『日本歯技』12月号 2015年11月20日発行 第558号
「歯科技工士の杜」
第1回 国の補助金、助成金等を活用し、歯科技工所経営の合理化・適正化を考えよう
―「ものづくり補助金」を中心に―
一般社団法人埼玉県歯科技工士会所属 野島 正美
人口減少社会を迎えた日本が、その経済的活力を維持し、国民経済の安定を図っていくため、国は様々な制度政策を用意している。
わたしたちの歯科技工所経営においても、国の政策目的に合致する用途等については、利用可能な補助金、助成金等があります。これらの制度を学び、将来の自社と業界のあるべき姿を見据えながら、歯科技工所経営の合理化と健全化を図る必要があります。
しかし、経済情勢の変化や国の政策変更、会計年度による予算枠の制約、補正予算編成等により、その利用には、やや煩雑さを伴う場合もある。しかし、これらの制度を理解し、上手に利用することは、業界として、歯科技工所経営者としても必要なことと思われます。
今月から2回にわたり、みなさんと考えて行きたいと思います。
補助金を考える上で次の3つのことに注意し、積極的に情報を集めて、有効に活用する必要があります。
① それぞれの補助金ごとに目的と仕組みがあります。補助金は、国のさまざまな政策ごとに、各省庁からいろいろなジャンルで募集されています。それぞれの補助金の「目的・趣旨」といった特徴をつかんで自分の事業とマッチする補助金を見つける必要があります。
② 補助を受けられるのは事業全部または一部の費用です。ただし、必ずしもすべての経費が交付される訳ではありません。事前に募集要項等で補助対象となる経費・補助の割合や上限額などを確認する必要があります。
③ 補助の有無やその額については審査があります。補助の有無・補助金額は「事前の審査」と「事後の検査」によって決定します。審査には「申請」が必要です。ポイントをわかりやすくまとめて申請する必要があります。補助金は後払い ( 精算払い ) です。事業を実施した後に報告書等の必要書類を提出して検査を受けた後、はじめて受け取ることができます。
それぞれの申請者が行いたい事業と、行政上の目的とが合ってその効果が期待できれば、交付を受けられる可能性があると言うことです。
そのためには、各自が積極的に情報を集めて、補助金の有効な活用方法を研究する必要があります。国等の公的な補助金、助成金等は、3.000種類以上あると言われており、1日に10種類以上増えているとも言われています。現在も新規にあるいは形を変え、名称を変えて継続しているものもあります。歯科技工所として利用可能な、制度を知るためには、専門家の助言も得ながら自ら、情報収集と整理を行うことが何より重要です。
以下に国の補助金、助成金等の代表的なものを掲げます。
1.厚生労働省関係
厚生労働省では、働く意欲のある人たちの安定した雇用の実現することを目指して、多くの制度を設けている。特に、若者、女性、高齢者、障害者など働く意欲のある全ての人々が、能力を発揮し、安心して働き、安定した生活を送ることができる社会の実現を目指している。
代表的な制度として、労働時間等に関する職場意識の改善を図ることを目的に、職場意識改善助成金を用意している。
支給対象となる取組としては、労務管理担当者に対する研修、労働者に対する研修、周知・啓発、外部専門家によるコンサルティング(社会保険労務士、中小企業診断士など)、就業規則・労使協定等の作成・変更(計画的付与制度の導入など)、労務管理用ソフトウェアの導入・更新 、労務管理用機器の導入・更新、デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新、テレワーク用通信機器の導入・更新、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新等がある。
図1 厚生労働省・都道府県労働局「職場意識改善助成金」のご案内
図2 厚生労働省・都道府県労働局「職場意識改善助成金」のご案内
この助成金制度は、国の補助金、助成金等の申請に取り組む上で、「入門」的なものと言われている。まずはこの助成金制度を研究し、申請書の作成等を行うことで、国の制度の仕組みや考え方を理解する足掛かりとなります。
この制度は、社会保険労務士等の援助を必要とする場合がありますが、申請者自身の理解か前提となります。
私たち歯科技工業界も、他業界と比し労働環境が劣ることを当たり前の様に考える前時代的な経営体質では、業界全体も個別の経営の継続は望めないことを肝に銘じ、制度を利用し職場環境の改善と雇用の安定を図る必要があります。
第2回に続く