2002/04/05
医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 医療機関に関する情報の提供(第八条―第十一条)
第三章 診療に係る情報の提供等
第一節 診療に関する説明等(第十二条―第十五条)
第二節 診療記録の開示及び訂正等(第十六条―第二十三条)
第三節 明細書の交付(第二十四条)
第四節 診療に係る情報の提供等に関する体制等の整備(第二十五条・第二十六条)
第四章 安全かつ適正な医療を確保するための体制の整備
第一節 医療機関における体制の整備(第二十七条・第二十八条)
第二節 重大な被害が生じた事故の報告(第二十九条)
第三節 適正な医療等の促進(第三十条・第三十一条)
第五章 苦情の解決(第三十二条―第三十四条)
第六章 雑則(第三十五条―第三十七条)
第七章 罰則(第三十八条・第三十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、医療を受ける者に対し医療に関する情報が十分に提供されているとはいえない状況にあること、医療に係る事故等とこれに対する医療機関等の対応の在り方が問われる事態の相次ぐ発生等により医療に対する国民の信頼が低下しつつあること等にかんがみ、医療を受ける者に対する医療に関する情報の提供についての基本的な事項、安全かつ適正な医療を確保するための体制の整備に関し必要な事項等について定めることにより、医療を受ける者の理解と選択に基づいた良質かつ適切な医療の提供を促進するとともに、医療の透明性と安全性の確保等を図り、もって我が国の医療の信頼性の確保及び向上と医療を受ける者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「医療機関」とは、病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院をいう。以下同じ。)、診療所(同条第二項に規定する診療所をいう。以下同じ。)、介護老人保健施設(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第二十二項に規定する介護老人保健施設をいう。)その他の医療を提供する機関であって厚生労働省令で定めるものをいう。
2
この法律において「医療機関の開設者等」とは、医療機関を開設した者(国の開設する医療機関その他の厚生労働省令で定める医療機関にあっては、厚生労働省令で定める者)をいう。
3
この法律において「医療機関の管理者」とは、医療機関を管理する者をいう。
4
この法律において「医療従事者」とは、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療業務に従事する者をいう。
5
この法律において「診療記録」とは、診療録、処方せん、検査記録、看護記録、エックス線写真その他の診療の過程において医療従事者が作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって厚生労働省令で定めるものをいう。
(基本的理念)
第三条
医療は、医療を受ける者の人格と権利利益が尊重され、医療を受ける者と医療従事者との信頼関係の下に医療を受ける者の理解と選択に基づいて行われることを基本とするとともに、それが提供されるに当たっては、安全で、かつ、その時点における医療の水準及び医学医術に関する専門的科学的知見に照らして適切なものとなるよう最大限の配慮がなされなければならない。
第四条
医療に関する情報は、医療を受ける者の理解と選択に資するとともに、医療の透明性を高めるよう、適切に提供されるものとする。
2
医療を受ける者の診療に係る情報については、当該医療を受ける者の心身に関するものであることを踏まえ、個人の人格尊重の理念の下に、その安全の確保に特に留意しつつ、適正な管理及び利用がなされるとともに、医療を受ける者と医療従事者との間で当該情報が共有化されるよう、当該情報に対する医療を受ける者の適切な関与につき配慮されなければならない。
(医療機関及び医療従事者の責務)
第五条
医療機関及び医療従事者は、この法律の趣旨にのっとり、医療を受ける者の信頼を確保することに特に留意しつつ、自ら、医療に関する情報の適切な提供について積極的に取り組むとともに、全力を挙げて安全かつ適正な医療を行うよう努めなければならない。
(医療を受ける者の責務)
第六条
医療を受ける者は、医療がその理解と選択に基づいて行われるべきものであることを自覚して、医療従事者に協力しつつ、それにできる限り主体的に取り組むよう努めるものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第七条
