シヤッターのある風景

シャッターの写真を撮りまくる「シヤッター写真家」がシャッターについて語ります。随感、記録など。

(後編)令和元年鬼怒川温泉旅行記

2020-05-31 21:38:00 | 旅行
前編に続き、シヤッター写真家です。
「2019年6月末に、廃墟で有名な鬼怒川温泉に遊びに行った話」を書いておりますが、前編は駅〜宿泊施設までの記録止まりです。
「鬼怒川なのに廃墟ねぇじゃん!」って思われていることでしょう……。
ということでまず廃墟群をアップします。



シヤッター写真家かつ哀愁フェチの自分、大歓喜です。



窓にズームしても人の気配がまるで感じられず、何者かによって荒らされた形跡が見られました。

撮影場所はこの橋。



私の記憶を振り返ると、橋の中ほどまで進み、左手側を向いて最初の写真を撮ったようです。
左岸側に廃墟と思しき建物が集中しており、まるで橋の下を流れる鬼怒川が明暗の境として横たわっているように映りました。
天候も相俟って、賑わいの名残が極限まで薄まってしまっています。

醒めない眠りに閉じ込められ、朽ちていく運命に身を任せることしかできない廃墟群。
取り壊されずに積み重ねてきた時間の中で、黄金期の夢を見続けているのでしょうか。

そのような中、若干の動きを感じた建物もありました。



なにやら足場に囲まれたこの建物。
「火事救急は119番」?
いろいろ気になりますがとりあえず見た目かっこいいので行ってみようかと。

そして、建物付近まで近づいた写真がこちら。



かっこいい!!ここでSASUKEしたい!!
この日は足場の門の奥に鎮座するシャッターの強キャラっぽさに満足して立ち去ってしまいましたが、後からよくよく調べて建物の正体が判明しました。
こちらはおそらく「旧藤原消防署」。
Wikipediaによると2016年3月15日に庁舎が移転となり、旧庁舎がそのまま取り残されていた模様。
道理で消防署シャッター特有の穴が開いているわけですね。



Google ストリートビューでは2018年7月撮影の、まだ足場が組まれる前の記録が残されていました。
もしかしたら私は取り壊しか何らかの工事に着手しかかった頃に偶然居合わせたのかもしれません。
廃墟は無常の景観ですから、撮影日時によりこうした大きな変化が見られるのは面白いところですね。現状確認に行きたくてうずうずしております。



すぐ近くのシャッターも興味深かったです。



なにやらシャッターの形状がおかしい。
シャッターはスラットという細長い部材の連続で面を構成しているのですが、このように横にずれ込んでしまうことがあるのです。
ここまで大きくずれているのは初めて目撃しましたが。
割と他人事ではなく、「スラット ずれ」で検索すると台風被害などでこのような故障を経験なさっている方も少なからずいらっしゃいます。
ご家庭のシャッターでスラットずれが生じ、使いづらいという方はメーカーや修理業者の方に相談してみてはいかがでしょうか。

まとめ

普段はなるべく「なんの変哲も無い街」を巡るようにしている私ですが、この旅のように「観光地の寂れた部分」に焦点を当てるとよりディープなシャッターを目撃することができました。
一時期、「もうシャッターはひと段落した気がする」とか「そろそろ新規のテーマを模索してみたい」とか、今後の方向性に非常に悩んだ頃があったのですが甘い考えです。
シャッターという1ジャンルの中でも相当多くの切り口があると思いますし、私はまだやり切っていないと常々考えさせられます。

また、この記事では他の廃墟マニアの方がよく撮影しているスポットを割愛しました。(というのも明らかに写真のクオリティ敵わないですしね……)
鬼怒川廃墟群でシャッターに着目した記録として少しでも皆様の記憶にひっかかれば大変嬉しいです。

(前編)令和元年鬼怒川温泉旅行記

2020-05-31 19:11:00 | 旅行
こんにちは。シヤッター写真家です。
昨日も今日も引きこもり生活をしていましたが、正直そろそろ外に出たいです。
仕事以外の用向きで、特に旅行なんか行きたいですね。

