国慶節直前の最後の授業。
みんな国に帰っちゃって、ついに授業は私一人。
マンツーマン♪
ちょうど結婚についての内容のところ。
老師と歳もほとんど変わらないこともあり、
結婚について語り合ってみた。
大連で出会った中国語の文法の張先生はとても聡明な女性だった。
中国では中国語を専攻している人は大抵すごいっていわれる。
甲骨文にまでさかのぼるような古代中国語を勉強したり、未だに解明できていない文法の世界に足をつっこんでいるからかもしれない。「私は中国語専攻です」と中国人が言うと、同じ中国人が「それはすごい!」とみな驚く。
いまの文法の先生も同じく若くしてとても頭のキレる女性。
31にして3歳の子どもの母、教員歴8年のベテラン教師。
専攻は日本語だったそうで、午前中は留学生に中国語の文法、午後は大学へ戻って中国人に日本語の文法を教えている。
結婚していて、子どもがいて、仕事のキャリアもあって。
残念ながら、私は同世代にそういう女性の友達がいない。
きっと友人の偏り加減も影響しているのだろうけど、
一方で日本の現状が表れている気もする。
だから、うらやましいです、みたいなことを言ったら、ちょっと事情は違ってた。
「もうお互い大人だし、いろいろ話しちゃうけど・・・」
と、いろいろ話してくれた。
25歳で結婚したけど、かなり遅い方だったと言う。
(日本だと早いほうなんだろうけど)
子どもは28で生まれた。
本当はその間キャリアはどうなってたのかとか、細かいことを聞きたかった。でも彼女はその3年間が本当に辛かったと、違う話をした。
子供が生まれないという理由で婆婆(姑)から3年間ずっとひどい目に遭っていたというのだ。しかもその3年間に3回妊娠して、3回とも流産。
「しゅうとめだって女なんだから、その辛さを理解したっていいはずじゃない??」
「私もそう思う。でも私の姑はそうじゃなかった。だからホントにその3年間は辛くて、夫は理解してくれてたけど、それでも離婚も考えた。」
「だから、子供が生まれたときは本当に嬉しくて。しかも、男の子だったでしょう。だから本当に良かったと思う。」
「もし女の子だったら、また大変なことになってたかもね・・」
「うん、女の子だったらちょっとぞっとする。でも子供が生まれてからは、姑とはいい関係になれた。夫の父もいいひとだったので助けられた。」
「中国は都市部でもやっぱり男の子が大事なの?」
「そう、中国はひとりっ子政策もあるから、いまも男の子が大事にされる。」
「一人っ子政策はもう終わったって聞いたけど?」
「うん、そうなんだけど、学校に規則があったりするの。例えば、二人目の子どもがいたら、母親は仕事をしてはいけないということを学校が決めているの。そうでないと入学許可が下りない。私は仕事を続けたいと思うから。。」
「うひぇー。なんでそんなことを学校が・・?」
「やっぱり子どもの成長に影響するからでしょう。」
(そんなお節介な話か~・・・涙)
この後、今度はベクトルがこっちに来た。
「じゃあ、失礼なことは承知で聞いちゃうけど、今の日本では弟さんが先に結婚するようなことはいいんですか?」
(ぼよーん!!)
「いえ(涙)、別にいけなくないです。」
「でも、順番から言ったら・・・」
(ぽへー!!!)