国及び地方公共団体は、医療に関する情報の適正かつ円滑な提供の促進及び安全かつ適正な医療の確保を図るために必要な各般の措置を講ずるとともに、医療を受ける者によりこの法律に定める権利等が適切に行使されるよう、それに関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
第二章 医療機関に関する情報の提供
(医療機関による情報の提供)
第八条
医療機関は、医療を受ける者の選択等に資するため、適当な方法により、できる限り広く、その提供する医療の内容に関する情報、その有する人員、施設及び設備に関する情報その他の当該医療機関に関する情報を提供するよう努めなければならない。
(書類の閲覧)
第九条
医療機関(厚生労働省令で定めるものを除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、当該医療機関に関する次に掲げる事項を記載した書類を、当該医療機関に備え置き、医療を受ける者の求めに応じ、閲覧させなければならない。
一 医療従事者の員数及び医療従事者のうち医師、歯科医師その他厚生労働省令で定める医療従事者の氏名
二 厚生労働省令で定める施設及び設備に関する事項
三 過去五年間の入院患者及び外来患者の数その他の医療の提供の実績に関する事項として厚生労働省令で定める事項
四 厚生労働省令で定める管理及び運営の状況に関する事項
五 その他厚生労働省令で定める事項
(掲示義務)
第十条
医療機関の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項について、当該医療機関内において医療を受ける者の見やすいように掲示しなければならない。
一 当該医療機関に関する事項を記載した書類が備え置かれている場合には、その旨、当該書類の閲覧をすることができる旨及びその閲覧の方法
二 患者は診療に際して受ける説明の概要を記載した書面の交付を医師又は歯科医師に対し求めることができる旨
三 患者はその診療に係る診療記録の開示を請求することができる旨及び開示を受けた診療記録に記録されている当該患者に関する情報の内容に事実に関する誤りがあると認めるときはその訂正等を請求することができる旨並びにそれらの請求の方法
四 患者はその医療に要した費用につき支払を行うに際し当該費用の内訳を記載した明細書の交付を申し出ることができる旨
五 医療適正化委員会が設置されている医療機関にあっては、その旨、患者は現に受け、又は受けようとする診療について医療適正化委員会に相談することができる旨及び医療適正化委員会への連絡の方法並びに患者は当該医療機関の提供する医療又は診療に係る情報の提供について医療適正化委員会に対して苦情の申出をすることができる旨及びその申出の方法
六 前号の医療機関以外の医療機関にあっては、患者が苦情の申出をする場合のその申出の方法
(医療機関に係る広告の規制の緩和)
第十一条
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告できる事項を定めることの廃止その他の第八条の趣旨を踏まえた医療機関に係る広告についての事項、内容及び方法に関する規制を緩和するために必要な措置は、別に法律で定める。
第三章 診療に係る情報の提供等
第一節 診療に関する説明等
(患者の理解と選択に基づいた医療の実施)
第十二条
医療従事者は、診療その他の医療の提供につき、患者に対して懇切丁寧に説明等を行い、患者からの求めに誠意をもって対応し、その他患者の立場に立ってその役務の提供を行うことにより、患者の理解と選択に基づいた医療を行うよう努めなければならない。
(診療に関する説明)
第十三条
医師又は歯科医師は、診療に際し、患者(患者がその説明を理解することが困難な状態にあるときは、患者の家族その他患者を看護する者(以下「家族等」という。)。第三項において同じ。)に対し、当該患者の心身の状況に応じつつ、適当な方法により、当該診療に関する次に掲げる事項について、適切な説明を行うものとする。
一 傷病名(その疑いがあると診断されたものを含む。)及び主要症状
二 行おうとする治療又は検査の目的、方法及び予測される効果等(当該治療又は検査が患者の心身に対して負担又は危険を伴うおそれがあるものである場合にはその内容及び程度を、当該治療又は検査に代わり得る他の治療又は検査の方法がある場合にはその方法及びそれによることとしたときの予測される効果等の相違を、当該治療又は検査の内容に薬剤の投与が含まれる場合にはその薬剤の名称、効能、効果、特に注意すべき副作用等を、それぞれ含むものとする。)
