2003/10/01
改訂「民主党の医療制度改革案」≪中間とりまとめ≫
~基本的な考え方と当面する課題について~
民主党医療問題PT
座 長 中野 寛成
事務局長 朝日 俊弘
改 革 の 視 点
* 民主党は、これまで実施されてきた制度改正が、医療制度全般にわたる抜本的改革を棚上げしたまま、一方では保険料負担と患者自己負担を引き上げ、他方では給付水準を引き下げることによって、結局は健保財政の収支バランスを保つことのみに終始してきたことを批判し続けてきました。
* 民主党は、患者・利用者・消費者の立場に立って、安心し納得できる医療サービスの提供と医療の質の確保・向上を図る観点から、積極的な医療情報の提供、説明と同意の原則の徹底、患者の自己決定の尊重とセカンド・オピニオンを得るためのルールづくりに取り組みます。
* 民主党は、現行の国民皆保険体制の堅持を基本原則とし、そのためにも医療保険制度全体の統合・再構築を図るとともに、より効率的で質の高いサービスの提供を求めて、医療提供体制の抜本的な改革を進めます。
1.医療提供体制の改革
* 病院と診療所の機能分化、役割分担を明確にし、それぞれの病院(病棟)機能も、急性期、亜急性期、慢性期、リハビリ、終末期等々の機能を明確にします。こうした機能分化と相互連携を進めることにより、トータルの病床数はOECD諸国並みに削減し、同時に病床あたりの職員配置基準を約2倍に引き上げます。
* 診療所は健康相談から病院への紹介、そして退院後のアフターケアなどのサービスを総合的に引き受ける「家庭医」(かかりつけ医)と、精神科クリニックや専門の外来手術などを行う「専門医診療所」と、二通りのタイプに分けて整備を進めます。
* 続発する医療事故・医療ミス防止対策を強化するため、第三者機関への医療事故報告の義務化と、徹底した事例検討の蓄積など、必要な法制化作業を含めた検討を進めるとともに、これらを踏まえた指導・監督体制の強化と対応策のマニュアル化に取り組みます。
またこうした医療事故の背景として、あまりにも低い医療機関の職員配置基準の抜本的な引き上げを図るとともに、今後行政サイドで設置予定の医療事故相談窓口のより実効ある活用を求めて、例えば都道府県ごとに診療側、患者・利用者側、そして弁護士等を含む学識経験者の三者で構成されるチェック機構の構築について検討を進めます。
* 当面する重要な課題として、以下の項目を中心に取り組みを進めます。
【1】 小児救急を含む小児科医療全体のレベルアップを図るため、電話相談、小児科医以外の一般医の相談支援システムの構築を含め、地域ごとの小児医療提供体制のあり方に対応したシステム化を図ります。また、全国で350カ所以上の小児救急センター病院を指定して、小児救急の受け入れ体制を確立します。
【2】 精神障害者に対する保健医療・福祉全体のレベルアップを図りつつ、「病院から地域へ」という流れを確実なものとします。そのため2003年を初年度とする「新障害者プラン」の着実な実施、とりわけ7万2千人の社会的入院患者の社会復帰に向けて、関連施設の緊急な整備のための補助金の大幅な増額等を含め、諸施策の拡充に取り組みます。
【3】 歯科医療については、治療するほど利益を得るという現在の診療報酬体系を是正し、予防歯科への転換が図られるような診療報酬体系に見直します。また、歯科衛生士とケアマネージャーの連携を図る等、介護現場における予防歯科・歯科医療を充実させていきます。全般的な歯科保健体制の整備については、医科・歯科の診療報酬上の格差是正、患者が安心できる環境づくり等も含めて実施していきます。
【4】 カルテ等診療情報の開示、レセプト(診療費明細書)の発行については、単なるガイドラインの策定にとどまらず、その法制化に向けて引き続き取り組みます。(「診療に関する情報等の在り方に関する検討会報告書」 2003年6月)
その際、今国会で成立した個人情報保護法の審議過程で問題となった、いわゆるセンシティブ情報としての診療(健康)情報の取り扱いについて、そのための個別法の制定も視野に入れて検討を進めます。
【5】 株式会社の医療機関経営への参入について、当面は構造改革特区に限って、保険診療等の対象とならない部分を認めていくものとします。ただし、保険診療の対象となる部分の株式会社参入については、採算性の高い項目に特化した病院経営が横行する懸念もあり、結果として国民皆保険制度の崩壊に繋がる可能性が排除できるかどうか十分な検討を必要とします。
