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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤 毅 「歯科専門職の資質向上検討会歯科技工士ワーキンググループ報告書(案)」に関する意見

2014年02月08日 | 朝日新聞・週刊金曜日
案件番号 495130250
案件名 「歯科専門職の資質向上検討会歯科技工士ワーキンググループ報告書(案)」に関する意見募集について
所管府省・部局名等 厚生労働省医政局歯科保健課

意見・情報受付開始日 2014年01月29日
意見・情報受付締切日 2014年02月19日

提出意見

 私は、昭和59年4月28日、厚生大臣渡部恒三名の歯科技工士免許証を頂いた、知事免許から大臣免許に切り替わった「一期生」の歯科技工士です。

 歯科技工士の資質向上に対し、歯科専門職の資質向上検討会と歯科技工士ワーキンググループにおいて、関係者・有識者による長時間の真摯な議論が行われ、本報告書(案)の成果を得たことに感謝申し上げます。

 現状分析として、「歯科技工技術はめざましい進歩をとげてきており、国民に安全で質の高い歯科医療を提供する観点から、歯科技工士に係る教育を充実させ、より資質の高い歯科技工士を養成していくことが不可欠である」は、極めて正当なものと考えます。また、統一試験に関連する細部の論点も、行き届いた検討が行われ、その実施の実務的実現性の精度の高さが期待されます。

 歯科技工士の国家試験の全国統一化が、現在まで行われていないことがそもそも疑問であり、当然行われなければならないことと考えます。

 しかしながら「新たな器具や機械の整備等により歯科技工士養成施設に多大な負担がかからないよう配慮する必要がある」は、補助金・助成金等の活用により「多大な負担」を緩和することが可能であり、歯科技工技術のめざましい進歩のなか、歯科技工士養成施設が「新たな器具や機械の整備」をすることは、技術職である歯科技工士養成にとって必須の前提条件であり、「新たな器具や機械の整備」による教育を受けていない歯科技工士を生み出すことは、国民の歯科口腔保健の向上を図っていく上で、あってはならないことと考えます。

 日本の人口減少と18歳人口の減少の中、歯科技工士養成施設の施設数と募集定員の過剰感は否めず、政策誘導により歯科技工士養成施設の統廃合も視野に入れた歯科技工士養成施設の強靭化こそ、本来目指すべき方向と考えます。
「4.おわりに」にある「なお、修業年限の延長等の課題については、歯科技工技術の革新や修復材料の多様化への対応といった歯科技工を取り巻く環境の変化も勘案しつつ、今後の歯科技工士技術に関する動向等を踏まえ、検討していくことが望まれる」は、スピード感に欠け、技術革新と進歩に対応せず、正当性を欠くものであり、この期に及んで実施の先送りは許されないと考えます。

 現在の歯科技工士養成施設の卒業生の歯科技工に対する習熟度をみれば、2年間という修業年限では、歯科医療と歯科技工の現場が求める技術水準との断絶が著しく、言わば国家資格は得たが歯科技工士として現場の仕事に耐え得ない、あえて悪く言えば「ペーパー」歯科技工士の姿がみられる。

 統計等でも明らかな様に、歯科技工士の主要な職場である歯科技工所と歯科医療機関は、大部分が小規模であり、「入社後の能力開発」等による若者に対するサポート体制は残念ながら脆弱であり、それらが相まって若者の早期離職等もみられる。この早期離職等を防止するためにも、歯科技工士養成施設に求められる現在の若者に対応したきめ細かな教育、技術教育の必要性はますます高まるっています。

 しかしながら、当局による歯科技工士養成施設と歯科技工の現場との乖離を埋める施策が見られない。

 これは、平成25年版『厚生労働白書』が「若者の意識をさぐる」をテーマとした問題意識、更には「いつの時代も、若者はこれからの社会を担っていく希望です」、「我が国の活力の源泉となる若者が、最大限にその有する力を発揮し、自らの人生を切り拓いていくことができるに支援を行うことが重要です」(厚生労働大臣田村憲久「厚生労働白書刊行に当たって」)の施策の方向性とは、整合性が見られません。

 早期離職者は、若者をサポートし切れない体制の間隙、歯科技工士養成施設現場の時間的制約に対する政策当局の対応の遅れの犠牲者と言っても、過言ではありません。

 問題の背景を考えれば、「我が国の若者・女性の活躍推進のための提言」(平成25年5月19日)で示された「一般に、学生側は、職業意識の不足」した中、「学生の多くが、自らの適性・志向等が明確でないまま、就職活動が先行」することと同様に、高校卒業時の進学先として歯科技工士養成施設を選ぶ状況もあり、歯科技工士養成施設の教職員が負担する困難は、制度創設時と比し、質的な変化を来している。これもまた、歯科技工士養成施設に求められる現在の若者に対応したきめ細かな対応のための修業年限の必要性の傍証となる。

 「歯科口腔保健の推進に関する法律」の目的である歯科口腔保健を総合的に推進していくための責務を持つ歯科専門職としての歯科技工士には、技術水準の確保を担保するために、3年制以上への修業年限延長の早期の移行実現が望まれます。

 「若い人々の希望につながる投資」(田村憲久労働大臣、同書)、若者がチャレンジできる施策の早急なる展開が必要です。

 画竜に点睛を、お願いいたします。

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