あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

遠い約束(FF4ポロム+カイン)

2020年03月27日 | スクエニ関連

 

 

FF4ED後の世界と思って下さい。

数年後のポロムとカインのお話です。

私設定が入ってますので、大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<遠い約束>


変わり往く世界を一人の竜騎士と一頭の騎竜が旅をしている。
嘗てクリスタルを奪う為の手段として使われた飛空艇が世界を繋ぐ架け橋となる。
聖王セシルが治める新生バロン王国は、惜しみも無くその技術力を各国に提供した。
果たして空は人間達のものとなり、飛空艇が遠い異国同士を身近な隣国へと変えた。
その中で竜騎士は無用の存在になりつつあった。
騎竜の居ない竜騎士は飛べない鳥と同じである。
団長の戻らない竜騎士団はその存在を問われ、暗黒騎士団同様に廃止される運びとなった。
やがて新生バロン王国に王子が生まれ、時は柔らかく穏かに流れていった。
一人の男を残して。


魔法使い達の町、ミシディアから遥か東、試練の山のその頂きに、
数年に一度、薄紅の花が舞う頃に竜が舞い降りる。
いつの頃からか、そんな噂話が流れるようになった。
竜は既に伝説の生き物となっている。
稀に運のいい者が、雲の切れ間に舞う竜を見る事が出来ると言う。
しかしその話も、この数年は聞かなくなっていた。
賢者テラの再来とまで言われ始めたパロムは、数年前に修行の旅に出掛けて行った。
ポロムは数ヶ月に一度届くか分からない手紙を受け取りながら、長老の下で修行を続けている。
セシルやギルバート、ヤンやエッジなど各国の王達が修行も兼ねてと王宮魔術師に招待してくれても、
ポロムは首を縦には振ろうとしなかった。
全ては本当かどうかも分からない噂話を宛にしての事だった。

「数年に一度…。薄紅の花が舞う季節、試練の山の頂きに、竜が舞い降りる……」

信じているのだ。
生きていて欲しいのだ。
あの哀しい宿命の男を温もりで満たしてやりたいのだ。
ポロムは既に幼い少女から、娘と呼ばれる年頃になっていた。


まるで身体中に傷を負っているかのような男を日差しから護るように騎竜は片翼を拡げた。
標高の高い試練の山はその分太陽に近い。
初春とは言え、澄み切った雲のない青空から照り付ける日差しは、
使い込まれた竜の武具に熱を与え、弱った竜騎士の体力を奪って行く。
世界を巡る長い旅を終え、暫くの間、この試練の山で休息を取る。
それが今のカインの小さな喜びだった。
新生バロン王国を旅立って以来カインは、各国を廻りその変化を陰ながら見守って来た。
酒場で聞くセシル達新王の善政を耳にし、それだけを誇りに生きて来た。
共に在るのは槍と騎竜だけ。
平な岩に腰掛け一息吐いたカインは、身を寄せて来る雌の騎竜の首に凭れ掛かった。

「この手も…この槍も…、世界にはもう必要のない代物だ」

カインは哀しそうに嘶く騎竜の首を優しく撫でてやる。
その微笑みは儚く、弱々しい。

「お前も…俺さえ居なくなれば自由だ。子を為し自然と共に生きる事が出来る」

竜は雌雄同体である。
例え最後の一頭になろうとも子を為し子孫を残す事が出来る。
カインは、最後の竜を、このまま自分の身勝手な旅に連れ回す事に、
罪の意識を感じ始めていたのだ。
しかし、それを否定するかのように、騎竜は首を天に伸ばし「ぶるる」と嘶き怒りを示した。
カインは抱えたままのドラゴンヘルムを傍らに置き、小さく微笑むと「お前は莫迦だな」と呟いた。


試練の山の山頂にある聖なる祠は、
カインが初めて訪れた時から劣化する事も無く、そのまま現存していた。
いつものように慎重に扉を潜り中へ入る。
祠内は聖なる気に満ち溢れていて、穢れた我が身が浄化されていくような気がした。
カインはゆっくりと歩を進める。
中央に自らの姿を映す水晶の大鏡がある。
竜の頭を象った兜を脱ぎ、素顔を晒す。
其処には情け無い顔をした青年が映し出されていた。
叶わぬ恋に身を焦がしたあの頃とは違い、その瞳に熱い炎は見えない。
全てを諦めた哀しい瞳。
帰り道が分からず泣きそうな幼子のようで、カインは居た堪れなくなって目を逸らした。
それでも手を伸ばし、冷たい鉱石の感触を指に感じ、唇を戦慄かせた。
此処で邪悪なる力を捨て、彼は聖騎士パラディンとなった。
今では聖王と呼ばれ親しまれているセシルが生まれた場所。
セシルの心の欠片を少しでも感じたくてカインは此処に舞い戻ってしまうのだ。

「いつまで其処で泣いていらっしゃるの?カインさん」

大人びた艶やかな声がした。
身を竦ませ振り返るカインの目の前に立っているほっそりとした人影。
意志の強そうな赤茶色の瞳は魔力を帯びて太陽のように煌めいていた。
彼とは違う。
惹き込まれる強い瞳。

