[023/052] 161 - 参 - 本会議 - 2号
平成16年10月14日
○千葉景子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、小泉総理所信表明演説に対して、総理及び関係大臣に質問をいたします。
去る九月二十七日、小泉総理は自民党三役人事とともに第二次内閣の改造を行い、同日、新しい内閣が発足しました。
私たち民主党は、特に参議院の我が会派は、新しく当選したフレッシュで力強い仲間を加え、参議院選挙後に開かれる初めての本格的な国会に向け、多くの有権者の政権交代を期待する声を背に、論争のしがいがある大臣が任命され、真正面から論戦を闘わせることができるものと手ぐすね引いて待ち構えておりました。
しかし、今般の閣僚、党三役の顔ぶれを見る限り、民間人の登用はゼロ、女性閣僚もたった二人、大変失礼ではありますが、新鮮味のない顔ぶれでした。これまで、パフォーマンスとはいえ、サプライズ人事で話題を提供し、国民の耳目を集めていた勢いは完全に影を潜めています。
その中で、特に驚いたのは武部幹事長という人事です。武部氏については、郵政民営化に積極的で、首相に忠実との評がありますが、BSE問題の真相究明にふたをしたこと、感染源の究明はそんなに大きな問題かとの暴言を吐いたり、農水大臣として数々の失政を犯した人物として有名であり、本院では問責により厳しく追及されたことは記憶に新しいところです。悪夢のサプライズと評する声もあります。
その上、山崎元自民党幹事長と川口前外相を首相補佐官に任命したことも、何を目的とした人事なのか、訳が分かりません。総理の単なる話し相手、食事相手だとやゆする声も聞こえます。それとも、首相直属の外交担当として任命したのでしょうか。だとすると、外相との二元外交になりかねません。総理の真意はどこにあるのか、お答えください。盟友山崎氏の政界復帰を手助けしようというのでしょうか。
ところで、小泉総理は新内閣を郵政民営化実現内閣と称し意気込んでおられるようですが、有権者の郵政改革に寄せる期待は高くありません。先月二十九日の朝日新聞の世論調査では、新内閣で一番力を入れてほしい課題は、年金・福祉問題が五二%で一番多く、景気・雇用を入れると八割の人が年金と景気問題の解決を望んでおり、郵政改革を期待する声はわずか二%にとどまっております。
結局、今回の人事は、郵政改革の名の下にいわゆる中二階と言われる人を排除し、橋本派を徹底的に封じ込める党内抗争にすぎず、国民には全く背を向けたものと言わざるを得ません。このような内閣で国内外の山積する諸問題に対応することができるのか、国民の不安を一層高め、諸外国の信頼を失うだけではないかと考えますが、総理の認識をお伺いいたします。
今年は台風の影響により、各地で記録的な大雨が降り、甚大な被害がもたらされています。亡くなられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた多くの皆様にお見舞いを申し上げます。また、復旧に当たっておられる方々、全国から支援に駆け付けておられるボランティアなど、関係者の皆様に心から敬意を表します。
民主党は、各被災地に調査団を派遣し、被害状況の把握及び現地の方々からの意見聴取に努めてまいりました。それに基づいてお伺いいたします。
第一に、今年は台風が連続して来襲したため被害も複合的に生じており、激甚災害指定に当たってはそのような状況も考慮に入れるべきこと、第二に、住宅は生活の基盤でもあり、被災者生活再建支援法による支援対象に住宅本体部分への再建支援を含める改正を行うべきことです。このたびの一連の台風被害等の状況を見ると、私有財産である住宅に公的支援はできないなどとしゃくし定規に言っている場合ではありません。小泉総理から被災者の方々も納得できるような御答弁をお願いいたします。
さて、イラク問題につきましては同僚議員から後日詳しい質問がありますので、私からは、総理が突然力を入れ始めた国連安保理入りについて質問させていただきます。
たしか、小泉総理は、日本の国連安保理常任理事国入りには独り消極姿勢を貫いておられたのではないでしょうか。変心したのでしょうか。小泉総理の進める国連安保理入りは米国の票を一票増やすだけとの陰口もありますが、将来を展望したきちっとした戦略があるのでしょうか。私には、日朝国交正常化を急いだものの拉致問題の解決が成らず、とんざしてしまって、矛先を変えただけと思われて仕方がありません。
民主党も国連常任理事国入りに関しては、周辺国や世論の支持を前提に積極的に取り組む決意を表明させていただいております。しかし、小泉総理からは環境作りへの努力の姿勢は全く感じられません。例えば、過去の戦争で日本が国際法に違反する重大な人権侵害を加えたアジア諸国民と真の和解を達成し、アジア諸国に歓迎される環境を作る必要がありますが、どうでしょう。総理が靖国神社参拝に固執されている限り、中国からの賛同はなかなか得られそうにありません。
国連の活動を国民が十分に知り得る状況を作るためには、ドイツでは既に実現されておりますが、国連のホームページに日本語版を載せるということはできないでしょうか。また、人権保障なくして平和はあり得ません。国連人権高等弁務官からの任意拠出金の要請に積極的にこたえ、日本の姿勢を示すべきではないでしょうか。
これらの点について、具体的にお考えを示していただきたいと思います。総理、外務大臣の御答弁を求めます。
また、常任理事国入りについて最も重要なことは、常任理事国として何をするかなのです。核保有国や他の理事国とは異なった観点から、国際の平和と安全の維持に積極的に関与していくということが求められます。しかし、小泉総理の言動からは、安保理常任理事国に入って何をしたいかではなく、常任理事国入りが自己目的化しているとしか見受けられません。
