３．１１

あの日・・・・

私はリビングで針仕事をしていた。

ずっと作りたかった座布団カバーを作ろうと
端切れをチクチク縫い合わせつつ
のんびりとした幸せな時間の中にいた。

電話が鳴って、
卒業式を翌日に控えた中３の次男が
高校の体操服の採寸に来てるから
あかあさんも来て、と言うので
お針箱もそのままに、車で家を出た。
コートも着ないで・・・

息子とお友達とそのお母さんと挨拶を交わし
スポーツ店のドアを開けた・・・その時

今までに経験のない、大きな揺れ。

外に飛び出しすと、
電柱は大きく左右に揺れ、
アスファルトはみるみる盛り上がり、
横の小道からは水が溢れて道路を流れた。
車を停めた店舗前の駐車スペースが３０ｃｍも沈下し
後輪がかろうじて歩道に乗っかっていたおかげで
車体を傷めることがなくて済んだ。

何が起きたのか、咄嗟に把握できず
「うわっ、何これーーすごいーー」と
普段は私が触ると逃げていく次男に
この時とばかりつかまりながら
最初は顔が笑っていた・・・と思う。

けれど、畳み掛けるように続く余震と
映画のような慌しさを見せる町の様子で
ただごとでないことを悟った。

私の、コートを着ていない体はどんどん冷え
家族を心配したその場の人々は
大急ぎで帰途に着いた。

スポーツ店の店主が、どこかから
段差を埋める石を探してきてくれたので
ようやく車を出すことが出来たけれど

目の前の道路は「Ａ」の形に盛り上がっていたので
みんな柵の間から歩道に車を乗り入れて
何とか、その場所をクリアしていた。

利根川の堤防から少し細い道を下りたところが自宅。
ところが、そこに亀裂と段差が出来ていて
車を進めることが出来ない。

川沿いの道路にはすでに
その先が通行できなくなって立ち往生した車が
ズラッと駐車していたので
とりあえず、その列に車を停めて
徒歩で家に向かった。

地割れ、斜めに立つ電柱、液状化した悪路。
角を曲がると、ご近所さんが
みんな外に出て、不安げに立ち話をしていた。

静岡に出張中の夫から何度も電話が入り
宮城は大丈夫かと言う。
それどころじゃないよ、こっちだって大変なんだから。
電池が切れたら終わりだから、もう切るよ・・・と

その時は、自分たちこそが被災者だと思っていた・・・。

停電、断水。
暗くなり始めた部屋で、カセットコンロを出して
次男とラーメンを煮て食べた。

続く余震。
貴重品をリュックに積めて、背負った。

電気がないとやることないねーと
オーバーを来て毛布にくるまりながら、
懐中電灯で楽譜を照らし、
アコギを弾いて二人で歌った。
その日は「こんな時だし、一緒に寝よ。」と言うと
しぶしぶ次男が寝室に来てくれた。

翌々日になって、やっと動いた電車で
東京から夫と娘が駆けつけて
次男と「わー、道、悪いねー」なんて言いながら
成田まで車で迎えに行き
「とりあえず、マトモな食事がしたい！」と
四人で入ったファミレスで、初めてテレビの映像を見る。

何も知らずに、結構明るく暮らしていたけれど
世の中はこうなっていたのか！という衝撃・・・・。



その後の話はここから始まる過去ログの中に。

一年前、のことなのに
もうずいぶんいろんなことを忘れてる。
あの日思ったことも、新たな決意も・・・。
そしていつの間にか、
元のまんまの贅沢な日々を送ってる気がする。

記しておいてよかった。
あの日の自分を忘れないために・・・というのが
私が日記を書く理由。

現在全８巻の、ブログを製本した単行本は
私の人生の記録で宝物。