「「自分の木」の下で」は大江健三郎が小学校高学年くらいからの子供に向けて、
これから先の人生で出会うさまざまな出来事にどう考え対応すればいいのかを、自分自身の体験を基に平易な言葉で語りかけているエッセイ集だ。
この本は、子供だけでなく、親や先生など子供に何らかのアドバイスをしなければならない立場にある大人にもとても参考になると思う。
取り上げられている話題は、大抵の大人が覚えのある体験だったり、自分もいつか子供に伝えたいと思っている事だったり、子供に聞かれた時に何かしら解答を示さなければならない問題だったりする。
しかし、いざそうした事を子供に話してやろうとすると、普通はなかなかうまく言葉に出来ない。
この本を読むと、自分の心の中に漠然とあった子供に伝えたい事の輪郭がはっきりしてくるような気がする。
そしてそれをこういう風に話してやればいいんだと気づく。
つまり大人にとってとてもわかりやすいガイドになるのだ。
この本における大江健三郎の語り口は決して上から目線の説教調ではなく、時には自らの未熟さや失敗も隠さずに語りかける。
子供に向き合う時のあり方としてその姿勢は大いに参考になる。
子供のための拠り所であるだけでなく
大人のための指南書にもなる一冊だ。
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