改めて、小泉総理から、日本が常任理事国入りを目指す目的を明確にお示しいただきたい。
次に、米軍の再編問題について伺います。
米側の提案や日本側からの逆提案など様々な案がまことしやかに報道をにぎわすばかりで、国会や国民に情報が知らされないままに事が進んでいるのは問題です。また、国内の米軍基地の整理統合案や司令部機能の移転などの案も取りざたされていますが、具体的内容が明確に知らされず、小泉総理に至っては、米軍基地の移転先の対象が、ある日は国内だったり、ある日は海外だったり、その日によって言うことが違う有様です。基地を抱える自治体は困惑しています。米軍の再編問題は国内へ直接影響する問題でもあるからです。
小泉総理、報道によれば、米側から非公式ではありますが、再編についての提案があったようにも聞いております。今後どのように対応していくのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
さきの沖縄の米軍ヘリ墜落事件は、かねてより沖縄に偏在する米軍基地の危険性が改めて浮き彫りになりましたが、その後にも戦闘機の接触事故が生ずるなど、沖縄県民の怒りと不信感を増幅しています。
神奈川県においても、この夏、米軍ヘリコプターの二百発入り弾薬箱が住宅街に落下したり、米軍ヘリの緊急着陸があるなど、事故やトラブルが相次いでおります。米軍基地のある地域では、沖縄県同様、住民が危険と隣り合わせの不安な生活を強いられているのです。
この間、事故捜査の在り方をめぐって町村外務大臣や小池沖縄北方担当大臣は、運用の改善でお茶を濁そうとされていますが、そもそも運用によって日米で合同捜査ができるにもかかわらず、米軍の裁量で拒否されているような実態なのです。運用では限界があり、地位協定本体の見直し以外、根本的な解決策はないと考えますが、小泉総理から、地位協定の見直しについて今後の方針をお答えいただきたい。
次に、日本歯科医師連盟が自民党の最大派閥である平成研究会に対して一億円のやみ政治献金を行った事件について伺います。
東京地検特捜部は、平成研の滝川会計責任者を政治資金規正法違反の罪で起訴したことに続き、先月二十六日、同研究会の会長代理として指示者の立場にあった村岡兼造元官房長官を在宅のまま起訴いたしました。
しかし、実際に赤坂の料亭で一億円の小切手を受領したとされる橋本元首相、同席されていた青木幹雄自民党参議院議員会長、野中広務自民党元幹事長ら旧橋本派幹部が起訴見送りとなったことは到底納得がいきません。
実際に一億円の小切手を受け取ったとされる橋本元首相は、日本歯科医師会前会長の臼田被告と料亭で会った事実は認めながら、一億円の政治献金の受領は記憶にないと言い張っておられます。また、その場に同席された青木さん、そして野中氏も記憶にないと言い張っておられます。一億円という巨額の献金について、事実関係は何一つ明らかになっておらず、真相がやみの中に葬られてしまうようなことがあれば、政治に対する信頼の回復など到底不可能です。
さらに、日歯連からの献金をめぐりましては、旧橋本派のほかに自民党の一派閥、現職衆議院議員九名が政治資金収支報告書を訂正しており、更に重大な疑惑が浮上しています。
それは、日歯連側からの現職の自民党の国会議員に三千万円の現金提供の申出がされたのに対し、自民党事務局が、政治資金団体である国民政治協会を迂回して、各議員に申出どおりの金額を通常献金として提供したのではないかという疑惑であります。
このような手法を使えば、たとえ賄賂であっても党本部を経由することで浄財を装うことができるわけであり、政治資金の流れを国民にありのままに示すという政治資金規正法の趣旨をねじ曲げていることは明白であります。このような政治資金規正法の脱法行為は公然の秘密だと言われており、自民党元宿事務局長の名前を取って元宿システムと呼ばれていたとも言われています。
元々、政治資金規正法をめぐっては、平成四年九月に金丸信元自民党副総裁が佐川急便元社長から五億円を受け取り起訴された事件以来、多くの自民党議員が同法違反で起訴されており、今回の事件で、またもや同党における政治と業界の癒着の根深さをうかがい知ることになりました。
ところが、自民党はこのような迂回献金システム自体があったことを否定しているばかりか、このようなシステムを禁止する政治資金規正法の改正ではなく、党の支部や国会議員の資金団体の収支報告書への残高証明の義務付けや、政治資金を銀行振り込みで受け取ることを党の内規で新たに規定するという程度でお茶を濁そうとしております。
今こそ、迂回献金の手法等、真相を明らかにし、国民の政治に対する不信を正すためには、関与したとされる人たちは、国会の場を介し、証人等の形で国民に説明責任を果たすべきです。自民党総裁としての総理のリーダーシップに懸かっていると考えますが、いかがですか、お答えください。
また、迂回献金システムの禁止、罰則の強化を含む政治資金規正法の改正強化が不可欠と考えますが、総理の見解を伺います。
小泉総理は、景気は堅調に回復していると述べられ、あたかも小泉構造改革なるものの成果であるかのように自画自賛しておられます。しかし、実情は、最初の二年間で景気をどん底に落とし、そこからはい上がる過程を景気回復と称しているだけであり、正にマッチポンプのような論法と言わざるを得ません。
その小泉経済失政の最たるものは、企業も個人も、そして地域も勝ち組と負け組に二極分化し、今や二つの日本ともいうべき経済構造になってしまったことでしょう。大企業が好調な業績を上げる一方で、中小企業はぎりぎりのリストラを強いられ、青息吐息の状態が続いています。サラリーマンの収入もどんどん減少し、さらには、正規雇用から非正規雇用に変えられたり、失業を余儀なくされたりしています。これらの結果、地域経済は景気回復と言うほどにはほど遠い苦境が続いています。