【6】 医療業務への労働者派遣法に基づく派遣容認の動きについては、医師と看護師等その他の職務とは別けて対応することが現実的です。とりわけ看護師等その他のコメディカル・スタッフの派遣に関しては、チーム医療の確保、医療事故防止の観点から慎重な対応が必要です。
2.診療報酬体系の見直し
* 本年3月に示された厚生労働省の基本方針の考え方、即ち、医療技術の適切な評価と、医療機関のコストや機能の適切な反映、そして患者の視点の重視の三本柱を支持しつつ、より具体的に日本型の「疾患群別包括払い方式」の定着・拡大に向けて調査・検討作業を進めます。
* 診療報酬体系の見直しを進めていくためには、その決定機関である中医協(中央社会保険医療協議会)そのもののあり方の再検討が必要です。
本来は制度発足の時点に立ち帰った検討が必要ですが、当面、現在の委員構成を診療側・支払側・公益側それぞれ同数とし、診療側委員には病院代表や看護の立場からの参加を求めます。
* 薬価制度に関しては、当面、薬価決定プロセスの透明化と薬価の適正化を進めること、医薬品審査のあり方の見直しと画期的な新薬の早期承認を図ること、さらにいわゆる後発医薬品の活用・普及を進めること、より完全な医薬分業体制の実現に向けて取り組みを進めます。
そして次のステップでは公的な薬価を定める現行制度を見直し、基本的には薬価は市場原理に委ねる方式への転換を進めます。
* 当面する課題については、以下の考え方を基本に対応します。
【1】 いわゆる「混合診療」(保険診療と自由診療の併用)の導入については、国民皆保険体制の枠組みの堅持を基本にしつつ、現行特定療養費制度の一層の拡大によって対応していきます。現在、保険適用外とされている新たな検査・治療等のうち安全性・有効性が確保されたものについては、できる限り早期に保険適用の承認を進めていきます。
【2】 消費者の利便性確保の観点から、医薬品販売体制拡充の方向には賛成です。ただし、医薬品の過剰使用や誤飲等による副作用を防止するなど消費者の安全確保のためには、薬剤師による服薬指導が前提です。当面、一般小売店等でも薬剤師なしで販売できる医薬部外品(医薬品のうち安全上特に問題ないと認定された品目)の拡大で対応していきます。
3.医療保険制度体系の再構築
* 本年3月に示された厚生労働省の基本方針では、健康保険の保険者を都道府県単位を軸に統合・再編成を進めることとしており、この点は昨年の民主党の改革案とほぼ同じ考え方であることから評価できます。
ただし、具体的に国保の再編をどのように進めていくか、また保険者の統合・再編を進めてもなお課題として残る保険者間の財政調整のあり方等、いくつかの課題が残されており、引き続き今後の検討が必要です。
* 高齢者医療制度については、基本方針では前期および後期高齢者と別けた制度を想定しているものの、基本的には継続加入方式ではなくて、独立した高齢者医療保険制度を創設することとしており、この点は民主党の考え方とは違っています。
ただし、基本方針も具体的な部分まで詰め切れていないこともあり、これまでの民主党の考え方、即ち、高齢者も引き続き従前に加入していた保険に継続加入する方式と、保険者間の財政調整(リスク構造調整)を組み合わせる考え方を基本に、引き続き検討を進めます。
* 当面する課題については、以下のような考え方で取り組みます。
【1】 平成15年4月から実施されている、7割給付・3割自己負担を、原則8割給付・2割自己負担へと再度の制度改正に取り組みます。
また、すべての健康保険における小児医療の患者負担を、3歳未満については2割から1割へ、3歳から小学校卒業年次までは3割から1割負担へと軽減します。
あわせて、当面、高額療養費制度の円滑な実施と利用しやすさを確保するため、窓口手続き等の簡略化を図ります。
【2】 最近、厚生労働省が認めた保険者と医療機関との直接契約については、公的保険の使命やフリーアクセスに制限を加えないこと等を条件とします。
【3】 保険者が被保険者の利便を図り、かつ自らの財政運営に資する観点から保険者機能の強化を図り、医療機関の機能評価・情報提供、被保険者の健康増進のための支援、レセプトの点検・分析・評価の徹底等を求めます。
