○歯科技工法の施行について
(昭和三〇年一〇月一二日)
(発医第一一〇号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)
歯科技工法は、本年八月一六日法律第一六八号をもって公布され、これに伴う政令及び省令は、それぞれ九月七日政令第二二八号及び九月二二日厚生省令第二三号をもって公布されたのであるが、この法律は、歯科技工士の資格を定めてその資質の向上を図るとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もって歯科医師の業務を適正に補足されることを目的とするものであって、本法運用の成否は我が国における歯科医療の普及、向上に密接な関連を有するものであるから、特に左記事項御留意の上、本法の趣旨を十分普及徹底せしめるとともに、その運用に関して格段の意を用いられ、所期の目的達成に万遺憾なきを期せられたく、命により通知する。
記
第一 一般的事項
一 本法制定の趣旨は、近年国民の多数が歯科疾患に冒され、特にそのうち義歯、充てん、きょう正装置等歯科技工を有する患者は非常な数にのぼっている状況にもかかわらず、診療に従事する歯科医師の数はこれらの患者の需要を満たすには不十分であり、従って、歯科技工の業務については、歯科医師以外の者に委託する場合も少くなく、また、これらの歯科技工の業務に従事する者に対しては従来何等の法的規制が加えられておらず、適正な歯科医療の確保に甚だ欠ける点が多い状態に鑑み、歯科技工士の資格を定め、その資質の向上を図り、特に従来歯科医業との関係においてとかくの問題を惹起した点については、その業務の範囲を明確にすること等により、歯科技工の業務が適正に行われるよう規制し、もって歯科医療の普及と向上に寄与しようとするものであること。
二 本法において歯科技工とは、特定人のための歯科医療用の補てつ物、充てん物又は、きょう正装置を作成し、修理し、又は加工することをいうのであるから、一般的な見本又は教材用の模型の作成又は義歯製作のための素材となる陶歯の製造等については、本法の適用を受けないものであること。なお、歯科医師が自己の診療中の患者のために自ら行う補てつ物、充てん物又はきょう正装置の作成等については、歯科診療の一環として行うものとして本法の適用は受けないが、自己の診療中の患者以外の者のために行う歯科技工については、適用されるものであること。
三 病院又は診療所の歯科技工室については、その歯科技工室が当該病院又は診療所で診療中の患者のために歯科技工のみを行う場所である場合は、本法の歯科技工所に関する規定の適用は受けないものであるが、その技工室において、当該病院又は診療所で診療中の患者以外の者のためにも歯科技工が行われる場合には、歯科技工所として本法の適用も受けるものであること。
第二 免許に関する事項
一 つんぼ、おしの者については、歯科技工の業務の性質上特に支障がないと考えられるので、絶対的欠格事由に加えられていないものであること。
二 歯科技工士の身分の監督については住所地主義をとり、名簿の移転の手続を定めたものであるから、住所変更の場合に十分届出を励行させる等指導されたいこと。
三 その他登録、免許証及び住所の届出等に関しては、歯科衛生士と同様な建前としたこと。
第三 試験に関する事項
一 試験は厚生大臣の指定した歯科技工士養成所所在地の都道府県知事が毎年少なくとも一回行うものであり、従つて歯科技工士試験審議会は試験を行う都道府県に置かなければならないものであつて、地の都道府県に置く必要はないものであること。なお、昭和三五年までは、法附則第三条の規定により原則として全都道府県知事が試験を行うものとされているが、厚生大臣の承認を受けた場合は、試験を行なわなくてもよいのであり、従つて審議会を置く必要もないものであること。
二 試験の基準については、歯科医師試験審議会の意見をきいて指示をし、又は歯科医師試験審議会の委員に歯科技工士試験審議会を指導させる予定であること。