「ええ、ですから、じゃあ、中国では良いの??」
(頑張ってベクトルを違う方向へ向けてみる)
「中国も昔は順番があったけど、いまはいろいろ。いろんな状況があるから仕方ない(笑」
(ふー)
「じゃあ、一緒だってば(苦笑)这样的情况没办法呀(こういうことってどうしようもないじゃん!)・・・。そんなのさあ、、例えば、お別れに関してだったら、おじいちゃんおばあちゃんから『さよなら』すべきだけど、先に両親が死んじゃう場合だってある。。順番は順番で大切なんだけど、誰もそれをコントロールすることは出来ない。。できるのはただ『そうあってほしい』と願うことくらい。」
「そうですね、ごめんなさい(笑。」
その後、あれがこうなってこれがこうなってほにゃほにゃほにゃ、と最近あった出来事を説明すると理解してくれた。
「私は、先生みたいな仕事もあって、愛人(中国では「愛する人」の意味)もいて、子どもいて、中国の女性はとても幸せだなと思っていたんだけど、実は中国もいろいろあるのですね。」
「うん。私は25~28までの3年間は本当に辛くて辛くてたまらなかったけど、今は幸せ。今は本当に幸せだからこんな感じなだけ。
でも、子育てしながら仕事するのは疲れることは疲れるわ。日本は金持ちなんだし、夫が妻に仕事を辞めさせるパターンもよくあるでしょう?だったら、仕事しないでいいならしないでいいんじゃない?私は、地位がなくなるのがイヤだから仕事を続けてるわ。」
「なるほど。でも中国の子育ては『みんなで子育て』してるじゃないですか。これはうらやましいです。子どもにとっても楽しいし。でも、最近気がついてきたんだけど、実は結婚後も女性が仕事をしているってことは地位の面からというよりもむしろ心理の面からとても大事だと思うんです。私は、女性が仕事があるってことが本当に重要なことだと思う。」
「私もそう思うわ。仕事があるから離婚も恐くないし(笑)」
(「离婚也不怕」って表現がすごく可笑しい)
「そうそう!それ!その精神が大切なんだって。むしろ、その方が精神的に自由だし健康だし、離婚からは精神が遠ざかっているんだよね。日本に来て、ぜひそのことを大声で言ってほしいくらいです(笑。。日本は、出産しても女性が安心して仕事に復帰できるってイメージをもてる仕事は教職や公務員以外にどれくらいあるんだろう。。自立ってことも一理あるけど、人間てもっと多くの人と『関わり合い』がないと実はおかしくなってしまう存在だと思う。」
「そうね。私も不思議なことなんだけど、姑からのストレスがつらくてつらくて、どうしてかわからないけど全然妊娠がうまく行かなかった。でも、もういいや、そのことを考えていると気が詰まっちゃうから、考えるの辞めよう、あきらめた、って気持ちがリラックスしたときに妊娠したのよね。」
「ほんとそう。私の日本の友達も、仕事辞めた瞬間妊娠している人いっぱいいます。日本はただでさえ、中国みたいに毎晩夫婦で手をつないで散歩したり、近所の子どもを預かったり、人間的ゆとりの時間を失った。たぶん高度経済成長のときにかな。『ふと』、ほんとに『ふと』そういう時間をあっという間に忘れてしまったんだと思う。」
休憩
「あなたも最近いろいろ大変だったみたいだけど、本当に共感するわ。」
「いえ、私もいまは大丈夫です。元気元気。不思議なことなんだけど、あなたと同じで、過去のことになると全然平気なものなんじゃないですか?私はあなたがそんなに大変な過去をもってるなんてまったくわからなかったもの。」
「そうね。私も思うけど、時間っていうのは本当に一番に解決を導いてくれるものなのかもね」
あるいは、大変な過去があったからこそ、この女性が魅力に満ちているんだと思った。
ふー。
濃い話だったけど、中国語でそういう細かい「心のひだ」みたいな部分を言葉で共感できたこと、できるようになってきたことが嬉しかった。