仕方ないので癒しを得るために直近の旅行の振り返りをしようかと思います。
2019年6月末の旅行記録です。皆さまが旅行解禁なさるときの参考になれば幸いです。

「鬼怒川温泉に行こう」

廃墟などに関心のある知人から上記の提案を受けたことが旅行のきっかけです。
私は廃墟の専門家ではないため、鬼怒川温泉の詳しい背景は存じ上げませんが、非常に大雑把な説明をすると

温泉街として栄華を誇る→バブル崩壊→観光客の減少などの要因で宿泊施設が経営難に→現在は人気観光地でありながら、有名廃墟群としても知られる二面性のあるスポットに。

といったところでしょうか。

もしかしたらかなり「醸している」感じのシャッターに出会えるのでは?と廃屋内部に立ち入らないことなどをマイルールに、行ってまいりました。


当日は思いっきり雨が降っていました。。
知人は「あいにくの天気」と評していましたが旅行趣旨としてはドンピシャです。
そして、駅から宿泊先に向かう道中で早速シャッターを発見しました。



ああ、この感じ好きです!!!
全面錆に侵食されたシャッター、汚れに縁取られた「トケイ ユビワ」の文字、シャッターの極まで苔むした地面、何もかもがパーフェクトです。
この旅行で一番気に入ったシャッターをまさかの序盤で見つけてしまいました。

その後しばらく、ピンとくるシャッターに出会えない時間が続きましたが、そのような中でも見どころに事欠きませんでした。



蔦の向上心が素晴らしいお食事処や、



描写の途中で筆を投げてしまったかのような建物など。

一瞬一瞬に興奮を禁じ得ない街並みに期待感が高まります。
宿泊先に荷物を置いてから、メインである廃墟群に向かうことに。

ちなみに宿泊した場所は「鬼怒川プラザホテル」。
現在は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、6月18日まで全館休業のようです。
(2020年5月31日現在の情報。延長、短縮の可能性もあるとのこと)
本当に素敵なホテルでしたので事態が落ち着いたらご利用なさったらいかがでしょうか。しゃぶしゃぶと野菜がとても美味しかった思い出。



比較的キレイめのシャッターもありました。
ちなみに豆知識ですが、シャッター上部に4箇所ほど見られる錆びが濃い部分は、シャッターを巻き取る軸に装着されたバネ状の部材「スプリング」の錆びがうつったものと思われます。

ここまで書いていて少し長くなる気配を感じたので、続きは後編へ。
後編では廃墟群の中で見かけたシャッターなど。

シャッターの棒を買った話

2020-05-26 00:38:00 | シャッター
こんにちは、シヤッター写真家です。
毎度「シャッターを撮影する作家」(時にシャッターマニア)として活動している私ですが、最近由々しきことに気がついてしまいました。

人生で一度もシャッターを閉めたことがない。


店もない。車庫もない。私の家にはシャッターがない。
ないものはないで仕方ないのですが、少々残念だなと。

「シヤッター写真家」としての私はシャッターを完全に被写体として割り切っても構わない立ち位置です。
しかし「マニア」とも称されている身としては、そのような姿勢はいただけない。
またしかしながら、自宅にシャッターを導入するには、初期費用、スペース、費用対効果、身近な人間の説得など諸々の課題をクリアしなければなりません。

シャッターに触れたいけど触れられない。この思いをどう処理したら良いのか。
悩みに悩んだ末に、ついに買っちゃいました!


シャッターの棒を!