三 行おうとする治療又は検査を拒否できること(当該治療を行わないこととしたときに予測される当該患者の心身の状況を含む。)。
四 自己において必要な診療を行うことが困難である場合その他必要な診療を他の医師又は歯科医師に行わせることが適当である場合には、その旨、その理由及び他の医師又は歯科医師に関する情報、他の医療機関に関する情報その他の当該患者が当該必要な診療を受けるために必要な事項
五 その他診療に関する重要な事項
2
医師又は歯科医師は、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合においては、同項各号に掲げる事項の全部又は一部について、同項の説明を行わないことができる。
一 緊急に診療を行う必要があるために前項の説明を行ういとまがない場合
二 前項の説明を行うことが当該患者に対する治療の効果等に明らかに悪影響を及ぼすおそれがある場合
三 前項の説明を受けることを希望しない旨の患者の意思の表明があった場合
四 当該診療に関し説明すべき事項について既に説明が行われている場合
3
医師又は歯科医師は、第一項の説明について、患者から書面の交付を求められたときは、これを拒むことにつき正当な理由がある場合を除き、当該説明の概要を記載した書面を交付するものとする。
(説明等と異なる診療又は適切でない診療が行われた場合の患者等に対する報告)
第十四条
医師又は歯科医師は、前条第一項の規定によりあらかじめ行われた説明の内容若しくはそれに基づいて選択された内容と異なる診療が行われた場合又は診療が適切に行われなかった場合には、できる限り速やかに、当該診療を受けた患者(患者が当該診療に関する報告を理解することが困難な状態にあるときは家族等、患者が当該診療に起因して死亡したときはその遺族)に対し、適当な方法により、その事実及び当該診療の概要(当該患者に生命若しくは身体の被害が生じた場合又はそれらの被害が生ずるおそれがある場合には、その概要及びそれに関して講じた措置又は講ずることが必要となると認められる措置を含む。)並びにそのような事態に至った経緯その他当該診療等に関しそれらの者に知らせるべき事項について、報告しなければならない。
(診療に関する相談)
第十五条
患者又は家族等は、医療機関に医療適正化委員会が設置されている場合には、当該患者が現に受け、又は受けようとする診療について、医療適正化委員会に相談することができる。
第二節 診療記録の開示及び訂正等
(診療記録の開示)
第十六条
患者(患者であった者を含む。以下この節において同じ。)又はその遺族は、当該患者の診療に係る診療記録について、当該診療に係る医療機関の管理者(法令の規定により医療機関の管理者以外の者が保存することとされている診療記録については、当該法令の規定によりそれを保存することとされている者。以下この節において同じ。)に対し、その開示を請求することができる。
2
患者が未成年者又は成年被後見人であるときは、その法定代理人は、当該患者に代わって前項の規定による開示の請求(以下「開示請求」という。)をすることができる。ただし、当該開示請求をすることが当該患者の意思に反することが明らかである場合は、この限りでない。
3
前二項に規定する者のほか、患者の家族は、患者が診療記録に記録されている情報の内容について理解することが困難な状態にあるとき又は患者の同意があるときは、当該患者に代わって開示請求をすることができる。
第十七条
医療機関の管理者は、開示請求があったときは、当該開示請求をした者に対し、当該開示請求に係る診療記録(当該診療記録に当該開示請求に係る患者に関する情報以外の情報が記録されている場合には、当該患者に関する情報に係る部分に限る。第二十二条第一項及び第四節を除き、以下同じ。)を開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
一 当該患者に対する治療の効果等に明らかに悪影響を及ぼすおそれがある場合その他当該患者の生命、身体その他の権利利益を著しく害するおそれがある場合
二 第三者(当該患者及び当該医療機関の医療従事者以外の者をいう。)の権利利益を害するおそれがある場合
(不開示等の通知)
第十八条
医療機関の管理者は、前条ただし書の規定に基づき開示請求に係る診療記録の全部若しくは一部を開示しないとき又は開示請求に係る診療記録を保存していないときは、当該開示請求をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
(開示又は通知の期限)
第十九条
