医療を経済する―質・効率・お金の最適バランスをめぐって (単行本)

医療従事者に向け、経済学の基礎から現代の医療政策論争までを論ずる, 2007/4/27

レビュアー： 歯職人

　本書は、医療従事者に向け経済学の基礎から現代の医療政策論争までをこの一冊で提示しようとする試みである。
　編者は冒頭の「はじめに」において、「医療界の人間」にある「医療経済学」への誤解から筆を起こす。
　「はじめに」の副題が、「本書の読みかた」とし、丁寧に語りかける。医療側が持つ「診療報酬制度の矛盾に対する怒りの存在」が、「医療経済学」への接近の妨げになっている様相にも理解を示す。
　本書の目的が、一通りの経済学、医療経済学を示しながら、多角的な視点を提供し、「医療経済学」をめぐる種々の課題の百科事典(エンサイクロぺディア)と説明する。
　尚、編集者に注文するとすれば、各著者の経歴が、現職の記載のみであり、過去の実績の紹介を、少々増すことで、各論文の理解の助けにもなるのではないだろうか。
　読者が、本書により医療において「質・効率・お金の最適バランスをめぐって」の諸問題に対し、複数の視点を獲得できれば、本書の価値となる。

(イリョウヲケイザイスルシツコウリツオカネノサイテキバランスヲメグッテ )

医療を経済する―質・効率・お金の最適バランスをめぐって
ISBN:9784260000444 (4260000446)
３２５ｐ　２１ｃｍ（Ａ５）
医学書院 (2006-03-15出版)

・長谷川　敏彦・松本　邦愛【編】
[A5 判] NDC分類:498.1 販売価:\3,360(税込) (本体価:\3,200)

１　医療にはなぜ「効率」が必要なのだろうか（「経済学的な考え方」とは？；経済学の方法　ほか）
２　医療のパフォーマンスを評価する（臨床経済学による医療の経済効果；医療におけるテクノロジー・アセスメント　ほか）
３　医療保険の経済学（医療保険は必要か？（「保険」の経済理論）
医療保険の制度・歴史　ほか）
４　医療制度と政策―よりよき医療のために（取引コストとエージェント理論；社会保障制度（医療保障制度を中心に）　ほか）