歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

水谷顕一 (著), 水谷 惟紗久(著) 聖書は動物をどう訳してきたか―日本語訳聖書に見る動物名称の変遷

2015年02月08日 | amazon.co.jp・リストマニア


異なる時代、民族、生活圏間の文化の伝播と受容を聖書翻訳事業の動物名の変遷から解明する

投稿者 歯職人 投稿日 2015/2/8
 
 静かに壮大に、異なる時代、民族、生活圏間の文化の伝播と受容の在り方を、日本を事例を主に、イギリスやドイツ等を参照しながら、聖書翻訳において動物名の変遷から解明する一冊である。
 本書は、聖書成立当時、その文化を共有する者の間では了解可能てあった聖書に登場する動物等の名前が、世界宗教として広がり、成長する過程で、異なる時代、民族、気候風土、植生、動物との人間の関係等々から規定される文化の壁を前に、どの様に意味づけられ翻訳されて行ったかを跡づけた一冊である。
 気候風土が違えば、物も事も言葉も違う、捉え方も違う。砂漠に生まれ、現在も伝わる星座の名称に「うお・魚」がある。寿司を食べ、刺身を好む現在の日本人からすれば、やけにあっさりした、魚との付き合いと思ったりする。日本語訳の聖書の「うお」「さかな」という言葉もまた、聖書成立以前の砂漠の民の生活が色濃く反映され世界と海に囲まれた日本の生活を繋ぐことに苦労されているのだろう。
 蛇足ではあるが、本書にトナカイは登場しない。聖書に登場しないからであろう。しかし、今の日本では、キリスト教⇒クリスマス⇒サンタクロース⇒トナカイは、定番の風景を位置を得ている様に見える。北極圏に生息するトナカイと中東パレスチナの地の文化は、余りに遠い。後世の者たちが、新たなものを付け加えるのも歴史の一面であり、場合により、微笑ましいともいえよう。
 聖書を編纂した人々、聖書に残る言葉を発した人々の意志を知るためには、「温故知新」言葉以前に、元の姿を復元し、それ知る営みが必要なのであろう。しかし、その難しさを、本書が示している。
 本書の著者らには、この研究過程に得られた知見を一般の方々にわかりやすく伝える一般啓発書の発行をぜひお願いしたい。

http://www.amazon.co.jp/%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%81%AF%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%82%92%E3%81%A9%E3%81%86%E8%A8%B3%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%8B%E2%80%95%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E8%A8%B3%E8%81%96%E6%9B%B8%E3%81%AB%E8%A6%8B%E3%82%8B%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%90%8D%E7%A7%B0%E3%81%AE%E5%A4%89%E9%81%B7-%E6%B0%B4%E8%B0%B7-%E9%A1%95%E4%B8%80/dp/4873953952/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1423291008&sr=8-1&keywords=%E6%B0%B4%E8%B0%B7%E3%80%80%E8%81%96%E6%9B%B8

聖書は動物をどう訳してきたか―日本語訳聖書に見る動物名称の変遷

水谷 顕一/水谷 惟紗久【著】

価格 \2,160(本体\2,000)
キリスト新聞社(2004/02発売)

サイズ A5判/ページ数 269p/高さ 21cm
商品コード 9784873953953
NDC分類 193

内容説明

本書は、文語訳聖書に始まる公用日本語訳聖書における動物名称の翻訳語の変遷を、動物ごとに整理したものである。

目次

海綿
さんご・珊瑚
ひる・蛭
しんじゅ・真珠
かたつむり・蝸牛
くも・蜘蛛
さそり・蝎・蠍
はち・蜂
みつばち・蜜蜂
くまばち・熊蜂・すずめばち〔ほか〕

著者紹介

水谷顕一[ミズタニケンイチ]
籍名:水谷一。1927(昭和2)年生まれ。関西学院大学大学院修了(文学修士:英語学、蛭沼寿雄教授主査)。大阪電気通信人間科学研究センター教授(文体論)を経て(1997年3月まで)、同大名誉教授。所属学会(2003年現在)は日本イスパニア学会会員、日本文体論学会(理事)

水谷惟紗久[ミズタニイサク]
1969(昭和44)年生まれ。慶応義塾大学大学院修了(文学修士:歴史学、高橋正彦教授主査)。(社)北里研究所研究員(医史学研究部)を経て、1998年より(株)日本歯科新聞社『アポロニア21』編集長。所属学会(2003年現在)は日本医史学会、日本古文書学会

http://www.topos.jp/mizutani/ken-hajime.htm

著書:「聖書は動物をどう訳してきたか」

はじめに

 日本における聖書の本格的な日本語訳は、 1880 年 ( 明治 12 年 ) に始まるいわ ゆる翻訳委員会による新約聖書日本語訳を発端とする。明治期における聖書の翻訳 は、このようなプロテスタントミッションによる公的な活動に先行して、ギュツラフ訳 (1837 年・天保 8 年頃と推定 ) 、ベッテルハイム訳 (1855 年・安政 2 年 ) などに始まる個人部分訳があり、公用聖書と個人訳聖書とが平行<して刊行されつづけてきた。
 さて、聖書にはさまざまな動物が現れる。なかでも旧約聖書には豊富な動物 が見られ、これを伝えてきた人々との多彩で、、生き生きとした関わりをうかが い知ることができる。しかし、へブル語 ( 旧約 ) 、アラム語 ( 旧約 ) 、ギリシア 語 ( 新約 ) で書かれた動物名を他の言語に翻訳する場合、「それが何を指すの か」という問題が発生する。とりわけ、動物の生存圏の違い、時代の変遷にともなって、聖書に記載された動物名称の他言語への翻訳は、一部においては絶 望的なまでに困難となっている。
 本書は、文語訳聖書に始まる公用日本語訳聖 書における動物名称の翻訳語の変遷を、動物ごとに整理したものである。それぞれの聖書が、一つ一つの動物名称について、信頼性の高い典拠に基づき、かつ主の示し給う御言葉の文脈を最も的確に表現できるような訳を充てていることがわかる。なお、本書では、訳語を比較するうえで公用日本語訳聖書として文語 訳、口語訳、新改訳、新共同訳、バルパロ訳をとりあげているが、適宜、他の 日本語訳聖書 ( 個人訳含む ) 、英国欽定訳聖書をはじめとする各種欧米語訳聖書などを参考にしている。

最新の画像もっと見る