第十七条の規定による開示又は前条の規定による通知(次項において「開示又は通知」という。)は、開示請求があった日から七日以内に行うものとする。
2
医療機関の管理者は、事務処理上の困難その他正当な理由により前項に規定する期間内に開示又は通知をすることができないときは、同項に規定する期間内に、開示請求をした者に対し、同項の期間内に開示又は通知をすることができない理由及び開示又は通知の期限を通知するものとする。
(開示の実施)
第二十条
診療記録の開示は、文書又は図画については閲覧又は写しの交付により、電磁的記録については当該電磁的記録を出力することにより作成した書面の交付により行うものとする。
2
医療機関の管理者は、診療記録の開示を受ける者から、当該開示の実施に関し、実費の範囲内において、手数料を徴収することができる。
(診療記録に記録されている情報の内容の訂正等)
第二十一条
患者は、第十七条の規定により開示を受けた診療記録に記録されている当該患者に関する情報の内容に事実に関する誤りがあると認めるときは、当該診療記録を保存する医療機関の管理者に対し、当該情報の内容の訂正、追加又は削除(以下「訂正等」という。)を請求することができる。
2
第十六条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による訂正等の請求(以下「訂正等の請求」という。)について準用する。
第二十二条
医療機関の管理者は、訂正等の請求があった場合において、当該訂正等の請求に係る情報の内容についての事実に関する誤りがあると認めるときは、診療記録の作成及び保存の目的の達成に必要な範囲内において訂正等を行い、当該訂正等の請求をした者に対し、その旨及び訂正等の内容を通知しなければならない。
2
医療機関の管理者は、訂正等の請求に係る情報の内容について、訂正等を行わないときは、当該訂正等の請求をした者に対し、理由を示してその旨を通知するとともに、当該訂正等の請求に係る診療記録に、訂正等の請求があった旨及びその概要を記載し、又は記録しなければならない。
3
第一項の規定による訂正等及び通知又は前項の規定による通知及び記載若しくは記録(次項において「訂正等又は通知」という。)は、訂正等の請求があった日から三十日以内に行うものとする。
4
医療機関の管理者は、事務処理上の困難その他正当な理由により前項に規定する期間内に訂正等又は通知をすることができないときは、同項に規定する期間内に、訂正等の請求をした者に対し、同項の期間内に訂正等又は通知をすることができない理由及び訂正等又は通知の期限を通知するものとする。
(開示等の請求を受け付ける方法)
第二十三条
医療機関は、開示請求及び訂正等の請求(以下この条において「開示等の請求」という。)に関し、厚生労働省令で定めるところにより、請求は書面によることとする等開示等の請求を受け付ける方法について定めることができる。この場合において、開示等の請求をする者は、当該方法に従って、請求をするものとする。
2
医療機関は、前項の規定に基づき開示等の請求を受け付ける方法を定めるに当たっては、必要最小限のものに限り、かつ、開示等の請求をする者に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。
第三節 明細書の交付
第二十四条
医療機関は、患者その他の者から、当該患者に係る医療に要した費用につき支払が行われるに際し、当該費用の内訳を記載した明細書の交付の申出があったときは、厚生労働省令で定めるところにより、明細書を交付するものとする。この場合において、患者以外の者に対する明細書の交付に際しては、医療機関は、当該患者の権利利益を害することとならないよう配意するものとする。
第四節 診療に係る情報の提供等に関する体制等の整備
(医療機関における診療に係る情報の管理、提供等に関する体制の整備)
第二十五条
医療機関は、診療記録の作成及び保存、診療に係る情報の提供等に関する具体的な指針の策定、それらに関する当該医療機関に勤務する医療従事者に対する教育、診療記録を管理する専任の者の配置その他の当該医療機関における診療に係る情報の適切な管理、提供等を行うために必要な体制の整備に努めなければならない。
(診療記録に関する制度の整備)
第二十六条
看護記録の作成等の義務付け、診療録等の保存期間の延長その他診療記録に関する制度の整備に関し必要な事項は、別に法律で定める。
医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 医療機関に関する情報の提供(第八条―第十一条)
第三章 診療に係る情報の提供等
第一節 診療に関する説明等(第十二条―第十五条)