「外国語を学んで見えてくるのは、その言葉で生きている人たちの希望や絶望。」
なくしちゃったので元原稿がないけど、10数年前の高校教科書『ラクーン』の最初のページに英語で書かれていた言葉。この教科書はダグラス・ラミスが制作に関わってる。
数年前、高校の英語科に問い合わせたけど英語科でさえ教科書をなくしてた(涙)。誰か持ってたら貸して。
そして、その言葉はこんな感じで続く。
外国語を学んで見えてくるのは、
その言葉で生きている人たちの希望や絶望。
そしてもちろん、そのずっと先にみえてくるもの、
それは、自分自身なのです。
みんな国に帰っちゃって、ついに授業は私一人。
マンツーマン♪
ちょうど結婚についての内容のところ。
老師と歳もほとんど変わらないこともあり、
結婚について語り合ってみた。
大連で出会った中国語の文法の張先生はとても聡明な女性だった。
中国では中国語を専攻している人は大抵すごいっていわれる。
甲骨文にまでさかのぼるような古代中国語を勉強したり、未だに解明できていない文法の世界に足をつっこんでいるからかもしれない。「私は中国語専攻です」と中国人が言うと、同じ中国人が「それはすごい!」とみな驚く。
いまの文法の先生も同じく若くしてとても頭のキレる女性。
31にして3歳の子どもの母、教員歴8年のベテラン教師。
専攻は日本語だったそうで、午前中は留学生に中国語の文法、午後は大学へ戻って中国人に日本語の文法を教えている。
結婚していて、子どもがいて、仕事のキャリアもあって。
残念ながら、私は同世代にそういう女性の友達がいない。
きっと友人の偏り加減も影響しているのだろうけど、
一方で日本の現状が表れている気もする。
だから、うらやましいです、みたいなことを言ったら、ちょっと事情は違ってた。
「もうお互い大人だし、いろいろ話しちゃうけど・・・」
と、いろいろ話してくれた。
25歳で結婚したけど、かなり遅い方だったと言う。
(日本だと早いほうなんだろうけど)
子どもは28で生まれた。
本当はその間キャリアはどうなってたのかとか、細かいことを聞きたかった。でも彼女はその3年間が本当に辛かったと、違う話をした。
子供が生まれないという理由で婆婆(姑)から3年間ずっとひどい目に遭っていたというのだ。しかもその3年間に3回妊娠して、3回とも流産。
「しゅうとめだって女なんだから、その辛さを理解したっていいはずじゃない??」
「私もそう思う。でも私の姑はそうじゃなかった。だからホントにその3年間は辛くて、夫は理解してくれてたけど、それでも離婚も考えた。」
「だから、子供が生まれたときは本当に嬉しくて。しかも、男の子だったでしょう。だから本当に良かったと思う。」
「もし女の子だったら、また大変なことになってたかもね・・」
「うん、女の子だったらちょっとぞっとする。でも子供が生まれてからは、姑とはいい関係になれた。夫の父もいいひとだったので助けられた。」
「中国は都市部でもやっぱり男の子が大事なの?」
「そう、中国はひとりっ子政策もあるから、いまも男の子が大事にされる。」
「一人っ子政策はもう終わったって聞いたけど?」
「うん、そうなんだけど、学校に規則があったりするの。例えば、二人目の子どもがいたら、母親は仕事をしてはいけないということを学校が決めているの。そうでないと入学許可が下りない。私は仕事を続けたいと思うから。。」
「うひぇー。なんでそんなことを学校が・・?」
「やっぱり子どもの成長に影響するからでしょう。」
(そんなお節介な話か~・・・涙)
この後、今度はベクトルがこっちに来た。
「じゃあ、失礼なことは承知で聞いちゃうけど、今の日本では弟さんが先に結婚するようなことはいいんですか?」
(ぼよーん!!)
「いえ(涙)、別にいけなくないです。」
「でも、順番から言ったら・・・」
(ぽへー!!!)