しかも、問題なのは、公平公正な市場における自由競争という我が国経済の根幹が侵されていることです。公平公正な競争の場が保障されているなら、それで敗れて退場するのもやむを得ないことかもしれません。しかし、負けたはずの大銀行、大企業が税金を使って救済され、本来ならその努力を評価されるべきはずの中小企業が切り捨てられる。これが公平公正な競争を標榜する小泉構造改革なるものの正体なのです。
総理はこのような結果を招いた責任をどうお考えなのでしょうか、お答えください。
また、民主党は、我が国は、中間層の厚みがある社会、公平公正な市場における自由競争が保障される社会であるべきだと考えておりますが、総理は別の考え方をお持ちなのでしょうか、答弁を求めます。
次に、地域経済の問題です。
さきに指摘したように、経済構造の二極化により、地域経済の疲弊はますます深刻化しているのが実情であります。
地域経済の回復には、国と地方の役割分担を改めて見直すとともに、それぞれの地域の実情と特徴を生かした施策を推進していくことが求められますが、地域活性化の切り札と言われた構造改革特区も、中央省庁の既得権益保持、全国一律施策への執着があってほとんど進んでおりません。沖縄名護の金融経済特区のように、特区は認められたものの、その後のアフターケアが伴わず、とんざしている例も出始めています。
構造改革特区の実効性を今後どう高めていくのか、政府の方針を伺います。
次に、地方分権について伺います。
地方分権の推進は、本来、国と地方の関係を見直し、無駄な公共事業や補助金漬け行政を生み出してきた中央集権的な官僚政治、利益誘導政治を打破するということで、我が国の構造改革において最も重要な位置を占める政策であるはずです。
しかし、小泉総理の地方にできることは地方にの掛け声もむなしく、平成十六年度の三位一体改革は国の財政再建が優先され、地方分権の名の下に地方へ痛みを押し付ける改革に終わってしまいました。国と地方のあるべき姿が示されることもなく、税源移譲が先送りされたままに、約一兆円の国庫補助負担金の削減と一・二兆円の地方交付税の総額抑制が行われ、それに対して地方へ暫定的に移譲されたのは、所得譲与税四千二百四十九億円と税源移譲予定交付金の二千三百九億円、合わせて六千五百五十八億円にすぎませんでした。さらに、これらの決定が年末にまでもつれ込んだことにより、地方財政は混乱に陥りました。
まず初めに、総理、平成十六年度の三位一体改革が地方自治体に与えた影響についての総括を伺います。御答弁ください。
三位一体改革に関するこのような欠陥と不手際に対する全国各地からの批判を受け、政府は、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太方針二〇〇四において、平成十八年度までの三位一体改革の全体像を今年の秋までに明らかにすることを明記するとともに、おおむね三兆円規模の税源移譲を目指すことが盛り込まれました。地方からの批判にこたえるべく盛り込まれたと聞きますが、これで果たして税源移譲が実現されるのか、甚だ疑問であります。なぜ明確に三兆円の税源移譲を行うとストレートに言えないのでしょう。総理の見解を伺います。
そもそも平成十八年までの改革では、真の地方分権にはほど遠く、国から地方へが聞いてあきれます。まさか、この三年間の三位一体改革をもって地方分権は終わりということではないでしょう。平成十九年度以降の分権改革をどうするのか、お答えください。
民主党は、不必要に使途を制限し、地方自治体を縛っている補助金約二十・四兆円のうち約十八兆円を廃止し、大幅に税財源を移譲する地方分権改革案を提案してまいりました。補助金を削減すると同時に所得税から個人住民税へ五・五兆円を移譲することで、現在三対二である国と地方の税源配分を一対一とします。さらに、約十二兆円をまちづくり、教育、社会保障、農業・環境、地域経済という五つの行政分野に大ぐくりした上で、地方自治体へ一括交付金として交付することを提案しています。その結果、約十八兆円を地方がそれぞれの判断で自由に使えるようになります。このぐらい大胆な税財源の移譲なくしては地方分権は進みません。総理、この考え方に賛同されますか、お答えください。
さて、小泉総理は郵政民営化を改革の本丸と位置付け、去る九月十日に郵政民営化の基本方針を閣議決定しましたが、基本方針といいながら何のための民営化か、どんな民営化になるのかという基本的なことが全く明確ではなく、民営化という総理の絶叫だけが独り歩きしている感が否めません。一体、総理の叫ぶ民営化というのはどんなものでしょう。単に株式会社化するということを意味するのでしょうか。それとも、職員の身分を非公務員化するということが民営化の意味なのでしょうか。あるいは、民有、民営とはどういう意味なのでしょうか。民営化の意味について、総理に明確な説明を求めます。
そもそも、郵政事業の改革を考えるときには次の三点が重要ポイントです。第一は、郵政のユニバーサルサービスなど、国民生活のインフラ部分がより良いものになること。第二は、民間の公正な競争を促進する改革であること。第三は、特殊法人に無駄な金が流れる財投システムの改革になることです。この三点はどのように満足されるのでしょうか。
とりわけ国民にとっては、改革の結果、生活にとってマイナスになるのでは納得ができません。例えば、現在、都市部はともかく、地方では農協も含めて金融拠点が減少しているという現象、事実が存在いたします。郵便貯金や郵便保険についてはユニバーサルサービスの提供義務も明記されておらず、過疎地域では決済口座すら持てない状況が生じるのではないかとの危惧が強まっております。総理、どうこたえるつもりなのか、御答弁願います。