第二節 診療記録の開示及び訂正等(第十六条―第二十三条)
第三節 明細書の交付(第二十四条)
第四節 診療に係る情報の提供等に関する体制等の整備(第二十五条・第二十六条)
第四章 安全かつ適正な医療を確保するための体制の整備
第一節 医療機関における体制の整備(第二十七条・第二十八条)
第二節 重大な被害が生じた事故の報告(第二十九条)
第三節 適正な医療等の促進(第三十条・第三十一条)
第五章 苦情の解決(第三十二条―第三十四条)
第六章 雑則(第三十五条―第三十七条)
第七章 罰則(第三十八条・第三十九条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、医療を受ける者に対し医療に関する情報が十分に提供されているとはいえない状況にあること、医療に係る事故等とこれに対する医療機関等の対応の在り方が問われる事態の相次ぐ発生等により医療に対する国民の信頼が低下しつつあること等にかんがみ、医療を受ける者に対する医療に関する情報の提供についての基本的な事項、安全かつ適正な医療を確保するための体制の整備に関し必要な事項等について定めることにより、医療を受ける者の理解と選択に基づいた良質かつ適切な医療の提供を促進するとともに、医療の透明性と安全性の確保等を図り、もって我が国の医療の信頼性の確保及び向上と医療を受ける者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「医療機関」とは、病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の五第一項に規定する病院をいう。以下同じ。)、診療所(同条第二項に規定する診療所をいう。以下同じ。)、介護老人保健施設(介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第七条第二十二項に規定する介護老人保健施設をいう。)その他の医療を提供する機関であって厚生労働省令で定めるものをいう。
2
この法律において「医療機関の開設者等」とは、医療機関を開設した者(国の開設する医療機関その他の厚生労働省令で定める医療機関にあっては、厚生労働省令で定める者)をいう。
3
この法律において「医療機関の管理者」とは、医療機関を管理する者をいう。
4
この法律において「医療従事者」とは、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療業務に従事する者をいう。
5
この法律において「診療記録」とは、診療録、処方せん、検査記録、看護記録、エックス線写真その他の診療の過程において医療従事者が作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって厚生労働省令で定めるものをいう。
(基本的理念)
第三条
医療は、医療を受ける者の人格と権利利益が尊重され、医療を受ける者と医療従事者との信頼関係の下に医療を受ける者の理解と選択に基づいて行われることを基本とするとともに、それが提供されるに当たっては、安全で、かつ、その時点における医療の水準及び医学医術に関する専門的科学的知見に照らして適切なものとなるよう最大限の配慮がなされなければならない。
第四条
医療に関する情報は、医療を受ける者の理解と選択に資するとともに、医療の透明性を高めるよう、適切に提供されるものとする。
2
医療を受ける者の診療に係る情報については、当該医療を受ける者の心身に関するものであることを踏まえ、個人の人格尊重の理念の下に、その安全の確保に特に留意しつつ、適正な管理及び利用がなされるとともに、医療を受ける者と医療従事者との間で当該情報が共有化されるよう、当該情報に対する医療を受ける者の適切な関与につき配慮されなければならない。
(医療機関及び医療従事者の責務)
第五条
医療機関及び医療従事者は、この法律の趣旨にのっとり、医療を受ける者の信頼を確保することに特に留意しつつ、自ら、医療に関する情報の適切な提供について積極的に取り組むとともに、全力を挙げて安全かつ適正な医療を行うよう努めなければならない。
(医療を受ける者の責務)
第六条
医療を受ける者は、医療がその理解と選択に基づいて行われるべきものであることを自覚して、医療従事者に協力しつつ、それにできる限り主体的に取り組むよう努めるものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第七条
国及び地方公共団体は、医療に関する情報の適正かつ円滑な提供の促進及び安全かつ適正な医療の確保を図るために必要な各般の措置を講ずるとともに、医療を受ける者によりこの法律に定める権利等が適切に行使されるよう、それに関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