「ええ、ですから、じゃあ、中国では良いの??」
(頑張ってベクトルを違う方向へ向けてみる)
「中国も昔は順番があったけど、いまはいろいろ。いろんな状況があるから仕方ない(笑」
(ふー)
「じゃあ、一緒だってば(苦笑)这样的情况没办法呀(こういうことってどうしようもないじゃん!)・・・。そんなのさあ、、例えば、お別れに関してだったら、おじいちゃんおばあちゃんから『さよなら』すべきだけど、先に両親が死んじゃう場合だってある。。順番は順番で大切なんだけど、誰もそれをコントロールすることは出来ない。。できるのはただ『そうあってほしい』と願うことくらい。」
「そうですね、ごめんなさい(笑。」
その後、あれがこうなってこれがこうなってほにゃほにゃほにゃ、と最近あった出来事を説明すると理解してくれた。
「私は、先生みたいな仕事もあって、愛人(中国では「愛する人」の意味)もいて、子どもいて、中国の女性はとても幸せだなと思っていたんだけど、実は中国もいろいろあるのですね。」
「うん。私は25~28までの3年間は本当に辛くて辛くてたまらなかったけど、今は幸せ。今は本当に幸せだからこんな感じなだけ。
でも、子育てしながら仕事するのは疲れることは疲れるわ。日本は金持ちなんだし、夫が妻に仕事を辞めさせるパターンもよくあるでしょう?だったら、仕事しないでいいならしないでいいんじゃない?私は、地位がなくなるのがイヤだから仕事を続けてるわ。」
「なるほど。でも中国の子育ては『みんなで子育て』してるじゃないですか。これはうらやましいです。子どもにとっても楽しいし。でも、最近気がついてきたんだけど、実は結婚後も女性が仕事をしているってことは地位の面からというよりもむしろ心理の面からとても大事だと思うんです。私は、女性が仕事があるってことが本当に重要なことだと思う。」
「私もそう思うわ。仕事があるから離婚も恐くないし(笑)」
(「离婚也不怕」って表現がすごく可笑しい)
「そうそう!それ!その精神が大切なんだって。むしろ、その方が精神的に自由だし健康だし、離婚からは精神が遠ざかっているんだよね。日本に来て、ぜひそのことを大声で言ってほしいくらいです(笑。。日本は、出産しても女性が安心して仕事に復帰できるってイメージをもてる仕事は教職や公務員以外にどれくらいあるんだろう。。自立ってことも一理あるけど、人間てもっと多くの人と『関わり合い』がないと実はおかしくなってしまう存在だと思う。」
「そうね。私も不思議なことなんだけど、姑からのストレスがつらくてつらくて、どうしてかわからないけど全然妊娠がうまく行かなかった。でも、もういいや、そのことを考えていると気が詰まっちゃうから、考えるの辞めよう、あきらめた、って気持ちがリラックスしたときに妊娠したのよね。」
「ほんとそう。私の日本の友達も、仕事辞めた瞬間妊娠している人いっぱいいます。日本はただでさえ、中国みたいに毎晩夫婦で手をつないで散歩したり、近所の子どもを預かったり、人間的ゆとりの時間を失った。たぶん高度経済成長のときにかな。『ふと』、ほんとに『ふと』そういう時間をあっという間に忘れてしまったんだと思う。」
休憩
「あなたも最近いろいろ大変だったみたいだけど、本当に共感するわ。」
「いえ、私もいまは大丈夫です。元気元気。不思議なことなんだけど、あなたと同じで、過去のことになると全然平気なものなんじゃないですか?私はあなたがそんなに大変な過去をもってるなんてまったくわからなかったもの。」
「そうね。私も思うけど、時間っていうのは本当に一番に解決を導いてくれるものなのかもね」
あるいは、大変な過去があったからこそ、この女性が魅力に満ちているんだと思った。
ふー。
濃い話だったけど、中国語でそういう細かい「心のひだ」みたいな部分を言葉で共感できたこと、できるようになってきたことが嬉しかった。
「外国語を学んで見えてくるのは、その言葉で生きている人たちの希望や絶望。」
なくしちゃったので元原稿がないけど、10数年前の高校教科書『ラクーン』の最初のページに英語で書かれていた言葉。この教科書はダグラス・ラミスが制作に関わってる。
数年前、高校の英語科に問い合わせたけど英語科でさえ教科書をなくしてた(涙)。誰か持ってたら貸して。
そして、その言葉はこんな感じで続く。
外国語を学んで見えてくるのは、
その言葉で生きている人たちの希望や絶望。
そしてもちろん、そのずっと先にみえてくるもの、
それは、自分自身なのです。