歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

山本 ゆき (著)  兄のランドセル―いのちの政治家山本孝史物語 [単行本]

2014年06月07日 | amazon.co.jp・リストマニア
がん対策と自殺対策の法制化貢献した山本孝史(たかし)議員の妻による評伝と闘病記 2014/6/7

By 歯職人

 参議院の本会議場での代表質問で、自らのがんを明らかにし鮮烈に命と政治の在り方を訴えた山本孝史議員の妻による評伝と闘病記である。
 政治家の評伝としては、妻の筆でありその業績や果たした役割については、未整理・未消化部分もあると思われるが、夫婦でがんと戦った2年間の闘病記とし、率直に誠実にその時間が記されている。
 山本孝史さんは、小学生だった実兄が交通事故死した記憶とその時の母の悲しみを胸に成長した。この兄の死を、一部癒してくれた小学生時代経験したキャンプ。このキャンプにおけるボランティアの大学生に憧れ、自身が立命館大学在学中に積極的なボランティア活動を行う。秋田大学の学生が呼びかけた交通遺児救済(進学の夢)のボランティア活動に参加し、卒業後には財団法人交通遺児育英会に就職するという人生を歩んだ。その活動の中で経験を積み重ね、縁を得て参議院議員(2期)、衆議院議員(2期)、民主党参議院幹事長、参議院財政金融委員長を歴任した。
 本書では、自殺者対策に取り組む中で、NPO法人ライフリンク代表・清水康之さんとの出会いや、肉親が自殺されたご家族や自殺未遂者、自殺予防活動の関係者など約150名の参加の参議院議員会館での「自殺予防シンポジウム」の開催に至る経過等詳しく記されている。
 2106年5月22日、参議院本会議の代表質問において、自らのがん闘病を公表。「がん対策基本法」と「自殺対策推進基本法」の早期成立を訴えた。(この様子は、youtubeに「あの国会議員を、覚えていますか 」と題してアップされている。)
 その「代表質問」の一部を下に引用する。
 理想の医療を目指された故今井澄先生の志を胸に、私事で恐縮ですが、私自身がん患者として、同僚議員を始め多くの方々の御理解、御支援をいただきながら国会活動を続け、本日、質問にも立たせていただいたことに心から感謝をしつつ、質問をいたします。
 (中略)
 そして、最後に、がん対策法の今国会での成立について、議場の皆さんにお願いをします。日本人の二人に一人はがんにかかる、三人に一人はがんで亡くなる時代になっています。今や、がんは最も身近な病気です。がん患者は、がんの進行や再発の不安、先のことが考えられないつらさなどと向き合いながら、身体的苦痛、経済的負担に苦しみながらも、新たな治療法の開発に期待を寄せつつ、一日一日を大切に生きています。私があえてがん患者と申し上げましたのも、がん対策基本法を成立させることが日本の本格的ながん対策の第一歩となると確信するからです。
 また、本院厚生労働委員会では、自殺対策の推進について全会一致で決議を行いました。私は、命を守るのが政治家の仕事だと思ってきました。がんも自殺も、共に救える命がいっぱいあるのに次々と失われているのは、政治や行政、社会の対策が遅れているからです。年間三十万人のがん死亡者、三万人を超える自殺者の命が一人でも多く救われるように、何とぞ議場の皆様の御理解と御協力をお願いいたします。
 この代表質問の後、国会はタイトな日程の中、「がん対策基本法」「自殺対策基本法」を成立させる。
 2007年12月22日午後11時50分、山本議員は、胸腺がんのため、癌研究会有明病院緩和ケア科で死去する。
 2008年1月12日、元厚生労働大臣尾辻秀久自由民主党参議院議員会長が、参議院本会議場にて山本たかし議員に対する哀悼演説を行った。その中で山本が自らの病を告白し、がん対策基本法の早期成立を訴えた2006年5月の参議院本会議での代表質問を引用し、「すべての人の魂を揺さぶった。今、その光景を思い浮かべ、万感胸に迫るものがある。あなたは社会保障の良心だった」「自民党にとって最も手ごわい政策論争の相手だった」とたたえ、「先生、きょうは外は雪です。寒くありませんか」と落涙しながら呼びかけ、その功績をたたえた。(この様子は、youtubeに「議会史に残る感動の名演説(前半)」「議会史に残る感動の名演説(後半)」と題してアップされている。)
 「いのちの政治家」と呼ばれた山本孝史議員を記憶に留める、国会における立法と議員活動のプロセスの一局面を知るために、一読したい一冊です。

http://www.amazon.co.jp/%E5%85%84%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%BB%E3%83%AB%E2%80%95%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%A1%E3%81%AE%E6%94%BF%E6%B2%BB%E5%AE%B6%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E5%AD%9D%E5%8F%B2%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E5%B1%B1%E6%9C%AC-%E3%82%86%E3%81%8D/dp/4021001913/ref=cm_lmf_tit_8

兄のランドセル―いのちの政治家山本孝史物語

山本 ゆき【著】

朝日新聞出版(2010/12発売)

サイズ B6判/ページ数 345p/高さ 20cm
商品コード 9784021001918
NDC分類 289.1

内容説明

自宅前で、兄亘彦がトラックにひかれた。その夜、兄は帰らぬ人となり、大人たちに抱えられて病院から自宅に戻った。5歳の孝史の脳裏に焼き付いたセピア色の光景。残された8歳の兄のランドセル。交通遺児たちの作文に出会い、亘彦の無念さが甦った大学3年の夏、孝史は理不尽な世の中に憤りを覚えた。「命を大切にする世の中」にしたい―孝史は起ち上がった。悲しみと向き合い続けて3年、妻が辿った山本孝史の58年。

目次

いのちの訴え
第1部 いのちへの思い(ボランティアへの目覚め;あしなが運動;政治家への助走 ほか)
第2部 “がん”と“使命”(いかに生きるか;言えなくてごめんね;いのちをかけていのちを守る ほか)
感謝の言葉

最新の画像もっと見る