あきさんのゲーム・映画感想

プレイしたゲームや観た映画の感想をつらつらと述べるブログです。

別れる決心

2024-03-03 17:37:24 | Movie


別れる決心

監督 パク・チャヌク



 濃密な面白さ。
 ミステリー・サスペンスの皮を被ったインテリ恋愛映画ですね。サスペンスの緊張感でひっぱり、主軸のはずの恋愛を隠しながら遂行しています。

 韓国特有の湿度があり、独特な気持ち悪さがあります。ねちゃっとした感じ。それが素晴らしくブレンドされていて、韓国だからこその唯一の映画へと昇華されていました。

 映画の密度も濃く、描写や演技で観客に想像させる作りとなっていて飽きません。非常に良くできています。

 カメラの画角も特徴的で、絵としてインパクトがあり様々なショットが興味深く、とても目を惹かれます。

 韓国人ならではの韓国へのちょっとした皮肉もありそうで、そうした面でも楽しませてもらいました。

 映画としての見方が難しい映画かもしれませんが、先入観なく観ることをオススメします。

 一般性は高くはありませんが、どの方向からも最高品質であり、独特でかつ素晴らしい映画でした。

 ひと癖ある映画が好きな方にオススメの映画です。


 

落下の解剖学

2024-02-25 17:14:27 | Movie


落下の解剖学

監督 ジュスティーヌ・トリエ



 綿密な芸術。
 折り重なる違和感によって導かれるあっという間の2時間30分。一見するとヒューマンサスペンスなのですが、中身は芸術映画。カンヌのパルムドール受賞作。

 私や旦那は傑作だと感じましたが、実際は年に1,2本ほど観る人にはオススメできません。なぜなら最初から最後まで全てのシーンに違和感が意図的に、緻密な計算の元に散りばめられているからです。

 その違和感は「映画ならフツーは〇〇するよね」という常識を外しているからこそ生まれるもので、それは雑音になります。雑音は、「なにが言いたいのかわからない」だとか、「なにを観せられているのかわからない」といった不快なノイズになります。

 この映画はその不快感を意図的に与えてきます。セリフ。音。家の家具の配置。母親と弁護士の関係性。目が不自由なはずの子どもが雪の中の橋を渡る。冒頭のインタビュー。噛み合わないちぐはぐな会話に行動。それどころか映画内のセリフで「真実がどうかは関係ない」と何度も口にするなど全てがバラバラです。終わりでさえも中国人か韓国人が経営してそうな日本料理店で不器用に箸を使って食事をします。

 どれもこれもがスッキリしない。映画としてオカシイのです。この違和感が常につきまとうので、観客は不安を抱きながら映画を見続けます。見続けるしかないのです。

 けれども映画という虚構とは違って現実はこの【落下の解剖学】の違和感のようにスッキリしないことだらけです。そうした視点で【落下の解剖学】を眺めると、「この映画はサスペンスはなく不合理な芸術映画」だと感じられます。

 こうなるとこの映画の虜になります。違和感は印象深いシーンになり、観客の中に残り続けます。映画を否定する違和感が映画を作り、映画を虚構と否定する観客がいつまでも心に残る映画を完成させるのです。こんな素晴らしい映画はありません。

 ゆえに傑作だと表現したのです。けれども同時に一般性は大きく下がってしまうので、あまり映画を観ない人にはオススメできないとも表現しました。

 評価が割れそうな映画ではありますが、もしかしたらこの【落下の解剖学】が、2024年で最も好きな映画になるかもしれません。そんな素晴らしい映画でした。


スパルタカス

2024-02-24 07:46:11 | Movie


スパルタカス 1960

監督 スタンリー・キューブリック



 名作。
 緊張感の連続で3時間があっという間の映画でした。

 綺麗な構成で描かれていて、映画の開始早々、反抗したために足にかじりついた主人公スパルタカスは石にはりつけられ餓死させられそうになり手足の自由を奪われるのですが、最後は同じように苦痛と餓死を待つだけの磔の刑にされます。

 磔の刑にされたスパルタカスは、意識朦朧としている中、死んだと思っていた妻と再会します。妻は苦しみながら死を待つだけのスパルタカスに涙を流し、足にすがり言葉をつむぎます。

 また敵でも味方でもない奴隷商人も同様に、最初は手足を拘束されたスパルタカスを購入することで結果的にスパルタカスを自由にするのですが、最後はスパルタカスの妻と子どもを逃がすことでスパルタカスを結果的に救いました。

 美しい構成です。
 さらにスパルタカスは最初は孤独なのですが、だんだんと周囲に人が増え、たくさんの人に囲まれます。そして死によってだんだんと周囲の人が減り、最後は孤独になります。

 うーん。
 素晴らしいです。

 それだけではありません。
 政治家たちの対比も実に面白かったです。女性に囲まれハーレムを形成し、醜く太り、ときに犯罪者ともやり取りをする政治家は最後はスパルタカスの妻に大金を渡して逃がし、選び抜いた美しいナイフで潔く自害します。

