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最近は子育てを中心に時々建築話、旅行記や映画の事を綴っています。

■知らぬが仏?~複雑な防火規定・知らない方が得しちゃう?

2006-07-12 22:45:30 | ■建築アイテム

計画物件が海の近くなので木の外壁を使いたい我々。
でも、それには簡単に利用できない理由があって木の外壁を諦める事が多々あります。

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一般的に、都市の延焼を防ぎたい理由から、法22条地域・準防火地域・防火地域と定められている場合が多いのです。
今回の計画地はその中でも一番緩い「法22条地域」。
木造住宅を建てる場合は、「延焼の恐れのあるライン」と呼ばれる敷地から3m(1階部分)・5m(2階以降)離れた場所以外は自由に木が使える条件だったのですが・・・

2階で隣地から5mも離す事は難しく、普通の条件では木を使うことが出来ません。

しかしながら、土壁造同等(準防火構造)と認められる性能を有する木だと施工できるのです。

ん~なんだか建築基準法の用語が飛び交って良く解らない方すみません・・・

ともかく、一定条件をクリアした木だったら施工可能という事。
そこで、工務店の方から、ウリンと呼ばれる木に○○という難燃塗料塗ればオッケイだよと教えられたのです。
近くの現場で施工して問題ないから大丈夫だと・・・

しかし、この言葉を鵜呑みにしてはいけないのです。
念の為、その塗料から認定条件等の資料を取り寄せ確認したら案の定、使用不可な事が解りました。
メーカーの人もソレは認められないはずですと。

危ない危ない・・・

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なぜ?こういうことがおきるかというと、この防火に関する材料の呼び名がイロイロある為勘違いをしている施工者・設計者・なかには確認検査機関までもが曖昧なまま使用してしまうことがあります。(確信犯もいると思いますが・・・)

簡単に説明すると
難燃材料:5分燃えない
準不燃材料:10分燃えない
不燃材料:20分燃えない

準防火構造:20分構造体まで燃えない
防火構造:30分構造体まで燃えない
準耐火構造:45分~1時間構造体が燃えない
耐火構造:1時間以上構造体が燃えない

という区分になります。
法律の内容によって、それぞれの燃えないランクが義務化されているのですが、その詳しい違いを知らないで使っている人も多く見かけます。

特に(準防火)構造と、”構造”とつく防火基準は、下地や断熱の方法、取り付け方、構造躯体の種別など細かい決まりがあって、その内容に沿った使い方をしないと認定条件を外れる事になります。

例えば、ガルバニウム鋼板のカタログに防火構造認定取得と書いてあっても、その仕上げ材のみで認定が取れている事は少なく、内側に石膏ボードが必要だったり、断熱材にグラスウールと同等の性能の不燃断熱材を使用しなければいけなかったり・・・と、使用条件が限られるのです。

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今回提案された塗料は不燃の認定も受けていましたが、認定条件をみると、鉄板に塗った時に不燃となっていました。
当たり前じゃないと思うけど、”塗料としての不燃認定”を受けているのです。

仮に、この塗料を木に塗っても不燃だとしても、不燃材料の20分の耐火性能と、準防火構造の20分の耐火性能は全く異なる物なのです。

しかも、メーカーに尋ねると、外部ではすぐに性能が落ちるので使えませんと・・・

確かに安い材料で、隣地からの延焼もないような地域なので確認申請さえ通ってしまえばいいのかもしれませんが、キチンとその内容は理解すべきです。

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通常はそのような理由で外壁に木を使いません。
外壁に一番安いだろう木を使うには、それなりの費用を掛けて防火措置を施さないといけないからです。
結果的に高い外装材となります。
多分一番木が高いのではないでしょうか?
おかしな話ですが・・・

■ちなみに外壁に木を使う為には防火認定の外壁(EX:チャネルオリジナル・ウィルウォール)

や石膏ボード+難燃塗料を塗った認定木材(その認定を取得したメーカーの木材)等で施工の必要が出てくるのです・・・

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しかし、その塗料メーカーのHPを拝見していたら幼稚園で木材にこの塗料を塗って不燃の認定が取れましたという事例が出ていました。
全く・・・
認定条件書に「認定条件:下地は不燃材料とする」と書いてあるにもかかわらず、可燃物に塗料を塗っただけの物を「不燃材」と扱ってしまった確認検査機関も節穴だと言わざるを得ない・・・

ほんと、この事をキチンとすればするほど建物は高くなる。
知らないで、なんちゃって防火構造で建ててしまうと安上がりで喜ばれるのかなぁ・・・

このように知識不足で得しちゃう例が多々あるのがこの建築業界。
しかし、法律の基準はそれなりの性能を担保する為の必要条件。
ソレを欠いて良い事はあまりないでしょう。

と、言葉で伝えるのは難しいのですが、なんだかむずがゆく、なんちゃって建築で儲けてる建売業者がいることがちょっと許せないなぁと思いました。
というつぶやきでした。

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ちなみに別荘地などの敷地の大きなところではこの事はあまり問題にならずに安く木が使用できます。
そして、法22条地域という条件のない所でも同じくです。
その場合は、軒を深くして雨にヌレズライ構造とするなど工夫が必要です。

ほんと、もっと安く木が使えるといいんですが・・・

先ほど紹介した防火木材がもっと流通すれば安くなるんでしょうね。


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