小沢 昭一 (著) ものがたり芸能と社会 [ハードカバー]

小沢昭一さんの語り口で芸能の始まりから20世紀まで, 2010/8/23

By 歯職人

　あなたの小沢昭一体験の有無、そして小沢昭一から影響を受けた年齢・媒体によってこの本を手にする機会は限りなく少ないかもしれない。
　さりながら、出来れば図書館の蔵書でも良いので、一度手にして欲しい一冊です。
　本書の骨格は、放送大学での講義録(語り)であり、その図書化・増補といった趣の一冊です。
　芸能と芸能者の源流と現場を知るために・見るために・考えるために、小沢昭一が足を使い現場の匂いと肌触りまで体感し、更に活字(語り)に昇華させ、学問的試練に耐えうる体系化に挑戦する一冊です。
　語り口には、「小沢昭一的こころ」をあくまで失わず、さりとて気取らず、「生業」としての職業的芸能者の経験から、芸能にまつわる金銭・経済構造分析を含めその観察眼にブレが無い。
　さらには、先行研究に対する敬意に満ちており、小沢の学問的誠実さに疑いはない。小沢が提示する文献群は、その学問的良心の発揮と言ってよいリストである。
　芸能(歴史・社会)研究に対する、芸能者・小沢が学者を補い、発展の手助けする姿勢が小沢の論考に安定感を与えている。
　経済の進展によって現代社会がその生息域を絞り込んでしまい、絶滅に向かうのかに思える地の芸能への小沢の愛が結実した一冊とも言える。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4560039887/ref=cm_cr_mts_prod_img
モノガタリゲイノウトシャカイ
ものがたり芸能と社会

小沢　昭一【著】
白水社 （1998/11/20 出版）
第12回新潮学芸賞受賞

375,43p / 21cm / A5
ISBN： 9784560039885
NDC分類： 770
価格： ￥5,775 (税込)

詳細
放浪芸からテレビ芸まではじめて体系的に書き下ろす芸能人の芸能論。

芸能と私
遊びと芸能
芸能のはじまり
生業としての芸能
芸能と差別
商いと芸能
宴会と芸能
信仰と芸能
芸能の盛衰
芸能と悪所〔ほか〕

大好評を博した放送大学での講義を基に、芸能と芸能者の社会的な意味と存在理由を、著者ならではの放浪芸探索の成果を背景にしながら、職業的芸能者の視点から体系的に書き下ろす。