「君は…まさか…ポロム…?」

最後に逢ったのはセシルが新生バロン王国の再建を宣言した式典の時の事。
双子の弟パロムや長老と共に挨拶された時にはカインの胸までもない小さな少女だった。
しかし祠の扉を塞ぐように立ちはだかっている娘は、ローザより背が高く、
その背には攻撃用か大振りの戦鉾が見えた。
幼い頃は一括りにしていた短い髪も今は背に掛かる程長く伸びていて、
戦闘に邪魔なのだろうか、顔の横でそれぞれ小さく二つに括り、後は全て後ろに流している。
お世辞など言わずともポロムがローザやリディアにも負けない程、
魅力的な娘になっているのは明らかだった。
記憶の中だけだった少女の成長振りにカインは暫くの間呆けていたが、
その娘が言った言葉を思い出し、口許を引き締めた。
足早に歩み寄ると片手で制し、祠を出て行く。ポロムはその後を追った。

「いつまでこんな事をしているつもりですの!?皆、あなたを心配しています。
バロンへ、セシルさんやローザさんの処へ帰ってあげて下さい!
バロンが駄目だと仰るのなら、ミシディアでも結構です!」

主人へ詰め寄る娘を警戒して騎竜が首をもたげた。
威嚇をしようとするのを制し、カインは騎乗する為の用意をし始めた。
ポロムがそれに気付き、更に声を荒げる。
毎年、薄紅の花が舞う季節には、毎日のように試練の山に通っていたのだ。
やっと出逢えた。
次はいつ逢えるか分からない。
伝えなくてはならない。
ポロムは必死だった。
鞍を付け、下ろしていた荷物を取り付け始めたカインの袖を引っ張りポロムは叫んだ。

「もう許して…!!ご自分を許してあげて下さい…!!」

カインは手を止め、涙腺が壊れてしまったかのように涙を零す娘を見た。
しっかりと放さぬようにカインの袖を掴み、幼子のように泣き続けるポロムに驚愕し、
肩の力を抜くと小さく呟いた。

「…何で君が泣くんだ」
「そんなに…そんなに傷付いていらっしゃるのに…!
あなたがそれに気付かない振りをなさるからです!」

荷造りをしていた紐から手を外し、ポロムに身体を向き直ると、
カインは少し屈みポロムの目から零れ落ちる大粒の涙を指で拭ってやる。
目の前に降りて来た昔と変わらないアイスブルーの瞳にポロムの目が大きく見開かれる。
「月の光の精霊のように綺麗なの」といつかローザが言っていたカインの白金の髪が幻のようにさらさらと揺れた。
やっと泣き止んだポロムにカインは困ったように微笑んだ。
それは昔、式典の際に見た哀しみに満ちた笑顔では無かった。
恥かしいような嬉しいような色んな思いに満ちた表情。

「…俺の為に泣いてくれる人がいるなど…夢にも思わなかった」

もっと笑って欲しいのだ。
傷を癒して欲しいのだ。
愛されてもいいのだと分かって欲しいのだ。
掴んだままのその手を放さぬように、ポロムは更にカインの袖を握り締める。

「あなたは、充分に償いました。…もう幸せになってもいいんです」

カインは大きく目を見開いた。
幼いながら白魔法の術者では導師クラスであると昔、セシルに聞いた事があった。
そんな司祭並の聖なる娘に言われたのならば、逆らう訳にはいかないではないかとカインは自嘲めいて笑う。
許されるのだろうか。
自分を欺き、親友を陥れ、恋を汚し、星を砕こうとした。
多くの人々を傷付け、苦しめ、それでも抗う事が出来なかった邪悪な心。
傷付いても、傷付いても救われてはいけないと思って来た。

「……俺は……幸せになってもいいのか……?」
「はい!」

愛らしい娘の笑顔がカインを包み込む。
風に乗り、世界中に咲き誇った薄紅色の花が舞い踊る。
ポロムの笑顔はその風を起こし、温かい愛と共にカインを救い出そうとしていた。
叶わない恋に苦しみ、自分を、親友を、幼馴染を、世界の人々を傷付けてしまった。
そんな自分の手を取り、導き出そうとする娘。
幼かった少女はあの頃から自分を待っていてくれたのだろうか。
カインは一筋の涙を頬に零した。

「あぁっ……!泣いては駄目です!もう絶対一人で泣かせたりしませんから!」

カインは今度こそ嬉しそうに微笑んだ。
春とは言え、少し強い山頂の日差しの中でさえも、消え入りそうな程に儚い美しさが胸を締め付ける。
カインはポロムの腕をやんわりと外すと、重力など無いかのようにひらりと騎竜に飛び乗った。
ポロムは慌てて、鞍の紐を掴もうとする。
しかしそれは叶わなかった。

「カインさん!待って下さい!カインさん!」

しかし声が聞こえない程の騎竜の羽ばたきの中、ポロムははっきりとその声を聴いた。

「少しだけ時間をくれ」

声を失い、ポロムは止まった筈の涙をまた溢れさせた。
また泣き出した娘に微苦笑しつつもカインは兜を被り更に一言付け加えると手綱を引き、飛び去った。
ポロムは唇に手を当てて同じ言葉を繰り返す。
それは約束。
彼が過去に向き直り歩み出そうとする為の言葉。
午後の日差しの中、小さくなっていく騎竜の姿を見送りながらポロムは、
その言葉を大切に胸に仕舞い、春風のように微笑んだ。


<了>

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ポロム→→カインですが、こうなったらいいなと思い、書きました。
カインが救われるハッピーエンドのお話が書きたかったのです。

 

 

 


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