本体が買えなければせめて付属品を買って本体がある気になろうと。
脳内に架空のシャッターを顕現させましょうと。そういう思考ですね。
文化シヤッター株式会社製、全長600mmです。

失礼しました、皆さまシャッターの棒をご存知だという前提で話してしまいました。
シャッターの棒とは、シャッターを上げ下げする際に用いる棒です。
高さのあるシャッターは棒を使わずに開け閉めしていたら手が届かないですよね。



上の写真のように、シャッターの座板(一番下の板)に開いた穴に棒のフック部分を引っ掛けて引き下ろすのです。


この部分で引っかけます。

シャッター棒、フック棒、シャッターフック棒など、さまざまな名称で呼ばれていますが、ここではシャッターの棒とします。

初めて買ったシャッターの棒、やはり持ってみてわかることが多くて感動しましたね。
商品写真だとずっしりとした金属の重みがあるのかな……と想像していたのですが、予想外の軽さに変な声が出ました。
公式で重さとか発表されていなかったのですが体重計に乗せたら0.1kgと表示されました。



あと持ち手の若干ザラザラした材質が気持ちよくて、手によく馴染みます。

さて、長さ600mmと言われてもピンとこないと思うので身近なものと大きさ比較してみました。


鳥獣保護区看板の対角線からはみ出すくらい。



一般的なサイズの三角コーンより若干背が低い。



やっと同じ大きさ見つけました!マンホール蓋の直径とほぼ同じですね。

他に1000mmとか、2400mmなど長いサイズの棒もあったのですがしばらくお手頃サイズの600mmを楽しんでみたいと思います。
将来的には全国非実在シャッター開閉選手権大会の優勝を狙いたいところです。まずこの大会があるかどうかから教えてください。
それではまた。

店は閉じても物語は続く

2020-05-18 19:37:00 | シャッター
シヤッター写真家です。
今回もシャッターの魅力について語らせていただきます。

ウェルカムシャッターをどうぞ。お楽しみください。

初回のブログでは「哀愁こそがシャッター最大の魅力」と述べました。
そして私は、「哀愁」には悲しいだけではない時間の厚みが感じられると思っています。
シャッターやその写真を眺めているときは、在りし日の店の様子や、閉店から今日まで雨風を耐え忍んできた日々など、シャッターが辿ってきた「時間」をしばしば想像しています。

シャッターは、緞帳。

上記はマニアフェスタで私が毎回打ち出しているキャッチコピーです。
緞帳(どんちょう)とは、劇場などで舞台と客席を分けているあの幕のことです。



閉まっているシャッターを見ると、舞台が終わった後の緞帳を眺めているときと似た気持ちを抱きます。
裏側で繰り広げられた物語に思いを巡らせ、余韻に浸るかのような。
舞台と違って、本当の物語はお店の方に直接聞かない限り知ることはできません。
ただシャッターが辿ってきた軌跡や周囲の登場人物を色々と妄想してみる行為は、結構楽しいです。



私の中で特に妄想が盛り上がった写真がこちら。
シャッターそのものも年季が入っていて見どころですが、字の途中で途切れてしまった看板が目に付きますね。おそらく減築で建物の右半分を無くしたまま、そのままになっているのでしょう。

こういうところから店主の方の思いや人柄を妄想してみるのですが、最近になってこの看板、見た人によってまったく解釈が異なることが判明しました。

①店名を削除または修正するコストや労力を惜しんでの放置

②途切れた店名に特に違和感を感じない店主の方の大らかな性格

③思い出の看板を元のままに残しておきたいという愛着

国語の問題のような正答はございませんが、皆さんはどの説だと思いますか?
私はどちらかというと②の説を支持していたのですが、今は他の方から指摘された③の説に完全に心を掴まれています。

もちろん、この3つ以外の解釈もきっと存在します。
肝心の物語が内側に閉ざされているゆえ、こうして自由に物語を紡いでいけることがシャッター鑑賞の楽しさなのです。


背の順に並んだ鉢植えからは几帳面さや遊び心が感じられる


坂と屋根の角度をきっちり平行に揃える、強いこだわり

皆さまもぜひ、シャッターから思い思いの物語を読み取ってみてください。
また、記事中の写真について想像したことがあれば、ぜひコメント欄でお聞かせください。