に英雄無し」ということだ。
皮肉な話だが、死者からしか、素直に学べなくなってしまった。
そうは言うものの、私たちは、「今」から学ばなければならない。
とくに、ここ数十年の世界の変遷は、ここに至るまでの長い長い歴史の変遷を、凌駕するものだからだ。
確かに、歴史は面白い。
しかし、現在、そして、未来を生きなければならない私たちは、歴史書を脇に置いて、「今」という、この時代から学ばなければならない。
いつまでも、死者の世界を、彷徨っていてはいけない。