 一方で女性を寄せ付けず、共にいようとするのは男性奴隷1人だけのクラッススは奴隷商人の剣闘士たちに大金を積んで死闘させはしましたが、基本的に潔癖で、腐敗を正そうとする反面、スパルタカスに怯え、正規軍の力を借りてスパルタカスを殺します。さらに描写は2人だけで共にお風呂に入る程度でしたが、ゲイであるように匂わせ、美しい男性奴隷への不合意の性強要を印象付けられます。

 この矛盾と対比が同じ映画の中で行われていて、3時間が濃密なものとなっています。

 もちろん俳優たちの魂の入った演技は最高で、まるで本物のように感じられるほどでした。画面を観るとハッとそちらに目を奪われてしまう主役たちの魅力も非常に良かったです。昔の言葉だとスター性というヤツですね。

 面白かったです。
 恐らく影響力も凄まじく、去年見た映画だけでも序盤は【ブラックアダム】はそっくりそのまま参考にしていますし、後半のシーンでは【ナポレオン】が似た画角での撮影をしていました。

 本当にあっという間の3時間で、濃密で、未だに消化しきれない傑作です。

 心の底からオススメしたい映画ですね。

今年観た映画で私の好みTOP5

2023-12-24 19:05:00 | Movie
今年観た映画で私の好みTOP5


5,君たちはどう生きるか
 監督 宮崎駿

ひと言
【宮崎駿の人生が詰まった映画。ストーリーとか云々ではなく、宮崎駿の生き様を少し覗くことができます】


4,ザ・キラー
 監督 デヴィッド・フィンチャー

ひと言
【デヴィッド・フィンチャー映画でしか得られない成分がここにあります。監督の異常な要求に疲れ切った俳優たちの表情や演技が素晴らしいです】


3,クリード3
 監督 マイケル・B・ジョーダン

ひと言
【監督の漫画・アニメ愛が凄いです。構図やカメラ角度が漫画やアニメのコマ割りを非常に意識していて、映画の構成もほぼアニメ。IMAXで撮るアニメで、映画館で笑いを堪えるのに必死でした】
 

2,ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE
 監督 クリストファー・マッカリー

【やっぱりトム・クルーズしかいないです。意味もなく空を飛び、それどころかバイクを運転しながら崖から飛び降り、ノーヘルでバイクを運転しながらアクションシーンを撮る。そして撮りたいシーンを撮ったらストーリーをテキトーに継ぎ接ぎする。スタント使わず。やっぱりトムしかいないです】


1,シン・仮面ライダー

 監督 庵野秀明
【iPhoneの独特な画質が年末まで頭から離れませんでした。さらに監督のオタク的仮面ライダー愛がすごくて、観てて「これ一般ウケしないでしょw」と思っていたら案の定。さすがに石ノ森章太郎まで単位取得してる人は少ないかと。私たち夫婦はオープニングで悟って大歓喜でしたが、ありゃわからんですよ。仮面ライダー愛と映画への本気度がよく伝わる、素晴らしい映画でした】


 以上です。
 私は魂を感じる作品が好きなので、このようなランキングとなりました。

 来年はDUNEやマッドマックスなどの期待作があるようで、すでに私たち夫婦はワクワクが止まらない状態です。

 最近はコテコテ邦画のような、わかりやすく丁寧で少し大げさな映画が流行ってきているみたいですし、どうなるでしょうねぇ。

 来年も楽しみです!

トランスフォーマー/ビースト覚醒

2023-12-18 19:05:00 | Movie


トランスフォーマー ビースト覚醒

監督 スティーヴン・ケイプル・Jr


 面白い。
 癖がなくて観やすい秀作。
 CGとリアルの組み合わせが上手で没入感もありました。アクションにも迫力があり、見ごたえがあります。

 話自体は映画でいつも観るパターンなので映画オタクは「退屈だ」と評価を低くしてしまいがちですが、映画をあまり観ない一般層にはかなりウケる映画です。

 秀才な若手監督って印象でした。
 良い意味でこれから癖がなく当たり障りのないヒット作をちょこちょこ出してきそうな次世代の監督だなぁと思わされましたよ。大作に向いてる監督ではないでしょうか。

 とてもキレイに映画を作っていますよね。それから映画がすごい好きなのすごく伝わってきました。あらゆる映画の詰め合わせセットでしたねー。あと頭文字Dも好きそうw

 本当に優等生な映画で、すごく勉強してそうだなぁってくらいにイロイロ取り入れていました。ここまでするなら逆にそれが味なのかもしれない、と思わされるレベルでしたよ。

 構成はシンプル。
 よく観る展開なのですが、上記のそうしたオマージュが面白くて私は笑いながら観てました。ちゃんとスーパーヒーローランディングしてたところには大笑いでしたよ。

 内容というかまぁ、ざっくりとした流れといいますか、そんな感じもあって次のアベンジャーズを狙ってそうって感じでしたね。

 次回作も監督をするかもしれないとのことで、今から期待しています。