歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

平成14年2・3月;歯科技工料にかかる質問主意書と答弁/比較表

2002年04月03日 | 日本歯科技工士会
平成14年2・3月;歯科技工料にかかる質問主意書と答弁/比較表(アンダーライン等追記)2002.4.3調査企画作成


質問第-一号

 歯科技工士の技工料の決定方法に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成十四年二月十九日

櫻井充

 参議院議長 井 上  裕殿

    歯科技工士の技工料の決定方法に関するる質問主意書
 医療保険制度改革が叫ばれ、国民医療費の抑制と患者負担の増加が求められている。特に国民医療費の抑制に関ては、歯特医療の推進が効果的であることが指摘され始めている。すなわち、噛合わせの改善によって寝たきり高齢者の身体機能が回復したり、痴呆症状が改善したりと、歯科医療の推進が国民医療費の削減につながるのである。このような観点から、今後我が国において、歯科医療を重視することが非常に重要であると考えている。
例えば、歯科医療物(補綴物)の製作の分野では、良質な歯科医療拍物提供のために、現在の歯科技工士の厳い労働条件を改善することが必要条件である。

そこで、以下質問する。


昭和六十三年五月三十日に告示された 「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法の一部を改正する件(厚生省告示第百六十五号)」において、歯冠修復及び欠損補綴料(以下「技工料」という.)は、歯科技工士と歯科医師が、おむね七対三の割合で分けることが記されている.しかし現場では、この告示は余り守られていないばかりではなく、法的拘束力も持っていない.この告示は、なぜ法的拘束力を持たないのか、その理由を明らかにされたい。                        
このような現状を招いたのは、そもそも技工料が低いからだと思われる。なぜなら、患者の自己負担増による歯科患者の減少と現在の不況があいまって、歯科医師は厳しい経営を強いられており、技工料の取決めを守れないような状況に追い込まれているからである.よって、この告示に実効力を持たせるためには、技工料そのものを見直すことが重要であると考えるが、政府の見解を示されたい。                                                                      
今後は、明確な役割分担に基づくチーム医療を進めるため、歯科医師、歯料術生士及び歯科技工士などの歯科関係者がそれぞれ自立することが重要である.その意味では、技工料が歯科の枠内で設定されている現状は、歯科医師と歯科技工士の何に実質的な上下関係を形成してしまうため、適切でないと言える。よって、今後は技工料を歯科医師と明確に分離すべきと考えるが、政府の見解を示されたい.
         右質問する.


答弁書第一一号

 内閣参質第一五四第一一号

  平成十四年三月十九日

              内閣総理大臣 小泉純一郎

参議院議長 井 上  裕殿

参議院議院櫻井充君提出歯科技工士の技工料の決定方法に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

参議院議院櫻井充君提出歯科技工士の技工料の決定方法に関する質問に対する答弁書

一について

 健康保険法に規定する療養に要する費用の額の算定方法(平成六年三月一六日厚生省告示第五四号.以下「算定告示」という。)別表第二第二章第十二部通則においては、歯冠修復及び欠損補綴料に含まれる費用のうち、補綴物等製作技工に要する費用の割合はおおむね七割であり、補綴物等の製作管理に要する費用の割合はおおむね三割である旨を紀載しているが、これは、補綴物等の製作技工の委託を円滑に実施する観点から、製作技工に要する費用と製作管理に要する費用の標準的な割合を示したものである。しかしながら、算定告示は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条ノ九第二項に基づき、保険医療機関等が療養の給付に関し保険者に請求できる費用の額の算定方法を定めるものであり、保険医療機関等が補綴物等の製作技工等を委託する際の委託費の額を拘束するものではない。

二について

 歯冠修復及び欠損補綴料については、歯科医業の経営の実態、歯科医療技術の進歩等を踏まえて適切に設定しているところである。なお、平成十四年度の診療報酬の改定においては、義歯等の製作に関する診療報酬の引き上げを行うことしている。

三について

 診療報酬体系については、今後、医療保険制度等の改革の中で見直しを行うこととしているが、現行の診療報酬体系においては、補綴物等の製件管理及び製作技工は相互に密接する一連の行為であるため、一体的に評価することが適切であると考えている.





                   2002.04.03調査企画分析



▲質問者は、厚生省告示第百六十五号には「歯科技工士と歯科医師が、おおむね七対三の割合で分けることが記されている.」とする.
■答弁者は、「費用の標準的な割合を示した」とする。その観点(=観察・考察する立場。物を見る立場.見地/国語辞典)は、「製作技工の委託を円滑に実施することにあった」とする。                                     

▲質問者は、「なぜ法的拘束力を持たないのか」と問う。
■答弁者は、「(観点委託円滑実施だが)しかしながら算定告示は、(そもそも保険医療機関の請求を)定めるものであるから、委託額を拘束するものではない」とする.                                               

▲質問者は、「告示が余り守られない現状を招いたのは、そもそも技工料が低いからだから、技工料そのものを見直すべく政府の見解を」と問う.
■答弁者は、「平成十四年度改定で義歯等の引き上げを行う」とする.                                    

▲質問者は、「今後は技工料を歯科医師と明確に分離すべきであると考えるが、政府の見解を」と問う.
■答弁書は、「今後、診療報酬体系については、(医療保険制度改革の中で)見直しを行う」とする.また、問われていないが「現行の診療報酬体系においては、製作管理及び製作技工は相互に密接する一連の行為であるため一体的に評価することが適切であると考えている」と加えた。
                   2002.04,03調査企画意見

(ア) そもそも質問主意書/答弁書は、議院調査に基づき、内閣総理大臣が衆参両院議長に答弁書を送付するという極めて揺るがしが    たいものである.

(イ) 歯科技工料に直接係る広義の公文書は、疑義解釈など数少ない.本答弁書は最新のそれである.

(ウ) 本質問主意書/答弁書は、日技執行部として、主語述語関係に留意し文面どおりに認知すべきである。

(エ) 本答弁の内容は、平成13年度までに日技が認識する公式見解を超えるものではない。

(オ) 本会においては、係る厚生省告示(昭和六十三年五月三十日厚生省告示第百六十五号)を客観的に理解することと、委託技工料獲得運動の経緯ならぴに「大臣告示運動(上記算定告示の円滑実施のために普及定着を目指した蓮動)」への評価とを混在させず各々認識することが、平成14年度以降において肝要である.

                        以上

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