前回の続きです。
(B)のように考えたときは株価が値上がりするのか下落するのかについての関心は無い(低い)と言えるでしょう。値上がり益よりもむしろ,利益の配当に関心があるはずです。
(A)と(B)とでは,どの銘柄を買うのかについても基準が違ってきます。それは,ある銘柄は株価が全く動かないと仮定したときにはっきりとその違いが出ます。(A)の場合は,その銘柄には見向きもしないでしょう。しかし,(B)の場合は,利益の配当がどれだけあるのかによっては保有したいと考えるかもしれないのです。あるいは,株価はいつも動いているのに利益の配当がない銘柄を買う場合,将来はいずれ利益の配当を開始するかもしれませんが,値上がり益を期待するのが自然な考え方です。この場合は(A)のように考えていることになります。
(A)の値上り益を狙う方が(B)の利益配当を待つよりもずっと効率的だと考えるかもしれません。このような考え方ももっともなのです。それで(A)のように考えるのを「投機」,また(B)のように考えるのを「投資」と呼んで区別しています。実際には,明確に(A)と(B)を区分することは難しいと思います。投資中に思いがけないような株価の値上りがあったら,もしかすると売却してしまうかもしれません。
株式市場で株式を購入するのは,値上がり益か配当金のどちらであっても,利益を得たい,つまり儲けたいと考える,欲深い意思が働いているからです。投機は下世話で,投資は高尚だと考えている人たちもいるのでこういう書き方をしますが,投機ではなく投資と言ってみたところで直接の目的はボランティアではありませんから,どちらにしても儲けたいという欲が働いているのです。しかし,「儲けたい」とか「欲が深い」というのは決して悪い事ではありません。この人間の欲望を否定してしまったら,それこそ株式市場をはじめとする様々な市場や自由主義経済そのものを否定してしまうことになるからです。わかり易く言って,株式を買って儲けてやろうと考える人たちの集まりが株式市場ですから,思う存分どっぷりと欲望にまみれて株式売買しても何も悪いことではないのです。
人間の意思は弱いので,投資であって投機ではないと思っていても,株価が大きく下落してしまうと途端に弱気になって売却してしまいます。商品の売買も株式の売買も同じで,安く買って高く売ればよいのだから,「株価が上昇したら,下落しないうちに売却して利益を得ればよい」などと都合よく考えないほうが良いのです。不思議なことに,買った株はほぼ間違いなく値下がりします。慎重に株価を眺めていて,ここで買えば値上がりするだろうと思って実際に買うと必ず値下がりします。そうして「こんなはずではなかった」と後悔しながら,結局は高い値段で買って安い値段で売ることになるのです。
(続く)
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