美意識を磨く 文田聖二の『アート思考』

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美術教育が、人や社会を育てる

2017年08月02日 15時30分40秒 | 日記
美術教育が、人や社会を育てる。
よく観ること。
しっかりと感じとること。
多角的な視点を持つこと。
伝え方を工夫すること。
本質を探ること。
違和感を見つけ解消していくこと。
知らないことに気づいていくこと。
創造すること。 これら生きるために大切な感覚機能を
美術教育で磨ける。

デッサン力があるということは、
絵の上手い下手の違いではなく、情報を収集する力や伝達する能力、
ものごとの構造を見極められることや構想している計画や企画を具体的に展開していく能力(プランニング)。
頭の中のイメージ(ビジョン)を絵に描き出す感覚を磨くことが、日常生活や一般的な仕事で見直されてきている。

アインシュタインが残した言葉
「直観は聖なる授かりものであり、理性は誠実なる従者である。私たちは従者を敬う社会をつくり、授かりものを忘れてしまった」
人の脳に備わる本当に大切な能力、知覚・直感・想像力・創造力を近代社会や教育で、ないがしろにしてきたことが現代に影響している。



美術の効用

「アート&デザイン」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
人の心を高揚させ、歓喜させるバロック絵画やハリウッド映画、おしゃれなインテリアやファッション、浮世離れした芸術家、あこがれのイラストレーター、卓越した巨匠たちの彫刻、パリやルーブル美術館、印象派画家たちが描きだす輝く色彩…などでしょうか?また、思いどおりに絵を描いたり、造形できたりすることだけがアート&デザインの魅力、威力でしょうか?
日本では、芸能スポーツに関する情報やその選手、芸能人たちの活躍は各メディアで頻繁に紹介され、社会におよぼす影響力もひろく知られていますが、アート&デザインもまた、あらゆる分野での可能性を秘めながらその威力や魅力を充分に有効利用されていないのが現状です。
スポーツと同様、アート&デザインも生活に密着したものです。また、その土地の文化に根付いたものであり、その時代を象徴するものでもあります。だからこそアート&デザインの基本表現であるデッサンや色彩を学ぶことでその時代をその時代の人々の中で生き抜く力を磨いていくことができます。
 以前、小学校で起きた無差別の殺傷事件発生の数ヶ月後、恐怖感が残る児童に対して学校に復帰させるために校内での合同授業でのリハビリが行われました。これは決められた図柄を指定された枠内に決められた色を生徒全員で一緒に塗っていくという単純な壁画制作でした。先生や友達と協力しながら一枚の壁画作品を完成させていく行為の中で生徒たちの心が徐々に開かれていき、小学校で友達と集まることの喜び、楽しさを自然に取り戻していけたアート&デザインがもつ魅力、威力が効果的に使われていた印象の深い事例のひとつです。
また、アート&デザインを学んでいく過程で、自虐行為や過食の症状が無くなっていった教え子もいます。小さな出来事まであげていったらきりがありませんが、アート&デザインの影響力は多岐にわたり、計り知れません。
舞台や絵画、彫刻、絵本など、いわゆる作家活動に限らず、あなたがアート&デザインと考えるものなら「美術の効用」が、理想の旅行計画やおもてなし料理、夢のマイホーム構想、明るい将来のためのリフォーム、家族を喜ばせるレジャー、自分を成長させる仕事とどんな表現にもあてはまるはずです。それがアート&デザインの魅力であり、威力です。



デッサンの効用

デッサンって、どんなイメージで、どんな絵を思い浮かべますか?
鉛筆や木炭、コンテなどの画材を使って、モチーフを写真の様に写し描いていく修行のようなイメージを持たれている方が多いようですね。勿論、造形力を磨くために何枚もデッサンを描くといったこともありますが、そもそも「デッサン・デザイン」とも同じ語源である「designare(デシネーレ)」は、計画や考えを示すという意味をもつ設計図や企画書みたいなものです。
対象(モチーフ)を表面的に写し描かれたものがデッサンではなく、対象の特徴、内部の構造、本質など多角的な視点でとらえる(観察:リサーチ)力、的確に情報を読み解いて意をもって再構築する(思考:コンセプト)力、誤解がないように分かりやすく伝える(伝達:デザイン)力、これらを総合して描いたものがデッサンです。