また、特殊法人の無駄と非効率に切り込むためには財投債を原則廃止するくらいのドラスチックな財投システムの改革が不可欠です。改革というなら、この部分こそが本丸であるはずです。総理の見解を伺います。
次に、人権問題についてお尋ねします。
社会に残る様々な差別を解消することは政治に課せられた重要な使命です。さきの通常国会で障害者基本法の改正が成立し、障害を理由に差別してはならない旨がようやく基本理念に盛り込まれました。この理念を実効性あるものにし、すべての障害者に完全参加と平等を保障し、具体的な差別を禁止するには、民主党がマニフェストでうたった障がい者差別禁止法の制定は欠かせないと考えます。ほかにも、年齢を理由とした就職差別を禁止する年齢差別禁止法や法務省から独立した人権委員会の設置などを盛り込んだ人権侵害の救済に関する法律など、民主党は今後も差別解消のための法律制定や人権教育、啓発促進にも取り組んでまいります。
差別の解消、人権問題に関する政府の具体的な取組方針をお聞かせいただきたい。総理の答弁を求めます。
関連して、外国人の人権について伺います。
現在の日本には、朝鮮や台湾などの旧植民地出身者とその子孫、移住労働者とその家族などの外国人が多数居住し生活しております。総理は外国人といえば旅行者と観光にしか思いが至らないようですが、外国人登録者数だけ見ても二〇〇三年末には百九十一万五千三十人に達し、十年前と比べて四五%の増加、日本の総人口に占める割合も一・五%、出身地の数は百八十六か国に上っています。このように我が国社会の多民族、多文化への傾向は急速に進展しています。
ところが、戦後日本の外国人に関する対応は、出入国管理法や外国人登録法などにより外国人を管理することを主眼としており、現在に至るまで人権や教育、社会保障などに関しての施策はほとんど講じられてきませんでした。そのため、外国人に対する差別が公然と行われたり、子供たちが教育の機会を得られなかったり、社会保障が受けられず不安定な生活を余儀なくされるなど問題が生じております。
そのような中、現在、東アジア諸国との経済連携協定、EPA交渉の中で、相手国から看護師、介護労働者等の受入れが要求されており、さらに、少子化の急速な進展の中で、人材確保のため外国人の受入れ拡大も選択肢の一つと考えられるようになってきています。
今後一層強まる外国人を含む多民族、多文化共生の社会を考えるとき、外国人の人権を保障し、我が国で人間らしく生きられるようにするための施策が必要です。まず、そのための基本理念を示す法律、言わば外国人人権基本法の制定などが必要だと考えますが、総理の見解を伺います。
次に、日本国内でも増加している女性や子供を取引する人身売買、トラフィッキングについてお尋ねします。
人身取引は決して許されることのない人権侵害であることは言うまでもなく、早急な対策が必要です。複雑化、深刻化している国際的な組織犯罪を厳しく処罰することはもちろんのことですが、その被害者である女性や子供を保護、支援する仕組みが十分でないことも問題です。
民主党では、人身取引という犯罪に対する罰則の強化や被害者の保護、救済、支援を柱とする包括的な法律の整備が必要だと考えております。
そこでお尋ねしますが、日本における人身取引の実態について総理はどのように認識されているのか、答弁を求めます。また、被害者保護、支援を含めた今後の政府の対応方針について、総理並びに法務大臣、厚生労働大臣の見解を求めます。
次に、いわゆる選択的夫婦別姓にかかわる民法改正案について伺います。
この間、民主党はこの民法改正案を三野党共同で提出し続けておりますが、十分な法案審議もされずに現在に至っております。是非とも国会での実質的な審議がなされ、早期に改正へ向け大きく踏み出すことを期待しますが、総理及び法務大臣のお考えを伺います。
司法制度改革について伺います。
政府は、司法制度改革の理念として、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続の下、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築することを掲げています。
しかし、政府提出の民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案、いわゆる合意による弁護士報酬敗訴者負担法案は、国民の裁判利用を促進させるとの改革の理念に沿うものとは言えず、かえって法改正により消費者契約や労働契約、フランチャイズ契約などに敗訴者負担条項が盛り込まれることが助長され、市民の裁判利用をちゅうちょさせてしまうことが懸念されております。弁護士会や労働組合、消費者団体からも、このままでは廃案にすべきだと強く批判されています。
司法制度改革は、数ある改革と言われるものの中で最も成果が見られた改革だと評価されています。しかし、これまで司法改革推進本部本部長でありながら、総理からは司法制度改革についてほとんど発言は聞いたことがございません。この際、改革の本家でもある総理、本領を発揮し、司法制度改革の本来の趣旨にのっとり、法案の撤回あるいは内容の見直しの決断をするときだと思いますが、総理の答弁を求めます。
さて、政府内で改革推進機能を果たしてきた司法制度改革推進本部が、二〇〇一年十二月の設置から三年間の任期を終え、仕上げの時期を迎えています。しかし、制度は作ったとはいえ、改革を着実に定着、展開させるのはこれからです。したがって、その推進力となる後継機関がどこにどのような形で作られるかが極めて重要です。この点に関する総理のお考えをお聞きしたい。
最後に、総理の所信は、お得意の故事からのフレーズの引用と高校野球とオリンピックを引き合いにした精神論ばかりが目立ち、残念ながら我が国が置かれている状況への危機感を感じさせる御自身の言葉や説得力ある内容はみじんもありませんでした。年間三万人以上の人々が自ら命を絶っているという我が国の現実をどのように認識されているのでしょうか。
