男性にも、”同様の現象” があるじゃないか
2015年2月9日 五百田 達成:作家、心理カウンセラー 東洋経済
http://toyokeizai.net/articles/-/60099
女性の涙は、うろたえるほどのものではない?(写真:naka / Imasia)女性の涙は、うろたえるほどのものではない?(写真:naka / Imasia)
いつも和やかに、おだやかな雰囲気の中で働けるなら、それに越したことはありません。でも、時にはトラブル・いさかいをきっかけに、職場が不穏な空気に包まれることもありますよね。
■深読みすると、逆効果?
そのきっかけが、ビジネスの現場で女性が流す涙。その場に居合わせた男はとたんにうろたえます。
以前、当コラムでも書いたとおり、男は「知っていること」しかできませんから、自分の中にない感性や、自分は滅多にしない行動を目にすると、どう対処していいか分からなくなりパニックに陥るのです。
そもそも、恋人や家族の涙に対してすらオロオロしてしまい、あまりの動揺に「泣くなんて卑怯だ!」と怒り出すことの多い彼ら。ましてや仕事相手に泣かれるなんて、想定外のことにびっくり。あくまで理性的nビジネスを進めたい男たちにとって、女の涙は、実にウンザリしてしまう要因です。
ではそもそも、なぜ女性は泣くのでしょうか?
過去さまざまな研究がありますが、女性は男性よりも感性が繊細で、ちょっとした感情の起伏が表情に大きく表れるといわれています。いわば敏感なセンサーを積んでいる計器のようなもの。ですから「努力が実らなくて悔しい」「怒られて恥かしい」といった感情が増幅し、つい涙が出てしまうこともあるわけです。取り立てて大きな理由があるということでは必ずしもないのです。
よくおじさんたちが「いやぁ、年を取ると涙もろくなっちゃって」と ( うれしそうに ) ほやきますが、女性たちはつねにその状態にあるとも言えるでしょう。
つまり、涙は自然に出てくるものであって、止められない生理現象。体を動かすと汗が出るのと一緒で、逆にいうと、そこに何かしらのメッセージ性を読み取ろうとするのは間違いです。
「こっちの妥協を引き出そうたって、そうはいかないぞ!」「こんなことで泣くなんて、プロ失格だ」などと過剰にリアクションせず、黙って泣き止むのを待つのがいいでしょう。だって、それは汗なのですから。
あるいはティッシュを差し出しながら、何事もなかったように「それでさ~」と話を進めるのもオススメ。泣いた本人だって「やばい!職場で泣いちゃった・・・・・」と混乱しているわけですから、ことさら突っ込んだりせず、スルーしてあげるのがいいのです。
■男も「あの行動」で女性を引かせている。
ではいっぽうの男たちは常に冷静沈着に仕事をしているかというと、そんなことは(当然)ありません。女性たちに評判の悪い男たちの感情表現、それが「大声」です。
よくドラマのワンシーンで、女性(妻や彼女)が男性(夫や彼氏に)に、「ちょっと! 大きな声出さないでよ!」とたしなまえていますが、あの非難のニュアンスは、正直男性からするとピンとこないもの。大きな声のどこかいけないのか、と。
女性たちは、男の「大声」をとても威圧的なものととらえます。「脅かされた」と怖がったり、あるいは「あらら、キレちゃった」とウンザリしたり。
そういう意味では、女性の涙と男性の大声は、とてもよく似ています。男性が涙を見た瞬間に「あーあ」としらけるのと同じ効果が、大声にはあるということ。
ときには、感情のままに大声を上げて怒鳴りたくなるようなときもあるでしょう。あるいは、職場の文化として威勢のいい罵り声が飛び交う企業もあります。ですが原則としては、努めて静かな声で振る舞うのが正解。そうすれば「あの人は落ち着いていて頼りになる」「静かだからこそ、怒らせると怖い」と評価を上げることになります。
逆に目の前で発せられた大声に対する対処法は、涙への対処法と同じです。
「怒らないでくださいよ」「冷静に話しましょうよ!」などとなだめるのは火に油を注ぐようなもの。何事もなかったように「確かにその通りなんですけどね~」と、淡々と話を進めるのがオススメです。
人間味に欠ける冷たい職場も寂しいですが、つまらないことで気持ちをすり減らすのは避けたいところ。過剰に感情をやりとすることのないようにしたいものですね。
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なぜ男性は「調べもの」が好きなのか
実は「知っていること」しかできない?
2015年1月19日 五百田 達成:作家、心理カウンセラー 東洋経済
http://toyokeizai.net/articles/-/57965
女と男はなぜすれ違うのか? なぜ話が合わないのか? あの人はいったい何を考えているんか? どうしてあんなことを言ったの? この連載では、今、職場で起きているリアルな「女と男の探り合い」を、社会心理や生声エピソードなど、さまざまな視点からひもといていきます。
いつも調べものをしている男性、いますよね……(写真:xiangtao / Imasia)いつも調べものをしている男性、いますよね……(写真:xiangtao / Imasia)
■知らないと「動けない」男たち
先日、友人と話していて「男は『知っていること』しかできない」というテーマで盛り上がりました。
初めて取り組む仕事にしろ、行ったことのないレストランにしろ、初対面の得意先にしろ、予備知識がないと何もできない。とにかく事前に「知ろう」とするし、「知った」状態でなければ落ち着かない。
周囲にヒアリングし、やり方を教わり、マニュアルや先行事例を研究してようやく、自信を持って事に当たることができる。この傾向は実際、男性のほうが強いのかもしれません。IT機器やネット環境も、「調べクセ」を後押しします。
彼らにとって、未知のものを目の前に突きつけられ「さあ、やってみろ」と言われるのが、最も苦手なこと。
「情報を制するものはビジネスを制す」とうそぶいたり、「なんだそれは? 聞いてないぞ」とむくれたりするのは、たいてい男たちです。
■「直感」で飛び込んでいく女たち
一方、女性は肝が据わっているというか、度胸があるというか、知らないことでもトライする素養に恵まれています。
直感に優れた彼女たちは、知らないことを前にしても「楽しそう!」と失敗を恐れず挑戦し、「なんとなくこういうことでしょう?」と見よう見まねで習熟していくことに長けています。
「とりあえずやってみたほうが早い」「ピンと来たから」と、議論や指示を待つことなく軽やかに行動力を発揮。いわゆる「火事場の馬鹿力」も得意技です。
こちろんこうした行き当たりばったりのやり方には「経験値が、いつまで経っても個人レベルで止まってしまう」「情報がチームに共有されにくい」といったネックもあります。たとえば料理なども、いわゆる「お母さんの味」はなかなかレシピとして明文化・伝承されません。
■違っているから、補い合える
昨今のビジネス書・自己啓発書の潮流は、「行動がすべて」「失敗しないと成功できない」とうメッセージが主流となっています。これなども、考えてすぎて知ろうとしすぎて、行動できない人(特に男性?)が多い証でしょう。
かといって、なんでもかんでも行動すればいいというものでもありません。調べていたらチャンスを失う場面もある一方、入念な下調べが必要なケースもあります。すまり、組織全体としてバランスをとるのです。
論理的に頭で考えようとするが、失敗するのが怖いので、知らないことを前にするとフリーズしてしまう人
直感で動き、失敗を恐れずにトライするけれど、暴走したり、独りよがりになってしまう危険性のある人。
この両者が補い合うことこそ、ひとりではなく組織で働くことの醍醐味と言えるでしょう。