なぜデッサン力が、「アート&デザイン(特殊な職業)」以外の一般社会人にも効用があり必要なのか?
一般企業の方たちもクライアントから依頼された、あるいは望んでいる考えや目的を正確に読み解き、コンセプトを構築し、商品化やサービスとして提供、伝達していく必要があります。クライアントと目的を共有するために絵に描ける(思考を視覚化する)ことでコミュニケーション能力も向上していきます。こういったいわゆる画力だけではなく、観察力・思考力・伝達力といった社会を生き抜くために必要となる感覚機能が、デッサンを学ぶことで身につけて磨くことができるのです。
教育機関だけではなく、企業や行政の職員の方に向けてデッサンレッスンを取り入れた研修も実施しています。
「一般企業と美術学校の組み合わせって不思議?」
社会人に共通して求められる力である、本当の問題点を発見して、その答え(将来のビジョン)を自ら創造し、そのビジョンを実現(解決)していくための感覚機能(観察力・思考力・伝達力)いわゆる創造性と視覚化が、デッサンの効用といえます。


大半の日本人が絵を描けないと思い込んでいる。
才能が埋もれている。
絵を描くことに苦手意識があったり、美術が嫌いになったりするのは
日本の美術教育の影響。
世界の中でも日本人は絵が描ける環境にいることに気がついていない。
日本人は日常的に良質なクオリティ画像に囲まれて育っている。

息詰まったら全く違うことに切り替えることで、脳が解放される。
次々と新しい視点で美術作品を生み出し
天才と呼ばれたピカソのアトリエには、いつも表現手段の違う絵画、彫刻、陶芸など
制作途中の作品が並べられていた。
一つの制作に執着しないことで、いつも新鮮な目でそれぞれに集中できていた。

見えないものが見えるようになる。若冲の「群鶏図」にみられるような驚異的な細密描写と
オディロン・ルドンの顕微鏡で覗き見るような絵の世界観には共通点がある。
いずれも表面的な写実描写に留まらず、リアルな仮想世界にまで到達して描いている。

人に必要なこと。
教育で問われている”知識”か”考える力”か?
その前に必要な
問題点を見つけ出す力
違う視点に気づく力
知らないことを受け入れる力が
答えのない問題を解決していく創造力につながる。
やはり人には
心身の動揺を伴うような強い感動から沸き起こる
欲求が必要だと思う。

「欲望というのは自存するものではなく、それを満たすものが目の前に出現したときに発動するものなのである。」
映画【羊たちの沈黙】のレクター博士の言葉。

人の感情は
矛盾でできている。
満たされると満足できなくなり、
上手くいっても次の課題が見えてくる。
ただ優しいだけでも冷たいだけでも心は動かない。
矛盾するゆさぶりで感動が起こる。
そんな矛盾を視覚化したのが画家だったり、
味覚は料理人、
文章にしているのが小説家だったりする。

小説や俳句なども含めて創作の習慣は
ものごとを意識してみるようになるから現実が見えてきて
思い込みに惑わされなくなる。
実際には思い込みや分かっているつもり、伝えているつもりが多い。
絵を描くときも「見たつもり」では描けない


①テーマ(構図:何を表現したいのか。)
 「テーマ(目的)とモチーフ(素材)を生かす・素材を使って目的を他者に伝える」

②モチベーション(活力:目標。何をしたいのか。)
 「何のために、誰のために作品の制作をしたいのか」

③リサーチ力(観察眼:情報処理能力)
 「発見・展開・整とん」

④エモーション(制作意図:何を望むのか)
 「意図するイメージ・浮かぶイメージ・沸き上がるイメージ」

⑤エスキース(効率:計画性レベルの高さ)
 「イメージを具現化する・思い描く理想を実現するための構想」

⑥アピール(個性:やりたいことを素直に表現できているのか。)
 「自分の原点を再認識する・他者に物事を伝える力」

⑦魅力(独自性)
 「自分しかしないこと・自分だからすること・何時間でも続けられること」

⑧手段(スキル:他者への説得力)
 「イメージを表現できる方法、テンションが上がる行為、性分」

終わりに
「デザイン&アート」力は、教育、医療、スポーツ、科学、政治などすべての分野においてその威力をまだまだ一般的にひろく発揮できると感じています。
その威力、効果の中にバランスの崩れた環境によってアイデンティティーを見失いかけた人の精神状態を修復し和らげる作用もあります。物事を遂行するための最良のシステムを解明できる可能性も秘めています。
「デッサン」で学んだことをデザイン&アートの専門分野にとどめず、ビジネスや人生の営みに関わる様々な場面で活用されることを強く望んでいます。