本当かどうかは分からないけれど、広く知れ渡っている言い伝えのことを都市伝説などということがあります。
代表的なものは、電子レンジで濡れた猫を乾かそうとした話です。
実際に、そうした人がいたかどうか確かではないのに、誰もがその話を知っているなんて、実に不思議な現象です。
火種どころか、火がなくても簡単に煙が立ってしまうようなものです。
インターネットが発達している現在は、そうした類の話が広まるのは一昔前とは比べものにならない速さです。
うっかり、うろ覚えの知識を口にしたり、秘密事項をもらしたりすると、それらはあっという間に拡散され、収集のつかない事態になる(いわゆる、炎上)ので、要注意です。
作曲家や歴史上の人物に関するエピソードは、実際に事の真偽を確かめる方法がなく、また、研究者でもない限り、そうした真偽の判断は問題にされることがないので、本当かどうかは曖昧なまま、人々に受容されています。
そのため、研究者の間では研究対象とすらならない様々な言い伝えを、まるで真実であるかのように信じている一般の人もいます。
例えば、モーツァルトが何者かに殺されたのではないかという説や、ベートーヴェンがスパイだったという説。
どちらも、明確な証拠はなく、後世の人々の憶測や誤解の上に立てられた仮説にすぎません。
もっとも、ヨーロッパの芸術家たちは彼らの芸術活動による交友関係の幅広さや、自由さ、さらに多くの人の心を惹きつけるカリスマ性などが、体制側から危険視されやすい傾向にあったのは確かです。
昔から、そうした芸術家たちが国外追放される例は少なくありませんでした。
しかし、スパイ疑惑をかけられて国外追放されたという記録は残っていても、実際にどんなスパイ行為をしたのかという決定的な証拠は見つかっていない場合が多いのも事実です。
このように、一人の作曲家について世間で知られていることの中には、本当かどうか分からないことが沢山あります。
私は音楽関係の仕事をしているので、たまに、それらのことについて人から尋ねられることがあります。
例えば、「シューマンは気が狂っていたから、彼の作る曲もやっぱり変なのか?」というようなことです。
確かに、ローベルト・シューマンは精神の病気が原因で亡くなりました。
しかし、彼が作曲活動をしていた時期は普通の人と変わらない生活をしていましたし、事務的な手紙を書くこともできましたし、演奏旅行にも出かけていました。
ローベルトが本格的に闘病生活に入った時には、彼はすでに代表的な作品を作り終えていたので、決して、錯乱状態で作曲をしていたわけではないのです。
にもかかわらず、彼の精神病と彼の作品を結び付けて考える人は、音楽の専門家の中にも少なからずいて、私はそれが残念でなりません。
病気と創作は多少関連しているかもしれませんが、ローベルト・シューマンといえば精神病と結論づけるのは極端だと思います。
そんなローベルト・シューマンの真実を、資料や記録に基づき、丹念にまとめた一冊が《シューマン》藤本一子(2008 音楽之友社)です。
作曲家の真の姿を知りたい方は、是非ご一読ください。
※雑談動画【本の林】第二十七冊を再生するには、コチラをクリックするか、「本の林」で動画検索をお願いします。
代表的なものは、電子レンジで濡れた猫を乾かそうとした話です。
実際に、そうした人がいたかどうか確かではないのに、誰もがその話を知っているなんて、実に不思議な現象です。
火種どころか、火がなくても簡単に煙が立ってしまうようなものです。
インターネットが発達している現在は、そうした類の話が広まるのは一昔前とは比べものにならない速さです。
うっかり、うろ覚えの知識を口にしたり、秘密事項をもらしたりすると、それらはあっという間に拡散され、収集のつかない事態になる(いわゆる、炎上)ので、要注意です。
作曲家や歴史上の人物に関するエピソードは、実際に事の真偽を確かめる方法がなく、また、研究者でもない限り、そうした真偽の判断は問題にされることがないので、本当かどうかは曖昧なまま、人々に受容されています。
そのため、研究者の間では研究対象とすらならない様々な言い伝えを、まるで真実であるかのように信じている一般の人もいます。
例えば、モーツァルトが何者かに殺されたのではないかという説や、ベートーヴェンがスパイだったという説。
どちらも、明確な証拠はなく、後世の人々の憶測や誤解の上に立てられた仮説にすぎません。
もっとも、ヨーロッパの芸術家たちは彼らの芸術活動による交友関係の幅広さや、自由さ、さらに多くの人の心を惹きつけるカリスマ性などが、体制側から危険視されやすい傾向にあったのは確かです。
昔から、そうした芸術家たちが国外追放される例は少なくありませんでした。
しかし、スパイ疑惑をかけられて国外追放されたという記録は残っていても、実際にどんなスパイ行為をしたのかという決定的な証拠は見つかっていない場合が多いのも事実です。
このように、一人の作曲家について世間で知られていることの中には、本当かどうか分からないことが沢山あります。
私は音楽関係の仕事をしているので、たまに、それらのことについて人から尋ねられることがあります。
例えば、「シューマンは気が狂っていたから、彼の作る曲もやっぱり変なのか?」というようなことです。
確かに、ローベルト・シューマンは精神の病気が原因で亡くなりました。
しかし、彼が作曲活動をしていた時期は普通の人と変わらない生活をしていましたし、事務的な手紙を書くこともできましたし、演奏旅行にも出かけていました。
ローベルトが本格的に闘病生活に入った時には、彼はすでに代表的な作品を作り終えていたので、決して、錯乱状態で作曲をしていたわけではないのです。
にもかかわらず、彼の精神病と彼の作品を結び付けて考える人は、音楽の専門家の中にも少なからずいて、私はそれが残念でなりません。
病気と創作は多少関連しているかもしれませんが、ローベルト・シューマンといえば精神病と結論づけるのは極端だと思います。
そんなローベルト・シューマンの真実を、資料や記録に基づき、丹念にまとめた一冊が《シューマン》藤本一子(2008 音楽之友社)です。
作曲家の真の姿を知りたい方は、是非ご一読ください。
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