三 歯科技工士養成所の指定に関しては近く省令を制定するが、その入所資格は、学校教育法第四七条に規定する者(高等学校に入学することのできる者)とし、修業年限は三年とする予定であること。
四 法第一五条の規定により期間を定めて受験の停止の処分を受けた者については、その期間は当該処分を行つた都道府県知事の行う試験はもとより、すべての都道府県知事の行う試験の受験資格が停止されるものであること。
五 歯科技工士試験審議会の構成については、社団法人である都道府県歯科医師会を代表する者、歯科技工士に関して学識経験のある者及び都道府県の衛生行政主管部局の職員を委員に任命するようにすること。
第四 業務に関す事項
一 歯科技工の業務は高度な専門的技術が要求されるものであるにもかかわらず、従来何等の規制が行われることなく放任されていたため、粗悪な補てつ物、充てん物又はきよう正装置が作成され、歯科医療に多くの支障を来たした事情に鑑み、特に歯科技工の業務は歯科医師及び歯科技工士の業務独占としたものであること。
二 歯科医業の停止を命ぜられた歯科医師は、その期間中は歯科技工の業務も禁止されるものであること。
三 歯科技工の業務はもとより歯科医師の指示が前提となるものであるが、歯科医師の指示が確実に行われ、かつ、適正な補てつ物、充てん物又はきよう正装置が作成されることを担保するための要件として、指示書によるべきことを定め、その保存義務をも課したものであり、これが確実に行わるよう特に指導されたいこと。
四 法第二○条の規定は歯科医業の範囲に入る行為を例示したものであり、これらの行為はややもすると歯科技工士が違反を犯し易い点について、特に業務上の注意として定めたものであるから、本条に掲げる行為を行つた場合は、歯科医師法違反として罰則の適用を受けるものであり、従つて本法には本条違反についての罰則を設けていないものであること。
第五 歯科技工所に関する事項
一 歯科技工所の開設については、その開設者の如何を問わず、すべて届出をもつて足りるものであること。
二 歯科技工所の管理者は、開設者が医師又は歯科医師である場合は開設者自らがなることが望ましいが、他の者を管理者とする場合は、十分管理ができるような者をもつてあてるべきものであること。
三 構造設備の基準については特に定めていないが、歯科技工の作成物に衛生上有害な結果を来すおそれがある場合には、都道府県知事は改善命令又は使用禁止の処分をなしうるものであるから、専ら衛生上の観点より指導されたいこと。
四 歯科技工の業務は、歯科医師の指示により行われるものであるから、その広告についても歯科医師との関連において必要な範囲において所定の事項が許されるものであり、従つて一般人に対して歯科医業とまぎらわしい広告をなすことのないよう特に留意されたいこと。
なお、法第二六条第一項第四号の規定により都道府県知事が許可を与える事項については、特殊な製作方法により行われる歯科技工についてこれを明らかにする事項例えば、特殊圧印装置の有無等が考えられるものであること。
第六 附則に関する事項
一 本法は、公布の日から起算して六○日を経過した日、即ち、本年一○月一五日から施行されるものであること。
二 法附則第二条第一項に規定する者は、本法施行後三ヵ月間は、そのまま業務を継続することができるのであるが、三ヵ月後においては、省令附則第二項に規定する事項を都道府県知事に届け出た者に限つて、昭和三五年一二月三一日まで歯科技工を業とすることが許されるものであること。
三 法附則第二条第二項の規定により届出をした者については、昭和三五年まで業務の継続を認められ、かつ、歯科技工士試験の受験資格が認められるものであるから、その届出を受けた場合には省令附則第四項に定める手続をするとともに、特に届出月日を明確にされたいこと。
四 省令附則第三項の規定により届出をする際に添附すべき書類は、特に業務を行つていた場所及び期間について確証とするに足るものでなくてはならないこと。
五 特例技工士のみが業として歯科技工を行う場所については、特例技工所の取扱を受けるものであるが、歯科医師又は歯科技工士とともに特例技工士が業として歯科技工を行う場所は、歯科技工所として取り扱うべきものであること。
