■見た目は同じ・・・でも中身は違う建物

現在取り掛かっている建築インスペクター業務でいろいろ考えさせられる事があります。

やはり、建物のコストは目に見えないところで削られているんだなぁという事。
なんとなくは予想していたのですが、我々の目から見たら手抜き工事（他にうまい言葉がみつからない・・・）が平然と行われていたという事です。

もちろん、それらが全て悪意の手抜き工事と断言するのではなく、構造力学や、法律の解釈を無視した現場重視の施工法が行われているという事です。

これらは全てのデベロッパーに当てはまる事ではありませんが、設計と施工が一括の請負業態がそういう結果を招いている点が多くあると思います。

しかし、法律的にそれらの工事は問題があるから駄目とか、いいとか簡単に区別できないのが建築の難しい所なんです。

最低限の法律である建築基準法は、その一文を取り出しても解釈しだいでいかようにもとらえられる部分があり、簡単に良し悪しを判断できない所が多々あるのです。

ましてや三次元的に組み立てるものを文章のみで書いてあるものですから、その法律の裏側にある背景もくみ取り内容を理解する力が必要となります。

問題は、基準法に書かれていないイレギュラーな事がい～～～っぱいあるということ。
それらの事象の良し悪しを自分の経験から判断し、工務店に示させていただいたのですが・・・
「検査には合格しましたので問題ありません。」
「いつもこれで施工してます。」
「これがうちの標準です。」

という言葉で片付けようとするんですね・・・

しかし、役所や関係機関の検査というのはほとんど意味を成していなくて（特に今回は、工務店が懇意にしている民間審査機関）、チェック項目を確認していくだけで、完璧ではないんですね。
そして、役所検査で確認する事は余り多くないんです・・・

ですから、それで解りましたとすんなり引き下がれないんです。



そう、それだけ見逃せない非常識な施工がされていたのです！


工務店も恐らく故意ではなくて、無知識ゆえに問題に気付いていない様子。
その問題を伝えるまでが大変でした。

力学的な根拠や、文献、役所へのヒアリングを重ね、その施工では問題があることを何とか伝えました。
法律の解釈が明らかにおかしい。。。
でも、相手はそれで問題ないと思っている。。。

いろいろな資料を基に様々な角度から説明して是正してもらう事となったのですが・・・
本当に骨の折れる作業でした。

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結局の所、私が指摘した問題のほとんどが現場都合によって行われた工事だという事。

・詳細図がないのでどうとでも解釈できる図面で現場工事が行われている事。
・職人任せの工程で施工手順をキチンと管理していないが故の施工方法だった事。
・設計者が現場を確認していないので、工事の内容を把握していない事。
・現場監督が複数棟掛け持ちしていて監視の目が行き届いていない事。

など。

そして、今回問題が大きくなったのは現場で指摘した事項を完全に無視して現場を進めてしまったことです。。。

やり直しが生じないように、問題点を指摘し現状での対策を考え是正方法を伝えていたのですが、「今までそれで検査は問題なかった」という事から無視して工事を進めてしまったんですね・・・

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そういった手抜き工事の多くは完成したら全く見えなくなってしまうんですね。
素人では建築中に見ても何が問題か解らないでしょうし、一部に建築家の中には不勉強で業者に言いくるめられちゃう人もいると思うのです。（キチンと監理していても見逃される事もあるわけですから・・・）

仕上げ工事は綺麗か汚いかで判断できるので、後からでも簡単に判断できます。
ですから業者もそう手抜きはしないでしょう。

完成後見えなくなる部分。
その施工状況によって家の持ちが変るわけですからないがしろには出来ません。

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市場価格より一割安く家を建てて、寿命が２割３割と短くなってしまうようでは元も子もありません。
特に子育て機に家を建てる場合は50年60年とその家に住み続ける訳ですから、見えなくなる部分こそ重要なんですね。
目に見える部分は痛めばすぐに容易に交換できます。
しかし、見えない部分は一旦仕上材を取り除かないと処置できない為、直すのが大変なんです。
そして、見えない部分こそキチンと造り上げないと家は長持ちしないのです。



なんか、ほんと家造りって難しい。

そう思います。