平成16年10月14日
○千葉景子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、小泉総理所信表明演説に対して、総理及び関係大臣に質問をいたします。
去る九月二十七日、小泉総理は自民党三役人事とともに第二次内閣の改造を行い、同日、新しい内閣が発足しました。
私たち民主党は、特に参議院の我が会派は、新しく当選したフレッシュで力強い仲間を加え、参議院選挙後に開かれる初めての本格的な国会に向け、多くの有権者の政権交代を期待する声を背に、論争のしがいがある大臣が任命され、真正面から論戦を闘わせることができるものと手ぐすね引いて待ち構えておりました。
しかし、今般の閣僚、党三役の顔ぶれを見る限り、民間人の登用はゼロ、女性閣僚もたった二人、大変失礼ではありますが、新鮮味のない顔ぶれでした。これまで、パフォーマンスとはいえ、サプライズ人事で話題を提供し、国民の耳目を集めていた勢いは完全に影を潜めています。
その中で、特に驚いたのは武部幹事長という人事です。武部氏については、郵政民営化に積極的で、首相に忠実との評がありますが、BSE問題の真相究明にふたをしたこと、感染源の究明はそんなに大きな問題かとの暴言を吐いたり、農水大臣として数々の失政を犯した人物として有名であり、本院では問責により厳しく追及されたことは記憶に新しいところです。悪夢のサプライズと評する声もあります。
その上、山崎元自民党幹事長と川口前外相を首相補佐官に任命したことも、何を目的とした人事なのか、訳が分かりません。総理の単なる話し相手、食事相手だとやゆする声も聞こえます。それとも、首相直属の外交担当として任命したのでしょうか。だとすると、外相との二元外交になりかねません。総理の真意はどこにあるのか、お答えください。盟友山崎氏の政界復帰を手助けしようというのでしょうか。
ところで、小泉総理は新内閣を郵政民営化実現内閣と称し意気込んでおられるようですが、有権者の郵政改革に寄せる期待は高くありません。先月二十九日の朝日新聞の世論調査では、新内閣で一番力を入れてほしい課題は、年金・福祉問題が五二%で一番多く、景気・雇用を入れると八割の人が年金と景気問題の解決を望んでおり、郵政改革を期待する声はわずか二%にとどまっております。
結局、今回の人事は、郵政改革の名の下にいわゆる中二階と言われる人を排除し、橋本派を徹底的に封じ込める党内抗争にすぎず、国民には全く背を向けたものと言わざるを得ません。このような内閣で国内外の山積する諸問題に対応することができるのか、国民の不安を一層高め、諸外国の信頼を失うだけではないかと考えますが、総理の認識をお伺いいたします。
今年は台風の影響により、各地で記録的な大雨が降り、甚大な被害がもたらされています。亡くなられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた多くの皆様にお見舞いを申し上げます。また、復旧に当たっておられる方々、全国から支援に駆け付けておられるボランティアなど、関係者の皆様に心から敬意を表します。
民主党は、各被災地に調査団を派遣し、被害状況の把握及び現地の方々からの意見聴取に努めてまいりました。それに基づいてお伺いいたします。
第一に、今年は台風が連続して来襲したため被害も複合的に生じており、激甚災害指定に当たってはそのような状況も考慮に入れるべきこと、第二に、住宅は生活の基盤でもあり、被災者生活再建支援法による支援対象に住宅本体部分への再建支援を含める改正を行うべきことです。このたびの一連の台風被害等の状況を見ると、私有財産である住宅に公的支援はできないなどとしゃくし定規に言っている場合ではありません。小泉総理から被災者の方々も納得できるような御答弁をお願いいたします。
さて、イラク問題につきましては同僚議員から後日詳しい質問がありますので、私からは、総理が突然力を入れ始めた国連安保理入りについて質問させていただきます。
たしか、小泉総理は、日本の国連安保理常任理事国入りには独り消極姿勢を貫いておられたのではないでしょうか。変心したのでしょうか。小泉総理の進める国連安保理入りは米国の票を一票増やすだけとの陰口もありますが、将来を展望したきちっとした戦略があるのでしょうか。私には、日朝国交正常化を急いだものの拉致問題の解決が成らず、とんざしてしまって、矛先を変えただけと思われて仕方がありません。
民主党も国連常任理事国入りに関しては、周辺国や世論の支持を前提に積極的に取り組む決意を表明させていただいております。しかし、小泉総理からは環境作りへの努力の姿勢は全く感じられません。例えば、過去の戦争で日本が国際法に違反する重大な人権侵害を加えたアジア諸国民と真の和解を達成し、アジア諸国に歓迎される環境を作る必要がありますが、どうでしょう。総理が靖国神社参拝に固執されている限り、中国からの賛同はなかなか得られそうにありません。
国連の活動を国民が十分に知り得る状況を作るためには、ドイツでは既に実現されておりますが、国連のホームページに日本語版を載せるということはできないでしょうか。また、人権保障なくして平和はあり得ません。国連人権高等弁務官からの任意拠出金の要請に積極的にこたえ、日本の姿勢を示すべきではないでしょうか。
これらの点について、具体的にお考えを示していただきたいと思います。総理、外務大臣の御答弁を求めます。
また、常任理事国入りについて最も重要なことは、常任理事国として何をするかなのです。核保有国や他の理事国とは異なった観点から、国際の平和と安全の維持に積極的に関与していくということが求められます。しかし、小泉総理の言動からは、安保理常任理事国に入って何をしたいかではなく、常任理事国入りが自己目的化しているとしか見受けられません。