第七 その他
本法実施の細目に関しては、別途通知する予定であること。
(昭和三〇年一〇月一二日)
(発医第一一〇号)
(各都道府県知事あて厚生事務次官通達)
歯科技工法は、本年八月一六日法律第一六八号をもって公布され、これに伴う政令及び省令は、それぞれ九月七日政令第二二八号及び九月二二日厚生省令第二三号をもって公布されたのであるが、この法律は、歯科技工士の資格を定めてその資質の向上を図るとともに、その業務が適正に運用されるように規律し、もって歯科医師の業務を適正に補足されることを目的とするものであって、本法運用の成否は我が国における歯科医療の普及、向上に密接な関連を有するものであるから、特に左記事項御留意の上、本法の趣旨を十分普及徹底せしめるとともに、その運用に関して格段の意を用いられ、所期の目的達成に万遺憾なきを期せられたく、命により通知する。
記
第一 一般的事項
一 本法制定の趣旨は、近年国民の多数が歯科疾患に冒され、特にそのうち義歯、充てん、きょう正装置等歯科技工を有する患者は非常な数にのぼっている状況にもかかわらず、診療に従事する歯科医師の数はこれらの患者の需要を満たすには不十分であり、従って、歯科技工の業務については、歯科医師以外の者に委託する場合も少くなく、また、これらの歯科技工の業務に従事する者に対しては従来何等の法的規制が加えられておらず、適正な歯科医療の確保に甚だ欠ける点が多い状態に鑑み、歯科技工士の資格を定め、その資質の向上を図り、特に従来歯科医業との関係においてとかくの問題を惹起した点については、その業務の範囲を明確にすること等により、歯科技工の業務が適正に行われるよう規制し、もって歯科医療の普及と向上に寄与しようとするものであること。
二 本法において歯科技工とは、特定人のための歯科医療用の補てつ物、充てん物又は、きょう正装置を作成し、修理し、又は加工することをいうのであるから、一般的な見本又は教材用の模型の作成又は義歯製作のための素材となる陶歯の製造等については、本法の適用を受けないものであること。なお、歯科医師が自己の診療中の患者のために自ら行う補てつ物、充てん物又はきょう正装置の作成等については、歯科診療の一環として行うものとして本法の適用は受けないが、自己の診療中の患者以外の者のために行う歯科技工については、適用されるものであること。
三 病院又は診療所の歯科技工室については、その歯科技工室が当該病院又は診療所で診療中の患者のために歯科技工のみを行う場所である場合は、本法の歯科技工所に関する規定の適用は受けないものであるが、その技工室において、当該病院又は診療所で診療中の患者以外の者のためにも歯科技工が行われる場合には、歯科技工所として本法の適用も受けるものであること。
第二 免許に関する事項
一 つんぼ、おしの者については、歯科技工の業務の性質上特に支障がないと考えられるので、絶対的欠格事由に加えられていないものであること。
二 歯科技工士の身分の監督については住所地主義をとり、名簿の移転の手続を定めたものであるから、住所変更の場合に十分届出を励行させる等指導されたいこと。
三 その他登録、免許証及び住所の届出等に関しては、歯科衛生士と同様な建前としたこと。
第三 試験に関する事項
一 試験は厚生大臣の指定した歯科技工士養成所所在地の都道府県知事が毎年少なくとも一回行うものであり、従つて歯科技工士試験審議会は試験を行う都道府県に置かなければならないものであつて、地の都道府県に置く必要はないものであること。なお、昭和三五年までは、法附則第三条の規定により原則として全都道府県知事が試験を行うものとされているが、厚生大臣の承認を受けた場合は、試験を行なわなくてもよいのであり、従つて審議会を置く必要もないものであること。
二 試験の基準については、歯科医師試験審議会の意見をきいて指示をし、又は歯科医師試験審議会の委員に歯科技工士試験審議会を指導させる予定であること。
三 歯科技工士養成所の指定に関しては近く省令を制定するが、その入所資格は、学校教育法第四七条に規定する者(高等学校に入学することのできる者)とし、修業年限は三年とする予定であること。