第二章 医療機関に関する情報の提供
(医療機関による情報の提供)
第八条
医療機関は、医療を受ける者の選択等に資するため、適当な方法により、できる限り広く、その提供する医療の内容に関する情報、その有する人員、施設及び設備に関する情報その他の当該医療機関に関する情報を提供するよう努めなければならない。
(書類の閲覧)
第九条
医療機関(厚生労働省令で定めるものを除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、当該医療機関に関する次に掲げる事項を記載した書類を、当該医療機関に備え置き、医療を受ける者の求めに応じ、閲覧させなければならない。
一 医療従事者の員数及び医療従事者のうち医師、歯科医師その他厚生労働省令で定める医療従事者の氏名
二 厚生労働省令で定める施設及び設備に関する事項
三 過去五年間の入院患者及び外来患者の数その他の医療の提供の実績に関する事項として厚生労働省令で定める事項
四 厚生労働省令で定める管理及び運営の状況に関する事項
五 その他厚生労働省令で定める事項
(掲示義務)
第十条
医療機関の管理者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項について、当該医療機関内において医療を受ける者の見やすいように掲示しなければならない。
一 当該医療機関に関する事項を記載した書類が備え置かれている場合には、その旨、当該書類の閲覧をすることができる旨及びその閲覧の方法
二 患者は診療に際して受ける説明の概要を記載した書面の交付を医師又は歯科医師に対し求めることができる旨
三 患者はその診療に係る診療記録の開示を請求することができる旨及び開示を受けた診療記録に記録されている当該患者に関する情報の内容に事実に関する誤りがあると認めるときはその訂正等を請求することができる旨並びにそれらの請求の方法
四 患者はその医療に要した費用につき支払を行うに際し当該費用の内訳を記載した明細書の交付を申し出ることができる旨
五 医療適正化委員会が設置されている医療機関にあっては、その旨、患者は現に受け、又は受けようとする診療について医療適正化委員会に相談することができる旨及び医療適正化委員会への連絡の方法並びに患者は当該医療機関の提供する医療又は診療に係る情報の提供について医療適正化委員会に対して苦情の申出をすることができる旨及びその申出の方法
六 前号の医療機関以外の医療機関にあっては、患者が苦情の申出をする場合のその申出の方法
(医療機関に係る広告の規制の緩和)
第十一条
医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告できる事項を定めることの廃止その他の第八条の趣旨を踏まえた医療機関に係る広告についての事項、内容及び方法に関する規制を緩和するために必要な措置は、別に法律で定める。
第三章 診療に係る情報の提供等
第一節 診療に関する説明等
(患者の理解と選択に基づいた医療の実施)
第十二条
医療従事者は、診療その他の医療の提供につき、患者に対して懇切丁寧に説明等を行い、患者からの求めに誠意をもって対応し、その他患者の立場に立ってその役務の提供を行うことにより、患者の理解と選択に基づいた医療を行うよう努めなければならない。
(診療に関する説明)
第十三条
医師又は歯科医師は、診療に際し、患者(患者がその説明を理解することが困難な状態にあるときは、患者の家族その他患者を看護する者(以下「家族等」という。)。第三項において同じ。)に対し、当該患者の心身の状況に応じつつ、適当な方法により、当該診療に関する次に掲げる事項について、適切な説明を行うものとする。
一 傷病名(その疑いがあると診断されたものを含む。)及び主要症状
二 行おうとする治療又は検査の目的、方法及び予測される効果等(当該治療又は検査が患者の心身に対して負担又は危険を伴うおそれがあるものである場合にはその内容及び程度を、当該治療又は検査に代わり得る他の治療又は検査の方法がある場合にはその方法及びそれによることとしたときの予測される効果等の相違を、当該治療又は検査の内容に薬剤の投与が含まれる場合にはその薬剤の名称、効能、効果、特に注意すべき副作用等を、それぞれ含むものとする。)
三 行おうとする治療又は検査を拒否できること(当該治療を行わないこととしたときに予測される当該患者の心身の状況を含む。)。