改めて、小泉総理から、日本が常任理事国入りを目指す目的を明確にお示しいただきたい。
次に、米軍の再編問題について伺います。
米側の提案や日本側からの逆提案など様々な案がまことしやかに報道をにぎわすばかりで、国会や国民に情報が知らされないままに事が進んでいるのは問題です。また、国内の米軍基地の整理統合案や司令部機能の移転などの案も取りざたされていますが、具体的内容が明確に知らされず、小泉総理に至っては、米軍基地の移転先の対象が、ある日は国内だったり、ある日は海外だったり、その日によって言うことが違う有様です。基地を抱える自治体は困惑しています。米軍の再編問題は国内へ直接影響する問題でもあるからです。
小泉総理、報道によれば、米側から非公式ではありますが、再編についての提案があったようにも聞いております。今後どのように対応していくのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
さきの沖縄の米軍ヘリ墜落事件は、かねてより沖縄に偏在する米軍基地の危険性が改めて浮き彫りになりましたが、その後にも戦闘機の接触事故が生ずるなど、沖縄県民の怒りと不信感を増幅しています。
神奈川県においても、この夏、米軍ヘリコプターの二百発入り弾薬箱が住宅街に落下したり、米軍ヘリの緊急着陸があるなど、事故やトラブルが相次いでおります。米軍基地のある地域では、沖縄県同様、住民が危険と隣り合わせの不安な生活を強いられているのです。
この間、事故捜査の在り方をめぐって町村外務大臣や小池沖縄北方担当大臣は、運用の改善でお茶を濁そうとされていますが、そもそも運用によって日米で合同捜査ができるにもかかわらず、米軍の裁量で拒否されているような実態なのです。運用では限界があり、地位協定本体の見直し以外、根本的な解決策はないと考えますが、小泉総理から、地位協定の見直しについて今後の方針をお答えいただきたい。
次に、日本歯科医師連盟が自民党の最大派閥である平成研究会に対して一億円のやみ政治献金を行った事件について伺います。
東京地検特捜部は、平成研の滝川会計責任者を政治資金規正法違反の罪で起訴したことに続き、先月二十六日、同研究会の会長代理として指示者の立場にあった村岡兼造元官房長官を在宅のまま起訴いたしました。
しかし、実際に赤坂の料亭で一億円の小切手を受領したとされる橋本元首相、同席されていた青木幹雄自民党参議院議員会長、野中広務自民党元幹事長ら旧橋本派幹部が起訴見送りとなったことは到底納得がいきません。
実際に一億円の小切手を受け取ったとされる橋本元首相は、日本歯科医師会前会長の臼田被告と料亭で会った事実は認めながら、一億円の政治献金の受領は記憶にないと言い張っておられます。また、その場に同席された青木さん、そして野中氏も記憶にないと言い張っておられます。一億円という巨額の献金について、事実関係は何一つ明らかになっておらず、真相がやみの中に葬られてしまうようなことがあれば、政治に対する信頼の回復など到底不可能です。
さらに、日歯連からの献金をめぐりましては、旧橋本派のほかに自民党の一派閥、現職衆議院議員九名が政治資金収支報告書を訂正しており、更に重大な疑惑が浮上しています。
それは、日歯連側からの現職の自民党の国会議員に三千万円の現金提供の申出がされたのに対し、自民党事務局が、政治資金団体である国民政治協会を迂回して、各議員に申出どおりの金額を通常献金として提供したのではないかという疑惑であります。
このような手法を使えば、たとえ賄賂であっても党本部を経由することで浄財を装うことができるわけであり、政治資金の流れを国民にありのままに示すという政治資金規正法の趣旨をねじ曲げていることは明白であります。このような政治資金規正法の脱法行為は公然の秘密だと言われており、自民党元宿事務局長の名前を取って元宿システムと呼ばれていたとも言われています。
元々、政治資金規正法をめぐっては、平成四年九月に金丸信元自民党副総裁が佐川急便元社長から五億円を受け取り起訴された事件以来、多くの自民党議員が同法違反で起訴されており、今回の事件で、またもや同党における政治と業界の癒着の根深さをうかがい知ることになりました。
ところが、自民党はこのような迂回献金システム自体があったことを否定しているばかりか、このようなシステムを禁止する政治資金規正法の改正ではなく、党の支部や国会議員の資金団体の収支報告書への残高証明の義務付けや、政治資金を銀行振り込みで受け取ることを党の内規で新たに規定するという程度でお茶を濁そうとしております。
今こそ、迂回献金の手法等、真相を明らかにし、国民の政治に対する不信を正すためには、関与したとされる人たちは、国会の場を介し、証人等の形で国民に説明責任を果たすべきです。自民党総裁としての総理のリーダーシップに懸かっていると考えますが、いかがですか、お答えください。
また、迂回献金システムの禁止、罰則の強化を含む政治資金規正法の改正強化が不可欠と考えますが、総理の見解を伺います。
小泉総理は、景気は堅調に回復していると述べられ、あたかも小泉構造改革なるものの成果であるかのように自画自賛しておられます。しかし、実情は、最初の二年間で景気をどん底に落とし、そこからはい上がる過程を景気回復と称しているだけであり、正にマッチポンプのような論法と言わざるを得ません。
その小泉経済失政の最たるものは、企業も個人も、そして地域も勝ち組と負け組に二極分化し、今や二つの日本ともいうべき経済構造になってしまったことでしょう。大企業が好調な業績を上げる一方で、中小企業はぎりぎりのリストラを強いられ、青息吐息の状態が続いています。サラリーマンの収入もどんどん減少し、さらには、正規雇用から非正規雇用に変えられたり、失業を余儀なくされたりしています。これらの結果、地域経済は景気回復と言うほどにはほど遠い苦境が続いています。