四 法第一五条の規定により期間を定めて受験の停止の処分を受けた者については、その期間は当該処分を行つた都道府県知事の行う試験はもとより、すべての都道府県知事の行う試験の受験資格が停止されるものであること。
五 歯科技工士試験審議会の構成については、社団法人である都道府県歯科医師会を代表する者、歯科技工士に関して学識経験のある者及び都道府県の衛生行政主管部局の職員を委員に任命するようにすること。
第四 業務に関す事項
一 歯科技工の業務は高度な専門的技術が要求されるものであるにもかかわらず、従来何等の規制が行われることなく放任されていたため、粗悪な補てつ物、充てん物又はきよう正装置が作成され、歯科医療に多くの支障を来たした事情に鑑み、特に歯科技工の業務は歯科医師及び歯科技工士の業務独占としたものであること。
二 歯科医業の停止を命ぜられた歯科医師は、その期間中は歯科技工の業務も禁止されるものであること。
三 歯科技工の業務はもとより歯科医師の指示が前提となるものであるが、歯科医師の指示が確実に行われ、かつ、適正な補てつ物、充てん物又はきよう正装置が作成されることを担保するための要件として、指示書によるべきことを定め、その保存義務をも課したものであり、これが確実に行わるよう特に指導されたいこと。
四 法第二○条の規定は歯科医業の範囲に入る行為を例示したものであり、これらの行為はややもすると歯科技工士が違反を犯し易い点について、特に業務上の注意として定めたものであるから、本条に掲げる行為を行つた場合は、歯科医師法違反として罰則の適用を受けるものであり、従つて本法には本条違反についての罰則を設けていないものであること。
第五 歯科技工所に関する事項
一 歯科技工所の開設については、その開設者の如何を問わず、すべて届出をもつて足りるものであること。
二 歯科技工所の管理者は、開設者が医師又は歯科医師である場合は開設者自らがなることが望ましいが、他の者を管理者とする場合は、十分管理ができるような者をもつてあてるべきものであること。
三 構造設備の基準については特に定めていないが、歯科技工の作成物に衛生上有害な結果を来すおそれがある場合には、都道府県知事は改善命令又は使用禁止の処分をなしうるものであるから、専ら衛生上の観点より指導されたいこと。
四 歯科技工の業務は、歯科医師の指示により行われるものであるから、その広告についても歯科医師との関連において必要な範囲において所定の事項が許されるものであり、従つて一般人に対して歯科医業とまぎらわしい広告をなすことのないよう特に留意されたいこと。
なお、法第二六条第一項第四号の規定により都道府県知事が許可を与える事項については、特殊な製作方法により行われる歯科技工についてこれを明らかにする事項例えば、特殊圧印装置の有無等が考えられるものであること。
第六 附則に関する事項
一 本法は、公布の日から起算して六○日を経過した日、即ち、本年一○月一五日から施行されるものであること。
二 法附則第二条第一項に規定する者は、本法施行後三ヵ月間は、そのまま業務を継続することができるのであるが、三ヵ月後においては、省令附則第二項に規定する事項を都道府県知事に届け出た者に限つて、昭和三五年一二月三一日まで歯科技工を業とすることが許されるものであること。
三 法附則第二条第二項の規定により届出をした者については、昭和三五年まで業務の継続を認められ、かつ、歯科技工士試験の受験資格が認められるものであるから、その届出を受けた場合には省令附則第四項に定める手続をするとともに、特に届出月日を明確にされたいこと。
四 省令附則第三項の規定により届出をする際に添附すべき書類は、特に業務を行つていた場所及び期間について確証とするに足るものでなくてはならないこと。
五 特例技工士のみが業として歯科技工を行う場所については、特例技工所の取扱を受けるものであるが、歯科医師又は歯科技工士とともに特例技工士が業として歯科技工を行う場所は、歯科技工所として取り扱うべきものであること。
第七 その他
本法実施の細目に関しては、別途通知する予定であること。