愚公、山を移す

Wilsonです。
人間万事塞翁が馬 人間到る処青山あり

それをお金で買いますか 市場主義の限界 マイケル ・サンデル著

2022-11-21 00:34:00 | 日記

第1章 行列に割り込み

「ファストトラック」― 飛行場での出入国検査等への行列をしなくて済むよう、優先的に検査待ちの行列に割り込みを認める料金。/ 「レクサスレーン」― フリーウェイでは通勤時間帯のラッシュ時、道路が渋滞するが、高速料金を払えば、通勤を高速化することが可能である。/ 「行列に並ぶ商売」― 行列し順番を待つ座席・部屋等の利用を、支払いを受けることで席・部屋を割り当てる(ダフ行為)。/ 「医者の予約の転売」― 診療を受ける際、予約権を転売し利益を得る。/ 「コンシェルジェドクター」― 「医者の予約の転売」と共通して裕福な人が割り込むシステム。

  市場の論理として、先着順の論理は、「安かろう 悪かろう」とも言える。しかし、市場VS行列を考えると、「ダフ行為のどこが悪い?」と愚直な疑問が起こる。サンデル教授は、「ヨセミテのキャンプ場の転売」・「ローマ教皇のミサを売りに出す」・「ブルース・スプリングスティーンの市場」を例示している。

 行列の倫理には、「早い者勝ち」という平等主義的な魅力がある。特権・権力・富が無視される。多くの人は、「順番を待ちなさい。」「割り込んではいけない。」と教育されて来た。しかし、これは現在も変わらないこととは思う。

 30年程前(今もそうであるが)、中国と香港の間には、いくつかイミグレーションがあるが、特に、羅湖のイミグレーションでは、恒常的に通過するのに約1時間~2時間の順番待ちが普通であった。もっとも、特権階級には例外が適用されていた。同時代 フィリッピンのマニラの飛行場では、長時間のチェックインカウンターへの順番待ちは恒常的であったが、並んでいると怪しげな人物にチップを払うと、優先的にチェックインが出来た。

 市場だけが、物事を割り振るわけではない。入学試験・資格試験等、試験による方法もある。緊急入院・緊急手術等、緊急性に応じた対応もある。しかし、市場は非市場的な財の分配方法に取って取って代わっている。ダフ行為を肯定はしないが、ダフ行為に変わる方法で、財の分配が一般的になっている。

 「地獄の沙汰も金次第」という社会に私たちは暮らしているのであろう。しかし、学校制度に於ける「飛び級」等、金銭が伴わない奨励すべき事例はある。天才的な能力を持つ人材が、一般的な人材に埋もれ社会貢献の機会を失う事は社会の損失とも言える。自由であること、平等であることとの正比例は難しい。