しかも、問題なのは、公平公正な市場における自由競争という我が国経済の根幹が侵されていることです。公平公正な競争の場が保障されているなら、それで敗れて退場するのもやむを得ないことかもしれません。しかし、負けたはずの大銀行、大企業が税金を使って救済され、本来ならその努力を評価されるべきはずの中小企業が切り捨てられる。これが公平公正な競争を標榜する小泉構造改革なるものの正体なのです。
総理はこのような結果を招いた責任をどうお考えなのでしょうか、お答えください。
また、民主党は、我が国は、中間層の厚みがある社会、公平公正な市場における自由競争が保障される社会であるべきだと考えておりますが、総理は別の考え方をお持ちなのでしょうか、答弁を求めます。
次に、地域経済の問題です。
さきに指摘したように、経済構造の二極化により、地域経済の疲弊はますます深刻化しているのが実情であります。
地域経済の回復には、国と地方の役割分担を改めて見直すとともに、それぞれの地域の実情と特徴を生かした施策を推進していくことが求められますが、地域活性化の切り札と言われた構造改革特区も、中央省庁の既得権益保持、全国一律施策への執着があってほとんど進んでおりません。沖縄名護の金融経済特区のように、特区は認められたものの、その後のアフターケアが伴わず、とんざしている例も出始めています。
構造改革特区の実効性を今後どう高めていくのか、政府の方針を伺います。
次に、地方分権について伺います。
地方分権の推進は、本来、国と地方の関係を見直し、無駄な公共事業や補助金漬け行政を生み出してきた中央集権的な官僚政治、利益誘導政治を打破するということで、我が国の構造改革において最も重要な位置を占める政策であるはずです。
しかし、小泉総理の地方にできることは地方にの掛け声もむなしく、平成十六年度の三位一体改革は国の財政再建が優先され、地方分権の名の下に地方へ痛みを押し付ける改革に終わってしまいました。国と地方のあるべき姿が示されることもなく、税源移譲が先送りされたままに、約一兆円の国庫補助負担金の削減と一・二兆円の地方交付税の総額抑制が行われ、それに対して地方へ暫定的に移譲されたのは、所得譲与税四千二百四十九億円と税源移譲予定交付金の二千三百九億円、合わせて六千五百五十八億円にすぎませんでした。さらに、これらの決定が年末にまでもつれ込んだことにより、地方財政は混乱に陥りました。
まず初めに、総理、平成十六年度の三位一体改革が地方自治体に与えた影響についての総括を伺います。御答弁ください。
三位一体改革に関するこのような欠陥と不手際に対する全国各地からの批判を受け、政府は、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太方針二〇〇四において、平成十八年度までの三位一体改革の全体像を今年の秋までに明らかにすることを明記するとともに、おおむね三兆円規模の税源移譲を目指すことが盛り込まれました。地方からの批判にこたえるべく盛り込まれたと聞きますが、これで果たして税源移譲が実現されるのか、甚だ疑問であります。なぜ明確に三兆円の税源移譲を行うとストレートに言えないのでしょう。総理の見解を伺います。
そもそも平成十八年までの改革では、真の地方分権にはほど遠く、国から地方へが聞いてあきれます。まさか、この三年間の三位一体改革をもって地方分権は終わりということではないでしょう。平成十九年度以降の分権改革をどうするのか、お答えください。
民主党は、不必要に使途を制限し、地方自治体を縛っている補助金約二十・四兆円のうち約十八兆円を廃止し、大幅に税財源を移譲する地方分権改革案を提案してまいりました。補助金を削減すると同時に所得税から個人住民税へ五・五兆円を移譲することで、現在三対二である国と地方の税源配分を一対一とします。さらに、約十二兆円をまちづくり、教育、社会保障、農業・環境、地域経済という五つの行政分野に大ぐくりした上で、地方自治体へ一括交付金として交付することを提案しています。その結果、約十八兆円を地方がそれぞれの判断で自由に使えるようになります。このぐらい大胆な税財源の移譲なくしては地方分権は進みません。総理、この考え方に賛同されますか、お答えください。
さて、小泉総理は郵政民営化を改革の本丸と位置付け、去る九月十日に郵政民営化の基本方針を閣議決定しましたが、基本方針といいながら何のための民営化か、どんな民営化になるのかという基本的なことが全く明確ではなく、民営化という総理の絶叫だけが独り歩きしている感が否めません。一体、総理の叫ぶ民営化というのはどんなものでしょう。単に株式会社化するということを意味するのでしょうか。それとも、職員の身分を非公務員化するということが民営化の意味なのでしょうか。あるいは、民有、民営とはどういう意味なのでしょうか。民営化の意味について、総理に明確な説明を求めます。
そもそも、郵政事業の改革を考えるときには次の三点が重要ポイントです。第一は、郵政のユニバーサルサービスなど、国民生活のインフラ部分がより良いものになること。第二は、民間の公正な競争を促進する改革であること。第三は、特殊法人に無駄な金が流れる財投システムの改革になることです。この三点はどのように満足されるのでしょうか。
とりわけ国民にとっては、改革の結果、生活にとってマイナスになるのでは納得ができません。例えば、現在、都市部はともかく、地方では農協も含めて金融拠点が減少しているという現象、事実が存在いたします。郵便貯金や郵便保険についてはユニバーサルサービスの提供義務も明記されておらず、過疎地域では決済口座すら持てない状況が生じるのではないかとの危惧が強まっております。総理、どうこたえるつもりなのか、御答弁願います。