改訂「民主党の医療制度改革案」≪中間とりまとめ≫
~基本的な考え方と当面する課題について~
民主党医療問題PT
座 長 中野 寛成
事務局長 朝日 俊弘
改 革 の 視 点
* 民主党は、これまで実施されてきた制度改正が、医療制度全般にわたる抜本的改革を棚上げしたまま、一方では保険料負担と患者自己負担を引き上げ、他方では給付水準を引き下げることによって、結局は健保財政の収支バランスを保つことのみに終始してきたことを批判し続けてきました。
* 民主党は、患者・利用者・消費者の立場に立って、安心し納得できる医療サービスの提供と医療の質の確保・向上を図る観点から、積極的な医療情報の提供、説明と同意の原則の徹底、患者の自己決定の尊重とセカンド・オピニオンを得るためのルールづくりに取り組みます。
* 民主党は、現行の国民皆保険体制の堅持を基本原則とし、そのためにも医療保険制度全体の統合・再構築を図るとともに、より効率的で質の高いサービスの提供を求めて、医療提供体制の抜本的な改革を進めます。
1.医療提供体制の改革
* 病院と診療所の機能分化、役割分担を明確にし、それぞれの病院(病棟)機能も、急性期、亜急性期、慢性期、リハビリ、終末期等々の機能を明確にします。こうした機能分化と相互連携を進めることにより、トータルの病床数はOECD諸国並みに削減し、同時に病床あたりの職員配置基準を約2倍に引き上げます。
* 診療所は健康相談から病院への紹介、そして退院後のアフターケアなどのサービスを総合的に引き受ける「家庭医」(かかりつけ医)と、精神科クリニックや専門の外来手術などを行う「専門医診療所」と、二通りのタイプに分けて整備を進めます。
* 続発する医療事故・医療ミス防止対策を強化するため、第三者機関への医療事故報告の義務化と、徹底した事例検討の蓄積など、必要な法制化作業を含めた検討を進めるとともに、これらを踏まえた指導・監督体制の強化と対応策のマニュアル化に取り組みます。
またこうした医療事故の背景として、あまりにも低い医療機関の職員配置基準の抜本的な引き上げを図るとともに、今後行政サイドで設置予定の医療事故相談窓口のより実効ある活用を求めて、例えば都道府県ごとに診療側、患者・利用者側、そして弁護士等を含む学識経験者の三者で構成されるチェック機構の構築について検討を進めます。
* 当面する重要な課題として、以下の項目を中心に取り組みを進めます。
【1】 小児救急を含む小児科医療全体のレベルアップを図るため、電話相談、小児科医以外の一般医の相談支援システムの構築を含め、地域ごとの小児医療提供体制のあり方に対応したシステム化を図ります。また、全国で350カ所以上の小児救急センター病院を指定して、小児救急の受け入れ体制を確立します。
【2】 精神障害者に対する保健医療・福祉全体のレベルアップを図りつつ、「病院から地域へ」という流れを確実なものとします。そのため2003年を初年度とする「新障害者プラン」の着実な実施、とりわけ7万2千人の社会的入院患者の社会復帰に向けて、関連施設の緊急な整備のための補助金の大幅な増額等を含め、諸施策の拡充に取り組みます。
【3】 歯科医療については、治療するほど利益を得るという現在の診療報酬体系を是正し、予防歯科への転換が図られるような診療報酬体系に見直します。また、歯科衛生士とケアマネージャーの連携を図る等、介護現場における予防歯科・歯科医療を充実させていきます。全般的な歯科保健体制の整備については、医科・歯科の診療報酬上の格差是正、患者が安心できる環境づくり等も含めて実施していきます。
【4】 カルテ等診療情報の開示、レセプト(診療費明細書)の発行については、単なるガイドラインの策定にとどまらず、その法制化に向けて引き続き取り組みます。(「診療に関する情報等の在り方に関する検討会報告書」 2003年6月)
その際、今国会で成立した個人情報保護法の審議過程で問題となった、いわゆるセンシティブ情報としての診療(健康)情報の取り扱いについて、そのための個別法の制定も視野に入れて検討を進めます。
【5】 株式会社の医療機関経営への参入について、当面は構造改革特区に限って、保険診療等の対象とならない部分を認めていくものとします。ただし、保険診療の対象となる部分の株式会社参入については、採算性の高い項目に特化した病院経営が横行する懸念もあり、結果として国民皆保険制度の崩壊に繋がる可能性が排除できるかどうか十分な検討を必要とします。
