【1回戦、海星―清峰】完投勝利を飾った海星の永江=県営ビッグNスタジアム
8点リードで迎えた七回、コールド勝ちまであと1死で、海星の先発永江は、ついに清峰打線につかまった。連打を浴び、あっという間に6点を失った。「何を投げても打たれた」。その回をどうやって切り抜けたか、よく覚えていない。
代えられると思った。だが、ベンチ外を見ると、控え投手がウオーミングアップしていない。加藤監督は、当然のように「まだいけるか」と聞いてきた。思わず「はい」と答えていた。
背番号は「6」。本職は遊撃手だ。春先に故障したエース荒木の代役として、4月から投手に専念した。それからわずか3カ月で、夏の初戦を任せられた。加藤監督は「投手としての能力が高い選手はいるが、永江より精神力がある選手はいない」という。
この日、終盤を迎えても直球は140キロを超えた。九回2死。最後の打者を三振に打ち取った176球目は、自己最速の145キロを記録した。夏の緊張感がさらなる成長をうながしたのか。まだ2年生だが、底知れぬ可能性を感じさせた。
佐賀県鳥栖市の鳥栖中出身。同郷の先輩に誘われ、海星を進学先に選んだ。昨年の選抜大会を制した清峰は、入学前にテレビで見ていた。
その時は「いつか対戦したいな」とあこがれる存在だった。1年3カ月後、まさか完投勝利を挙げるとは、思わなかった。
2010年7月13日長崎新聞掲載