また、特殊法人の無駄と非効率に切り込むためには財投債を原則廃止するくらいのドラスチックな財投システムの改革が不可欠です。改革というなら、この部分こそが本丸であるはずです。総理の見解を伺います。
次に、人権問題についてお尋ねします。
社会に残る様々な差別を解消することは政治に課せられた重要な使命です。さきの通常国会で障害者基本法の改正が成立し、障害を理由に差別してはならない旨がようやく基本理念に盛り込まれました。この理念を実効性あるものにし、すべての障害者に完全参加と平等を保障し、具体的な差別を禁止するには、民主党がマニフェストでうたった障がい者差別禁止法の制定は欠かせないと考えます。ほかにも、年齢を理由とした就職差別を禁止する年齢差別禁止法や法務省から独立した人権委員会の設置などを盛り込んだ人権侵害の救済に関する法律など、民主党は今後も差別解消のための法律制定や人権教育、啓発促進にも取り組んでまいります。
差別の解消、人権問題に関する政府の具体的な取組方針をお聞かせいただきたい。総理の答弁を求めます。
関連して、外国人の人権について伺います。
現在の日本には、朝鮮や台湾などの旧植民地出身者とその子孫、移住労働者とその家族などの外国人が多数居住し生活しております。総理は外国人といえば旅行者と観光にしか思いが至らないようですが、外国人登録者数だけ見ても二〇〇三年末には百九十一万五千三十人に達し、十年前と比べて四五%の増加、日本の総人口に占める割合も一・五%、出身地の数は百八十六か国に上っています。このように我が国社会の多民族、多文化への傾向は急速に進展しています。
ところが、戦後日本の外国人に関する対応は、出入国管理法や外国人登録法などにより外国人を管理することを主眼としており、現在に至るまで人権や教育、社会保障などに関しての施策はほとんど講じられてきませんでした。そのため、外国人に対する差別が公然と行われたり、子供たちが教育の機会を得られなかったり、社会保障が受けられず不安定な生活を余儀なくされるなど問題が生じております。
そのような中、現在、東アジア諸国との経済連携協定、EPA交渉の中で、相手国から看護師、介護労働者等の受入れが要求されており、さらに、少子化の急速な進展の中で、人材確保のため外国人の受入れ拡大も選択肢の一つと考えられるようになってきています。
今後一層強まる外国人を含む多民族、多文化共生の社会を考えるとき、外国人の人権を保障し、我が国で人間らしく生きられるようにするための施策が必要です。まず、そのための基本理念を示す法律、言わば外国人人権基本法の制定などが必要だと考えますが、総理の見解を伺います。
次に、日本国内でも増加している女性や子供を取引する人身売買、トラフィッキングについてお尋ねします。
人身取引は決して許されることのない人権侵害であることは言うまでもなく、早急な対策が必要です。複雑化、深刻化している国際的な組織犯罪を厳しく処罰することはもちろんのことですが、その被害者である女性や子供を保護、支援する仕組みが十分でないことも問題です。
民主党では、人身取引という犯罪に対する罰則の強化や被害者の保護、救済、支援を柱とする包括的な法律の整備が必要だと考えております。
そこでお尋ねしますが、日本における人身取引の実態について総理はどのように認識されているのか、答弁を求めます。また、被害者保護、支援を含めた今後の政府の対応方針について、総理並びに法務大臣、厚生労働大臣の見解を求めます。
次に、いわゆる選択的夫婦別姓にかかわる民法改正案について伺います。
この間、民主党はこの民法改正案を三野党共同で提出し続けておりますが、十分な法案審議もされずに現在に至っております。是非とも国会での実質的な審議がなされ、早期に改正へ向け大きく踏み出すことを期待しますが、総理及び法務大臣のお考えを伺います。
司法制度改革について伺います。
政府は、司法制度改革の理念として、国民がより容易に利用できるとともに、公正かつ適正な手続の下、より迅速、適切かつ実効的にその使命を果たすことができる司法制度を構築することを掲げています。
しかし、政府提出の民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案、いわゆる合意による弁護士報酬敗訴者負担法案は、国民の裁判利用を促進させるとの改革の理念に沿うものとは言えず、かえって法改正により消費者契約や労働契約、フランチャイズ契約などに敗訴者負担条項が盛り込まれることが助長され、市民の裁判利用をちゅうちょさせてしまうことが懸念されております。弁護士会や労働組合、消費者団体からも、このままでは廃案にすべきだと強く批判されています。
司法制度改革は、数ある改革と言われるものの中で最も成果が見られた改革だと評価されています。しかし、これまで司法改革推進本部本部長でありながら、総理からは司法制度改革についてほとんど発言は聞いたことがございません。この際、改革の本家でもある総理、本領を発揮し、司法制度改革の本来の趣旨にのっとり、法案の撤回あるいは内容の見直しの決断をするときだと思いますが、総理の答弁を求めます。
さて、政府内で改革推進機能を果たしてきた司法制度改革推進本部が、二〇〇一年十二月の設置から三年間の任期を終え、仕上げの時期を迎えています。しかし、制度は作ったとはいえ、改革を着実に定着、展開させるのはこれからです。したがって、その推進力となる後継機関がどこにどのような形で作られるかが極めて重要です。この点に関する総理のお考えをお聞きしたい。
最後に、総理の所信は、お得意の故事からのフレーズの引用と高校野球とオリンピックを引き合いにした精神論ばかりが目立ち、残念ながら我が国が置かれている状況への危機感を感じさせる御自身の言葉や説得力ある内容はみじんもありませんでした。年間三万人以上の人々が自ら命を絶っているという我が国の現実をどのように認識されているのでしょうか。