四 自己において必要な診療を行うことが困難である場合その他必要な診療を他の医師又は歯科医師に行わせることが適当である場合には、その旨、その理由及び他の医師又は歯科医師に関する情報、他の医療機関に関する情報その他の当該患者が当該必要な診療を受けるために必要な事項
五 その他診療に関する重要な事項
2
医師又は歯科医師は、前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合においては、同項各号に掲げる事項の全部又は一部について、同項の説明を行わないことができる。
一 緊急に診療を行う必要があるために前項の説明を行ういとまがない場合
二 前項の説明を行うことが当該患者に対する治療の効果等に明らかに悪影響を及ぼすおそれがある場合
三 前項の説明を受けることを希望しない旨の患者の意思の表明があった場合
四 当該診療に関し説明すべき事項について既に説明が行われている場合
3
医師又は歯科医師は、第一項の説明について、患者から書面の交付を求められたときは、これを拒むことにつき正当な理由がある場合を除き、当該説明の概要を記載した書面を交付するものとする。
(説明等と異なる診療又は適切でない診療が行われた場合の患者等に対する報告)
第十四条
医師又は歯科医師は、前条第一項の規定によりあらかじめ行われた説明の内容若しくはそれに基づいて選択された内容と異なる診療が行われた場合又は診療が適切に行われなかった場合には、できる限り速やかに、当該診療を受けた患者(患者が当該診療に関する報告を理解することが困難な状態にあるときは家族等、患者が当該診療に起因して死亡したときはその遺族)に対し、適当な方法により、その事実及び当該診療の概要(当該患者に生命若しくは身体の被害が生じた場合又はそれらの被害が生ずるおそれがある場合には、その概要及びそれに関して講じた措置又は講ずることが必要となると認められる措置を含む。)並びにそのような事態に至った経緯その他当該診療等に関しそれらの者に知らせるべき事項について、報告しなければならない。
(診療に関する相談)
第十五条
患者又は家族等は、医療機関に医療適正化委員会が設置されている場合には、当該患者が現に受け、又は受けようとする診療について、医療適正化委員会に相談することができる。
第二節 診療記録の開示及び訂正等
(診療記録の開示)
第十六条
患者(患者であった者を含む。以下この節において同じ。)又はその遺族は、当該患者の診療に係る診療記録について、当該診療に係る医療機関の管理者(法令の規定により医療機関の管理者以外の者が保存することとされている診療記録については、当該法令の規定によりそれを保存することとされている者。以下この節において同じ。)に対し、その開示を請求することができる。
2
患者が未成年者又は成年被後見人であるときは、その法定代理人は、当該患者に代わって前項の規定による開示の請求(以下「開示請求」という。)をすることができる。ただし、当該開示請求をすることが当該患者の意思に反することが明らかである場合は、この限りでない。
3
前二項に規定する者のほか、患者の家族は、患者が診療記録に記録されている情報の内容について理解することが困難な状態にあるとき又は患者の同意があるときは、当該患者に代わって開示請求をすることができる。
第十七条
医療機関の管理者は、開示請求があったときは、当該開示請求をした者に対し、当該開示請求に係る診療記録(当該診療記録に当該開示請求に係る患者に関する情報以外の情報が記録されている場合には、当該患者に関する情報に係る部分に限る。第二十二条第一項及び第四節を除き、以下同じ。)を開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
一 当該患者に対する治療の効果等に明らかに悪影響を及ぼすおそれがある場合その他当該患者の生命、身体その他の権利利益を著しく害するおそれがある場合
二 第三者(当該患者及び当該医療機関の医療従事者以外の者をいう。)の権利利益を害するおそれがある場合
(不開示等の通知)
第十八条
医療機関の管理者は、前条ただし書の規定に基づき開示請求に係る診療記録の全部若しくは一部を開示しないとき又は開示請求に係る診療記録を保存していないときは、当該開示請求をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
(開示又は通知の期限)
第十九条
第十七条の規定による開示又は前条の規定による通知(次項において「開示又は通知」という。)は、開示請求があった日から七日以内に行うものとする。
2
医療機関の管理者は、事務処理上の困難その他正当な理由により前項に規定する期間内に開示又は通知をすることができないときは、同項に規定する期間内に、開示請求をした者に対し、同項の期間内に開示又は通知をすることができない理由及び開示又は通知の期限を通知するものとする。
