時には目食耳視も悪くない。

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華やかな舞台裏は地獄絵図?

2020年03月16日 | 本の林
 高校生の時、家庭科の調理実習で、食事作りの基本を習いました。
 ごはんと味噌汁と主菜と副菜という組み合わせで献立てを考え、肉や野菜、魚や卵を満遍なく摂取することが健康維持につながると教わりました。

 家庭でも、母はかつて保育園の調理員をしていたことがあり、料理好きなので、いつも栄養バランスの良い食事を用意してくれていたのは、今思うとありがたいことでした。

 この歳になって、自分が食事を作る時も、なるべく数種類の野菜を使おうと心がけますし、外食をする時でも、栄養バランスを考えてメニューを選ぶ習性が自然と身につきました。
 また、食べ物の好き嫌いを言うと、親からものすごく怒られたので、例え苦手なものでも、とりあえず食べられるようになりました。

 今のところ、食べ物のアレルギーがないのも幸運なことだと思います。
 (母と兄には、魚介類のアレルギーがあります。)

 なので、「ばっかり食」、―いわゆる偏食のことですが―例えば、肉ばかりを食べ、野菜を決して食べない大人と知り合いになった時は、ちょっとしたカルチャーショックでした。
 その人は、野菜にアレルギーがあるわけではないのですが、食べたいと思わないので食べないと言っていました。
 そして、野菜に含まれる栄養素をサプリメントによって補っているので、健康上まったく問題がないと笑っていました。

 私よりもずっと年上の人だったので、なおさら驚きでした。
 私の中では、「人間は毎日の食事の中で必要な栄養分を摂取する(むしろ、しなければいけない)」ことが常識でしたし、好き嫌いや偏食をするのは子供っぽいという価値観があったのです。

 人それぞれ、生まれ育った生活環境が違うのですから、食事や食べ物に対する考え方や習慣が違うことも当然と言えます。
 野菜を全く食べずにサプリメントを飲むということに不信感を抱く人もいるかもしれませんが、野菜を入手しにくい状況下の代替案としては、理にかなっているとも言えなくもありません。

 思考を柔軟にしておくことは、災害やウイルス感染などの非常事態に備える一番の対策の一つだと思います。
 なぜなら、予測不能の出来事というのは自分の価値観や常識を軽く飛び越えてやって来るからです。
 文字通り、臨機応変に自分を変えていかなければならないと思います。

 最近の風潮として、そのような不測の事態に遭遇すると、自分ではなく、周囲を変えて対応しようとする人が増えているような気がします。
 それも一つの思考の柔軟性かもしれませんが、周囲への配慮を欠くと、それは柔軟性ではなくただのワガママな迷惑行為になる場合があります。
 何事にも、程度が必要です。


 さて、思考の柔軟性が最大限に、そしてより迅速に求められる現場があります。それがオペラの舞台裏です。
 オペラに限らず、舞台上で演じたり踊ったりする、芝居やバレエ、ミュージカルやディナーショーといった華やかなイベントの裏では、表の優雅さからは想像もつかない地獄絵図(笑)が展開されています。

 主役を演じる人気の俳優ばかりが注目され、賞賛される傾向にありますが、本当はそのステージが無事に上演されるには、何十人(時には百人以上)という、実際には名前すらプログラムに記されないスタッフたちの尽力が必要であり、その公演がうまくいくかどうかは、そうしたスタッフたちの能力にかかっていると言っても過言ではないのです。

 今回の雑談動画【本の林】は、オペラ公演における舞台裏を、数々の有名海外オペラハウスの日本公演を成功させた敏腕プロデューサーが赤裸々に語った本を取り上げました。

 【本の林】第十四冊《だからオペラは面白い - 舞台裏の本当の話》佐々木忠次(2000 世界文化社)
 ※動画を再生するにはコチラをクリックするか、「本の林」で動画検索をお願いします。


 ロマンチックな恋物語の裏では、どんなハプニングが起こっていたのか。一見、ナイスコンビネーションに見えた音楽家たちの、筆者だけが知る人間模様など、オペラを別の視点から解剖した本です。

 将来、舞台や制作の仕事に関わりたいと思っている人にはおススメの本です。


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