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「スミス・マルクス・ ケインズ よみがえる危機の処方箋」 ウルリケ・ヘルマン著 みすず書房

2024-02-01 12:01:09 | 日記

「スミス・マルクス・ ケインズ よみがえる危機の処方箋」

           ウルリケ・ヘルマン著 みすず書房 

 第10章スミス、マルクス、ケインズから何が学べるか

 

「有効性を持つ認識を生み出したければ、経済学は、スミス、マルクス、ケインズに立ち返らねばならない」。ヘルマン氏は、新古典派経済学者に対するコメントと思われる言及をしている。

 ミクロ経済学観点から、スミスが説く価格は費用と上乗せ利益の総計と考える追加的視点は正しいと論じ、新古典経済学者が説く限界生産性が価格を決定するのでないと指摘する。

 ヘルマン氏は、新古典派経済学者たちの政府の政策決定に絶大な影響力を認めるものの、金融市場の独自の論理については、ケインズが説くマクロ経済学的に全体の総計として考える時に理解し得る、と言及している。世界の年間GDTが73兆ドルしかないのに、日々4兆ドルが通貨投機のために地球をめぐっていることはマクロ経済学的視点から理解が出来る点を指摘している。

 競争原理が寡占を生むことになり、市場は飽和状態になり生き残るのは少数の巨人のみ。マルクスとエンゲルスが認識した巨大多国籍企業によるブローバル経済の誕生である。新古典派経済学者は、イノベーション(発明)も個々の天才による貢献と言いたがるが、ヘルマン氏は国家が資金援助している点を言及する。国家が資本主義発展のベースとなることを強調している。 

 ヘルマン氏は、改めて資本主義について言及する。資本主義は静止する事を知らない一つの過程であり、安定する事もなく、好況と危機の間を揺れ動き、資産は投資する時に実在するものであり、貯蓄は社会全体にとっては危険なものになる事も指摘する。巨大資本が経済を支配し貧富の差が拡大する。資本主義は、人類がかつて作り出した唯一の動学的な社会システムである。経済学は自分の理論から資本主義を取り除くような姿勢に終止符を打ち、この資本主義こそ深く研究すべきなのであると結ぶ。