【6】 医療業務への労働者派遣法に基づく派遣容認の動きについては、医師と看護師等その他の職務とは別けて対応することが現実的です。とりわけ看護師等その他のコメディカル・スタッフの派遣に関しては、チーム医療の確保、医療事故防止の観点から慎重な対応が必要です。
2.診療報酬体系の見直し
* 本年3月に示された厚生労働省の基本方針の考え方、即ち、医療技術の適切な評価と、医療機関のコストや機能の適切な反映、そして患者の視点の重視の三本柱を支持しつつ、より具体的に日本型の「疾患群別包括払い方式」の定着・拡大に向けて調査・検討作業を進めます。
* 診療報酬体系の見直しを進めていくためには、その決定機関である中医協(中央社会保険医療協議会)そのもののあり方の再検討が必要です。
本来は制度発足の時点に立ち帰った検討が必要ですが、当面、現在の委員構成を診療側・支払側・公益側それぞれ同数とし、診療側委員には病院代表や看護の立場からの参加を求めます。
* 薬価制度に関しては、当面、薬価決定プロセスの透明化と薬価の適正化を進めること、医薬品審査のあり方の見直しと画期的な新薬の早期承認を図ること、さらにいわゆる後発医薬品の活用・普及を進めること、より完全な医薬分業体制の実現に向けて取り組みを進めます。
そして次のステップでは公的な薬価を定める現行制度を見直し、基本的には薬価は市場原理に委ねる方式への転換を進めます。
* 当面する課題については、以下の考え方を基本に対応します。
【1】 いわゆる「混合診療」(保険診療と自由診療の併用)の導入については、国民皆保険体制の枠組みの堅持を基本にしつつ、現行特定療養費制度の一層の拡大によって対応していきます。現在、保険適用外とされている新たな検査・治療等のうち安全性・有効性が確保されたものについては、できる限り早期に保険適用の承認を進めていきます。
【2】 消費者の利便性確保の観点から、医薬品販売体制拡充の方向には賛成です。ただし、医薬品の過剰使用や誤飲等による副作用を防止するなど消費者の安全確保のためには、薬剤師による服薬指導が前提です。当面、一般小売店等でも薬剤師なしで販売できる医薬部外品(医薬品のうち安全上特に問題ないと認定された品目)の拡大で対応していきます。
3.医療保険制度体系の再構築
* 本年3月に示された厚生労働省の基本方針では、健康保険の保険者を都道府県単位を軸に統合・再編成を進めることとしており、この点は昨年の民主党の改革案とほぼ同じ考え方であることから評価できます。
ただし、具体的に国保の再編をどのように進めていくか、また保険者の統合・再編を進めてもなお課題として残る保険者間の財政調整のあり方等、いくつかの課題が残されており、引き続き今後の検討が必要です。
* 高齢者医療制度については、基本方針では前期および後期高齢者と別けた制度を想定しているものの、基本的には継続加入方式ではなくて、独立した高齢者医療保険制度を創設することとしており、この点は民主党の考え方とは違っています。
ただし、基本方針も具体的な部分まで詰め切れていないこともあり、これまでの民主党の考え方、即ち、高齢者も引き続き従前に加入していた保険に継続加入する方式と、保険者間の財政調整(リスク構造調整)を組み合わせる考え方を基本に、引き続き検討を進めます。
* 当面する課題については、以下のような考え方で取り組みます。
【1】 平成15年4月から実施されている、7割給付・3割自己負担を、原則8割給付・2割自己負担へと再度の制度改正に取り組みます。
また、すべての健康保険における小児医療の患者負担を、3歳未満については2割から1割へ、3歳から小学校卒業年次までは3割から1割負担へと軽減します。
あわせて、当面、高額療養費制度の円滑な実施と利用しやすさを確保するため、窓口手続き等の簡略化を図ります。
【2】 最近、厚生労働省が認めた保険者と医療機関との直接契約については、公的保険の使命やフリーアクセスに制限を加えないこと等を条件とします。
【3】 保険者が被保険者の利便を図り、かつ自らの財政運営に資する観点から保険者機能の強化を図り、医療機関の機能評価・情報提供、被保険者の健康増進のための支援、レセプトの点検・分析・評価の徹底等を求めます。