「新しい発達と障害を考える本」シリーズ
発達障害を理解し、ちょっとしたこつを知れば、
本人も親や教師ら周囲の人たちも、うまくやっていける-。
現役の教師らが編集を担当した、
発達障害の本のシリーズ「新しい発達と障害を考える本」(ミネルヴァ書房)が出版された。
編者らは
「具体的な事例を通して、対処法を知ってほしい」
と願っている。
自閉症で小学四年生のつばさ君は「さかあがりできる?」と、
級友のゆうじ君に何度も同じ質問を繰り返す。
ゆうじ君は、むっとしながら「できない」と答える-。
シリーズ第一巻の「もっと知りたい! 自閉症のおともだち」の一場面だ。
ページをめくると、
つばさ君がどう思っているかが説明される。
つばさ君は「同じやりとりができるのが安心でき、相手がどう思っているかはわからない」のだ。
さらに、つばさ君と付き合うには
「答えてあげられるときは答え」
「してはいけない質問は、きっぱりやめさせる」
などの対応例を紹介。
自閉症は生まれつきの障害で、脳の働きに偏りがあるため、
情報をうまく理解できず、コミュニケーションに工夫が必要だと解説している。
取り上げた事例は、
東京都町田市の小学校教諭、伊藤久美さん(55)の体験談だ。
伊藤さんは東京都新宿区や同市で二十九年間、
知的な遅れはないものの、コミュニケーションなどに課題がある児童の「通級学級」などを担当してきた。
通級学級では、市内の小学校に在籍する児童が週一回、
普段通う学校とは別の教室で、
困ったときは助けを求めるなどの「ソーシャルスキル」を学ぶ。
発達障害といっても対応をひとくくりにできず、一人一人の課題はさまざまだ。
伊藤さんはシリーズ四冊のうち三冊を担当し、
発達障害の子どもが苦手と感じがちな場面を取り上げた。
伊藤さんは
「本の中には、先生たちが子どもたちに説明するときに、使える言葉がたくさんある。
保護者が周囲に発信するときの助けにしてほしい」と話す。
発達障害を取り上げた前シリーズ(十二冊)が好評なため、続編として発行。
今回の四冊は自閉症のほか、
アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)がテーマ。
前シリーズと異なる場面での対応策をまとめた。
今後も四冊追加される予定。
問い合わせは同社=電075(581)5191=へ。いずれも千八百九十円。
◇
大人になった発達障害の当事者向けには
「知的障害・発達障害の人たちのための見てわかる社会生活ガイド集」(二千百円)が、
ジアース教育新社から今年出版された。
二十歳から六十五歳まで、十四の架空の体験談を通じてアドバイスするほか、
一人暮らしの助言も掲載。ふりがな付き。
問い合わせは同社=電03(5282)7183=へ。
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