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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 「保険で入れ歯を」の後 保険制度と生きる 歯科技工士の全国リレーエッセイ②

2020年09月15日 | 歯科川柳・日本歯科新聞



日本歯科新聞 2020年9月15日

歯科技工士の全国リレーエッセイ

秋田県 岩澤毅(みなと義歯工房) ②

保険制度と生きる

「保険で入れ歯を」の後

 国民皆保険制度の日本の医療体制下で、「新技術の速やかな保険導入を当然のこととしてきた医科と、逆の道を選んだ歯科」との対比が行われてきた。

 確かに歯科界の人々は、自費(自由)診療の存在を前提としてきた。国外の新技術の導入を競い、国内で開発された技術も自費(自由)診療をターゲットする場合が多かった。

 しかし日本には、「保険証1枚で、安心して良い歯科医療が受けられる、患者も医療提供者も満足できる歯科医療を実現させる」をテーマに掲げた運動・潮流がある。

 この潮流は、「保険で入れ歯(よい歯)を」を合言葉として、白い歯(歯冠修復)と金属床の保険導入なども課題として取り上げられてきた。

 国民の医療保険制度に対する要望を掘り起こし基盤とし一つの流れになったものと思われる。自院(自歯科技工所)内での自費(自由)診療の比重の拡大を目指す歯科界の風潮の中、ある種異色な存在としてありながらも国民皆保険制度下の保険歯科診療の充実強化を要求する窓口としての役割を果たしたものと思われる。

 この環境下で、著名な歯科医師の「保険診療で診療技術を磨き、患者さんからの信頼を獲得し、その後に患者さんに自費診療を希望していただき、家族や知人を紹介していただく。そんな循環が、歯科医師の幸せになる」との言葉が、当然のものとして受け入れられた。

 歯科技工士はそれらに倣い、(医療)保険技工でトレーニングを積み、技術を磨き自費技工に携わることを目標とする生き方が本流となってきた。

 このコロナ禍の対応策として、「医療機関緊急支援助成金」の名称で、新型コロナウイルス感染症により経営に影響を受けている保険医療機関、または保険薬局に対して地域の医療体制の継続および維持を支える支援として、助成金が交付されている。

 2002年度より歯科医療関係者感染症予防講習会の一環として感染症予防歯科技工士講習会が公費により開催されているが、上記の助成金に類似した制度は歯科技工所向けにはない。 
 感染の危険性は認識されていながら、医療法に規定されていない歯科技工所には関与しないということなのか。この機会に、「ダンピング」等による経営基盤を危うくし、歯科技工士の労働環境を悪化する方向ではなく、歯科技工所の持続可能性を高め、安定させる方向での各々の経営と、歯科の統一した意志として行政・政治への政策の提案が求められる。


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