(開示の実施)
第二十条
診療記録の開示は、文書又は図画については閲覧又は写しの交付により、電磁的記録については当該電磁的記録を出力することにより作成した書面の交付により行うものとする。
2
医療機関の管理者は、診療記録の開示を受ける者から、当該開示の実施に関し、実費の範囲内において、手数料を徴収することができる。
(診療記録に記録されている情報の内容の訂正等)
第二十一条
患者は、第十七条の規定により開示を受けた診療記録に記録されている当該患者に関する情報の内容に事実に関する誤りがあると認めるときは、当該診療記録を保存する医療機関の管理者に対し、当該情報の内容の訂正、追加又は削除(以下「訂正等」という。)を請求することができる。
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第十六条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による訂正等の請求(以下「訂正等の請求」という。)について準用する。
第二十二条
医療機関の管理者は、訂正等の請求があった場合において、当該訂正等の請求に係る情報の内容についての事実に関する誤りがあると認めるときは、診療記録の作成及び保存の目的の達成に必要な範囲内において訂正等を行い、当該訂正等の請求をした者に対し、その旨及び訂正等の内容を通知しなければならない。
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医療機関の管理者は、訂正等の請求に係る情報の内容について、訂正等を行わないときは、当該訂正等の請求をした者に対し、理由を示してその旨を通知するとともに、当該訂正等の請求に係る診療記録に、訂正等の請求があった旨及びその概要を記載し、又は記録しなければならない。
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第一項の規定による訂正等及び通知又は前項の規定による通知及び記載若しくは記録(次項において「訂正等又は通知」という。)は、訂正等の請求があった日から三十日以内に行うものとする。
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医療機関の管理者は、事務処理上の困難その他正当な理由により前項に規定する期間内に訂正等又は通知をすることができないときは、同項に規定する期間内に、訂正等の請求をした者に対し、同項の期間内に訂正等又は通知をすることができない理由及び訂正等又は通知の期限を通知するものとする。
(開示等の請求を受け付ける方法)
第二十三条
医療機関は、開示請求及び訂正等の請求(以下この条において「開示等の請求」という。)に関し、厚生労働省令で定めるところにより、請求は書面によることとする等開示等の請求を受け付ける方法について定めることができる。この場合において、開示等の請求をする者は、当該方法に従って、請求をするものとする。
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医療機関は、前項の規定に基づき開示等の請求を受け付ける方法を定めるに当たっては、必要最小限のものに限り、かつ、開示等の請求をする者に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。
第三節 明細書の交付
第二十四条
医療機関は、患者その他の者から、当該患者に係る医療に要した費用につき支払が行われるに際し、当該費用の内訳を記載した明細書の交付の申出があったときは、厚生労働省令で定めるところにより、明細書を交付するものとする。この場合において、患者以外の者に対する明細書の交付に際しては、医療機関は、当該患者の権利利益を害することとならないよう配意するものとする。
第四節 診療に係る情報の提供等に関する体制等の整備
(医療機関における診療に係る情報の管理、提供等に関する体制の整備)
第二十五条
医療機関は、診療記録の作成及び保存、診療に係る情報の提供等に関する具体的な指針の策定、それらに関する当該医療機関に勤務する医療従事者に対する教育、診療記録を管理する専任の者の配置その他の当該医療機関における診療に係る情報の適切な管理、提供等を行うために必要な体制の整備に努めなければならない。
(診療記録に関する制度の整備)
第二十六条
看護記録の作成等の義務付け、診療録等の保存期間の延長その他診療記録に関する制度の整備に関し必要な事項は、別に法律で定める。